博報堂グループのデジタル広告会社スパイスボックスは1日、医療分野向けのデジタルマーケティングを担う「メディカルマーケティング事業部」の設立を発表した。2018年度に売上高10億円を目指す。6人で発足し、18年4月時点で18人程度に増員する。
グループ会社のWHITE(東京・目黒、神谷憲司社長)などと連携し、スマートフォンと連動して服薬履歴を記録する機器や、身につけて体のデータを分析し、疾患を検知する端末などを開発する。「日本で医療機器の認可を得るのはハードルが高いため、デバイスの開発では医療機器メーカーとの連携も検討する」(スパイスボックス広報)。海外企業と組み、国外で利用実績のある医療系機器やアプリの日本市場導入も行う。
医療分野は、IT(情報技術)市場の最後の鉱脈だ。調査会社IDCジャパンの推計では、2019年の医療分野IT市場は6040億円規模。同分野の2014年~19年の年平均成長率は1.8%で、全体の同成長率1.3%を上回る見通しだ。
「日本は医療分野IT市場として最も有望な国」(米商務省国際貿易局)とする報告もある。日立は血糖値など複数の身体データの規則性を分析し、生活習慣病の発症率と医療費を予測するシステムを開発した。東芝やソニーもヘルスケア用途の製品に取り組んでいる。
しかし、課題も大きい。ひとつは、医療IT分野で主導権を持つ監督官庁の不在だ。現状では、経産省や厚労省、総務省など複数の省庁が異なる役割を担っている。
ふたつめは、「マイナンバー」(税と社会保障の共通番号)と、カルテなどの医療情報が連携していない点。政府は、「医療分野等ID」を2018年度から段階的に導入し、「マイナンバー」と連動させる考えだ。しかし、プライバシー侵害を懸念する声も大きく、国民の理解を得られているとは言いがたい。
日本のほとんどの病院に、最高情報責任者(CIO)や、最高医療情報責任者(CMIO)といった、情報分野でのリーダーシップを取れる人材がいないのもハードルとなりそうだ。
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