コラム

良いコピーをどうやって書くか、ということより先に知っておかないといけない話。

マキシマムザ亮君が小霜和也の『ここらで広告コピーの本当の話をします。』を読んで・・・。

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目の前の商品を売るだけが広告クリエイターの役割じゃないゼ!

今回の案件は、レコード会社としてこの作品を売らなきゃという事情、事務所としてバンドを今後どう育てていくかという長期の視点、メンバー本人たちとしての思い、そういったものをいったん腹の中に収めて、ガラガラポンで何が出て来るか、といった仕事でした。

「千三つ」って言葉があるけど、コンビニ商品とかだと千に三つヒットすればいい、みたいな考え方もあるわけです。でも、人が商品だと、そうはいかない。絶対に「棚落ち」させるわけにはいかないんです。それに、やっぱりメンバーの、言葉にならないこだわりみたいなものは最大限尊重しないといけないわけですが、いわば缶コーヒーのCMコンテを考えてるとその缶コーヒーが「うーん、小霜さん、なんかそれって違う気がするんスよねー」と言ってくるようなもので、やりにくいったら・・・(笑)。

「Deka Vs Deka〜デカ対デカ〜」のキャンペーンで僕がやったことは大きく分けると3つくらいでしょうか。

ひとつは、この商品をどういう「価値」にしていくのかということです。なぜこんなに作りこんだゲームが必要なのか、人によってはタチの悪いジョークとしか受けとめないでしょう。悪趣味だとか、炎上商法だとか、話題になりたいだけとか。ネガティブにしか取らない人もいるから、そこを正当化してバンドの価値を高めるための言葉を決めなきゃいけないと思ったんですね。

それでまず、亮君に、「あなたは人にどう呼ばれたいのか?」と聞いたんです。「ミュージシャン?」それとも「メッセンジャー?」って。そしたら、「キ○ガイ」だって(笑)。

「音楽じゃなくてもロックって、アリだと思うんですよね」と。

そこからスパッとコンセプトができました。「俺はもうエレキギターを使わずにロックをぶちかます方法を見つけてしまったかもしれない・・・」という亮君の言葉がそのままキャンペーンスローガンになりました。目の前のDVDを売るだけじゃなくて、僕はそれ以後の活動のことがすごく気になっていたんです。

それで、他のバンドとは全く次元の異なるところを見ている、というブランディングがこれでできるなと。

もうひとつは、具体的な広告コミュニケーションの設計。

スペースシャワーTVの特番で、いろんなミュージシャンや文化人、芸人を監禁状態にしてそのゲームをしてもらうという企画がありました。それで、その撮影素材をもらって、こっちで番宣動画を編集したんですね。番宣でありながらちゃっかり商品の広告にもなるよう仕上げたわけです。

いろんな著名人が「なんじゃこりゃ!」と呆然とするようなシーンをつないだんですが、「たぶんエログロや気持ち悪い映像が映っているんだろうな」と視聴者に誤認させようと。実際に買ってみたら「ゲームってことだったか!」と、振り返って腑に落ちるという。個人的には「シックス・センス作戦」と呼んでいましたが。テレビCMでは流さず、TrueViewを利用しました。これは期待通りうまくWeb上で話題になりました。

もうひとつは、表に出ないレベルのコラボやPR活動ですね。
いろいろ各所に紹介したりなど・・・。

DVDは予想通り発売当日から大きく物議を醸しました。この物議が勝手につまらない方向に向かう前に、マキシマム ザ ホルモンの「エレキギターを使わなくてもロックはできる」という主張に対して是か非かという問いかけをしておきたかった。印象として最初は是非半々だったのが、今は肯定派が増えているのを見ると、その設計は成功したのかなって思います。

これ、言っちゃっていいのかわからないけど、パスワードはどうしてもネット上に流出するから、本当ににっちもさっちも行かなくなる人はいないだろうと。そこまでいちおう考えています。

この映像作品は、商品のボリュームを考えるとかなり割安と言えますが、正直、これだけの高額で本当に売れるか僕は心配でした。でも結果は、オリコン週販の音楽DVDランキングで1位、映画も含めた映像のDVD総合ランキングでも1位の2冠。ホルモン自身の週販記録も更新と、ぶっちぎりで売れ続けています。

次ページ 「クリエイターは自分の仕事をもっと疑わないとだめだゼ!」へ続く

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