コラム

澤本・権八のすぐに終わりますから。アドタイ出張所

Cook DoのCMがおいしそうに見えるのは、研究と執念の賜物だった!(ゲスト:佐藤由紀夫さん)【後編】

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Cook DoのCMは「エロビデオを撮ってくれ」とお願いした?

佐藤:権八は特徴があるじゃない。だいたい権八の企画ってテレビでわかる。何もないけど、ドライブみたいな。ドライブ職人みたいなことになってるといいけどね。15秒だったらもちますと。

権八:いやいやいや、長くてももちますよ!(笑)。

佐藤:30秒でももたせられるじゃない。ちょっと途中うねりがあってと。特徴があるっていいよね。面白いのもそうだけど、映像そのものにパワーがあるとか。僕はうまそうに食べるってことが好きで、これまでこんなに熱心になったことがないぐらいに研究したわけですよ。

中村:Cook Doのときに。

佐藤:いろいろなところで真似されてきているのね。だけど、真似できないと思ったときに勝ったというか、できるなという感じはじめて、しめしめと。食べることは生きる行為というところまで突き詰めて、クライアントと共有したときに何かが生まれる。以前、このうまそう映像は演出の岩井(克之)さんが頑張ってるからと思われて、岩井さんに牛丼屋などから強烈なオファーがガンガン入ったわけ(笑)。

中村:なるほど。

佐藤:岩井さんは「おれだけじゃできない」とどこでも言ってくれて。なぜならクライアントと表現に関して握ってくれないと、と。小汚い表現をしてクライアントに苦情がガンガン来るのは耐えられないでしょと。なぜこれがいいのか、この表現だと売れるけど、これは売れないという線引きをクライアントと共有できれば、ある程度のところまでは伸びるし、どんな商品がきてもうまそうには撮れる。

権八:以前もこの番組で話しましたけど、Cook Doがバカスカ売れているわけですよ。CMの食べ方が汚い、音がちょっと、というクレームが来るけど、クライアントがクレームも許容しているわけでしょ。

佐藤:許容というと語弊がある(笑)。お客様相談係の方々は日々戦ってらっしゃるので、なかなか言えないけど、そうですね。クレームが来ないと売れない。クレームが来たから売れるんじゃなくて、クレームが来るぐらい反応してくれないと売れない。なんか不快なもの、変なものを見せられたみたいなことになるんでしょうね。

権八:ああ、セックス的な(笑)。僕、じつはCook Doの最初、下についてやっていたから。伊丹十三監督の『タンポポ』で有名な生卵のシーンや『お葬式』で煮魚をピチャピチャ食べるシーンを古川さんと3人で見ていて。食を性的にね。

佐藤:あまり言うと嫁が聞くからまずい(笑)。いたしてるところを横から覗き見る行為ってスケベでしょ。食べてるところも本当は見られてるはずないんですよ。何かに夢中になっている、没頭して我を忘れている状態を横から覗かれると、人間ってまずいものを見た感じになるのよ。それを岩井先生と研究して、岩井さんには「エロビデオを撮ってくれ」と言って、しかも演技してるやつじゃなくて、ドキュメントものっぽく撮ってくれと話をして。

一同:

澤本:それが通じたんだ。

佐藤:岩井さんは「あぁ、わかった」と言われて、それでやったんですよ。杉咲花ちゃんという、いたいけなかわいい子がピチャピチャ食べているのを横から覗き見るというのは、何かしらザワザワするというか、まずいものを見たという感じになると思って。おいしそうって何か生理的なところにさわらないと絶対こないので。でもそうなった瞬間に不快に思う人もいっぱいいると思ったわけです。でも、このぎりぎりラインというのを見つけられればいい。不快がすぎちゃうと、「きのこ」みたいになっちゃって(笑)。

権八:ちょっと待って(笑)。不快すぎてないでしょ。きのこ、ホクトのCMは由起夫さんと一緒にやったんですよ。

中村:有名な権八さんの「きのこ」ですね。

権八:いやいや、「権八さんのきのこ」っていう言い方はどうかと。語弊がある(笑)。

中村:おいしそうに食べることをもうちょっと根源的な部分まで科学して、クライアントと共有というか、「こういうのはおいしそうに見えると思うけど、もしかしたらクレームも来るかもしれません。でもそのぐらい破壊力があるものです」と。

佐藤:そんなにかっこよくなかったですけどね。向こうも、これはうまそうだと。映像資料をいっぱいくっつけて。

権八:向こうは食のプロだもんね。

佐藤:僕らなんてアマチュアですよ。でも、これはうまそうだと。たとえばたいていの人間は、口の中におかずが入っているうちに白飯を食べるんです。飲みこんだ後に食べない。白飯を食べているうちに次のおかずを口の中に入れる。つまり、口の中に白飯が入っているから見えるわけ。「これをよしとしてください」という話をする。

澤本:なるほど、確かにね。

佐藤:そうすると、来ますと。これがきれいに食べている例、こっちが汚く食べている例ですと。いろいろな映像資料を見せると、確かにこっちはうまそうだと。よしやってみようとなったけど、ドーンとクレームが来て、怒られる寸前にガーンと売れたから、拳が下がった。

権八:僕らが一緒にやったノリさん(木梨さん)が出ていたときでいうと、エビチリをでかいプリプリのエビでやるんだけど、ノリさんがのってきて、手づかみでエビを食べたりしていて。でかいエビを丸ごと口に入れて、タレだけを舐めて、また口から出したりする。

一同:

権八:たぶん使ってないよね…。いや、あ、使った(笑)。タレだけうまそうに舐める画。

佐藤:使った。それはクラシック音楽をかけてごまかした(笑)。

権八:「威風堂々」で。

澤本:あのCMおいしそうだもん。その直前に古川さんと僕でやったCMで、「まずそう」って中止になったからね。

一同:

佐藤:家が回るやつ。傑作だけどね。

権八:面白かったけどね。中華料理って円卓でテーブルが回るという話で、中華料理を家庭で食べていると、パッと客観的に見ると家ごと回ってたってやつね。

佐藤:テーブルが止まってたんだよね。

澤本:テーブルがフィックスされてるという。コーヒーカップの遊園地のね。それやったら全くおいしそうじゃないって言われて(笑)。

権八:確かにおいしそうではないんだけど、面白くて。その後やったんですね、僕ら。

佐藤:そのリバウンドでうまそうに撮ってくれって来たの(笑)。澤本さんのおかげできた。

澤本:すみませんでした。

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