テレビ局の動画配信が持つ大きな可能性
まずTVerのキーマン(と書くと前は“そのひとり”としてくれとおっしゃってましたが、このフォーラムでは開き直ってキーマンぶりを発散していました)であるTBS龍宝正峰氏による、パネリストとして登壇しつつ思い切りTVerの営業モードで行ったプレゼン。そこで披露された数字は、TVerの再生数=41,850,780、UB/UUID数=10,009,801でした。ざっくり、4000万再生と、1000万人ということですね。これは開始以来の通算です。さっきのニールセン社の251万は11月だけで、スマホのみの数字ですから、大まかには辻褄が合いますね。
それ以外にも興味深い、感心するポイントはこのセミナーの中で、たくさんありました。
全体俯瞰的に言うと、Google社が提唱するHHH戦略を使った考え方が複数の方々から出てきたことが印象的でした。HERO、HUB、HELPの3つの役割を設定して動画を制作し配置する、というものです。Googleの戦略に乗っかってるのか!と何か言いたい人も出てきそうですが、併せて“パーチェスファネル”という言葉もやはり複数の方から何度か出てきました。
パーチェスファネルってこういう解釈ですよね。とくにマスとネットで役割分担はこう違うんだと語る際に使われてきました。AIDMAという古典的な広告の役割分類の延長線でパーチェスファネルの概念も機能していたんだと思います。
これとHHHの役割分担はどこか似ていて、そうするともう、マスとネットで認知と比較検討を分担するのでさえなく、スマホ上で認知から比較検討まで全部動画で済ませるのもありかも、ということになってきている。そう言えるんじゃないでしょうか。少なくともパナソニック社の木村知世氏のプレゼンを、私はそう受けとめました。だからテレビCMがいらないかと言うと、そうではなくてコミュニケーション全体の表紙と言うかシンボルとして重要な役割を担うわけでしょう。このプレゼンを通じて、パナソニック社のコミュニケーションの進化と完成度に圧倒されました。進んでいる企業はもう、ここまで来ちゃってるんだなあ、と。
もうひとつ、重要なキーワードとして“プレミアム”という言葉も出てきました。マッキャンエリクソンの千賀由久氏がアメリカのテレビの状況を概観した中に、動画コンテンツは分類が進んでいて、“プレミアム”と分類されるのは”TV Extensions”つまりテレビのコンテンツがネットに“拡張”して配信されるものだという説明がありました。当然ながら、“プレミアム”なので単価高いですぜ、という価格付けにもこの分類はつながるのでしょう。
HHHの話とパーチェスファネルの話、そこに“プレミアム=テレビ番組”を結びつけると、テレビはネットで配信すればプレミアム扱いになってパーチェスファネルの認知の役割でHHH戦略のHERO動画と似た位置づけになるので、すみませんが単価も高いんです、という虫のいい論になるのではないでしょうか。虫はいいけど、アメリカではそうなっているようですし、何らか説得力あるデータさえあれば、通る論でもあると思います。また、そのことが結果的に動画広告全体の価格を上げる効果も出てきそうです。
動画広告セミナーって、ネットなら動画安く配信できます、我々なら動画安く作れます、と安い安いアピールするものばかりでした。びっくりするような価格体系を言うのです。そして制作事例としてはっきり言って大学生の自主映画みたいな映像が並んでいる。ライティングをまるで考えていない、いい加減な映像がなんと多いことか。自分たちで自分たちの地位を低めて、安売りするのが動画広告の世界なの?と疑問に思っていました。テレビ局の動画配信は、そういう荒んだ状況を一変させる可能性があるのではないでしょうか。
最初の話に戻すと、テレビは見られていない。でも見られている。ネットでは見られている。だったらどんどん見られる状況を作ることで、新しい広告領域を産み出せるはずです。ネットメディアはテレビになれませんが、テレビ局はネットメディアにもなれます。そこにある大きな大きな優位性をテレビ局がどう生かすかがこれから問われると私は思います。
そのためには、テレビ局の人材がテレビ以外のことを学ぶ必要があるでしょう。セミナー終了後に何人かのテレビ局の方がいらして、ご挨拶しました。テレビ局が動画広告マーケティングについて学ぶ時が来たんだなあと感銘を受けました。これからはテレビ局の営業マンもCPMで営業トークできないといけないのかもしれませんね。
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