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コラム

アンバサダー視点のススメ

ソーシャルメディアの浸透が、人の「繋がりたい」という気持ちを強めている

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企業がファンを軸にクチコミや評判を広げる仕組みづくりである「アンバサダープログラム」。これまでのマーケティングとどう違い、どんな可能性を持っているのか、企業の担当者や識者へのインタビューで、そのメカニズムを明らかにしていきます。今回は、アジャイルメディア・ネットワークの藤崎実氏が、多摩美術大学教授の佐藤達郎さんに世界の潮流とアンバサダーが注目される背景についてお聞きしました。

今回のゲスト

佐藤達郎(さとう たつろう)。ADKから博報堂メディアパートナーズを経て、多摩美術大学教授。近著『「これからの広告」の教科書』(かんき出版)


なぜアンバサダーに注目が集まるのか

画像提供:shutterstock

藤崎:本題に入る前に、なぜ「アンバサダー」が注目されるようになったのか、世の中の流れからお聞きします。佐藤さんは、以前に「Talkability(トーカビリティ)」というテーマの論文を発表されていましたよね。

佐藤:はい、ある時から広告に話題性を重視した表現が増えてきたので、その傾向を“話題になる力”という意味の「トーカビリティ」という切り口で分析しました。トーカビリティという言葉は、英語圏では大変よく使われます。

その当時、アメリカではトーカビリティだけでなく、「アドボケイツ」の活性化についても議論されていました。トーカビリティを分析した経験があったので、アドボケイツにも注目し、日本広告学会で紹介したのです。

藤崎:それは、人に話しやすい広告表現、いわゆる「バズる広告」に注目が集まっていた。その同じ文脈で、話題にしてくれる人たちである「アドボケイツ」にも注目する流れが生まれてきたということでしょうか。

佐藤:そうですね。今までの広告は企業からユーザーに直接語りかける方法が中心でしたが、ユーザー同士で語ってくれる傾向がより強まってきた。そういう環境では、話題にしてくれる人である「アドボケイツ」にも着目する必要があります。僕は、そういった話題にしてくれる人を生む表現を「ソーシャル・クリエイティビティ」と呼んでいます。

藤崎:伝播性への着目は、10年ほど前から続いているのですね。

佐藤:さらにデジタルメディアやソーシャルメディアの台頭が影響し、その傾向はますます強まっています。

藤崎:やはり、ソーシャルメディアの普及が影響しているのですね。

佐藤:ソーシャルメディアによって、「人に何かを伝えたい」「人とつながりたい」という気持ちがより強くなっているのではないでしょうか。そして、ソーシャルメディアが普及したことで、おそらくオンラインではない「リアルなコミュニケーション」も増えているという印象を持っています。

藤崎:その可能性は高いと思います。以前、携帯電話の普及によって、人と人が電話で話すだけでなく、実際に会う機会も増えている、という調査結果を見たことがあります。

佐藤:ちなみに新聞は、もともと「コーヒーハウス」という喫茶と社交を兼ねたような場所で、みんなで「ああでもない」「こうでもない」と読みながらワイワイ語ったことがスタートです。それは、今でいうツイッターのような場で、ソーシャルメディアに近い存在だった考えられます。ひょっとしたら、歴史の中でマスメディアの時代である20世紀後半は、人と人がつながりたいという気持ちが顕在化しなかった特殊な時代だったのかも知れません。

藤崎:なるほど。私もテクノロジーの進化によって、昔の行為がいま見直されているのではないかという仮説を持っています。

佐藤:もともと人は「誰かとつながりたい」という気持ちを持っています。そこに、FacebookやTwitterといったソーシャルメディアが誕生し、その本来、人が持っていた「つながりたい」「いいと思ったものを人に勧めたい」という気持ちを表現できるようになったのではないでしょうか。

藤崎:そう考えると、おもしろいですね。

佐藤:広告は「世の中の人が何を求めているか」によって変わるべきです。今は、人と人との関係や、人と情報の関係が「つながる」方向に向かっている。広告コミュニケーションのあり方も、その傾向を生かすべきです。

藤崎:広告は社会を映す鏡だと昔から言われていますしね。佐藤先生がおっしゃるように、ソーシャルメディアはもともと人間が持っていた欲求をうまく救い上げたから、これほど定着したのかもしれませんね。

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