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電通九州 村田俊平×電通 尾上永晃「これからのキャリアにつながるちょっといい話」【後編】

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広告にとって健全なムードになってきている

村田:最近の「10分どん兵衛」の仕事は、尾上の真骨頂という感じですね。

尾上:芸人のマキタスポーツさんが「どん兵衛を通常5分のところ10分おくとおいしい」とラジオで言っていたのがツイッターでじわじわ話題になっていたのです。ラジオの中で「本家本元の日清食品はどう思っているのだろう。社員は昔から知っているのでは」と言っていたそうです。

企画として実際に行うのであれば、消費者に受け入れられる形ということで「10分の方が、美味しいなんて正直知りませんでした」と、謝罪の形式にしました。それが発展してマキタスポーツさんと、どん兵衛担当者との緊急対談を行いました。対談から公開まで5日というしびれるスケジュールで、取材した日の夜中に記事を書きましたからね。どん兵衛を食べながら。

日清食品「日清はなぜ10分どん兵衛を作らなかったのか」
※「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」からタイトルのインスピレーションを得たもの。

村田:どれくらい売れたのですか。

尾上:売り上げが、前年同月比の150%。40周年の商品がそこまで売れたことはないそうで、日経新聞からも取材が来たようです。

今日も産経のニュースになっていたり、長くニュースになり続けています。パスタに続き、Webでこんなにモノが動くと、日清さんの中でも驚かれてるみたいです。ただ、こういうのはかっこいいWebではないので、「ブレーン」には載らないし、最近特集していた「U35クリエイター」にも選ばれない…。

村田:かっこよくはない、確かに。顔もかっこわるい。

尾上:村田もだけど。そんな中ですが、お洒落な企画もしていますということで、昨年の11月頃に公開したのがKIRIN「GREEN NAME」です。

KIRIN「GREEN NAME」

基本Webムービーなど、Webで話題になるのは「やばい」「すごい」という企画です。極端な話、エクストリーム系のものが話題になりやすいというルールがあります。グリーンラベルは、そういう企画にあまり向いていないけれど、話題にできないということでチャレンジしたものです。アートディレクターを担当した電通の相楽賢太郎のアートディレクション力が爆発しています。そういえば、村田もガラにもなく小洒落た仕事をしていましたよね。

村田:最近、僕の手ごたえのあった仕事はこちらです。

小林市PR動画「ンダモシタン小林」

もし3、4年前の僕が同じお題を小林市から出されていたとしても、おそらく同じ企画を思いついたはずです。単純に方言が別の言葉に聞こえるというアイデア自体は、それほど新しいものではなく、昔からあるもの。ただ、強いて言えるとしたら、細かい完成度を上げるためのアイデアは、ここ数年がんばってきたからできたことだと思います。

ナレーションや字幕テロップ、発音があまりに嘘すぎると白々しいですし、本当に似せ過ぎるとばれてしまうため、絶妙なバランスを狙っていきました。小ネタをパラパラと落としておくことにで、CDの越智一仁さんが考えた「2度見したくなるムービー」ということが実現できたように思います。ラストにおばあちゃんとセバスチャンが会話している部分は、2回目に見たときに「だから会話が成立しているのか」という見え方になったり。あと、なんといっても「おいピー」っていうワードですね。

尾上:やられた感がありました。先ほど話したように、話題になるムービーは、エクストリーム系が多いなかで、これは割とテンションが低めですよね。ちょっとした仕掛けがきちんと小林市が伝えたいことになっていて、鮮やかだと思いました。あと、行ってみたくなるということも、とても大事です。

村田:今、Webムービーは過渡期にあって、今までは「面白いことが行われて、最後に企業と商品が出てくる」というストーリーと商品が分断したものから、徐々に商品の近くに戻ってきている。

以前は、それでは話題にならないと思われていたきらいもあったのですが、いまは商品に近いところでも話題にできるということが広まり、広告として健全なムードになってきている。そこに挑戦できたので、自分の自信につながる仕事でした。

というわけで、広告を取り巻く環境は刻々と変わっています。自分のやりたいこと、好きなことが時代とあっているのであれば、利用すればいいし、そうでなければ抗えばいい、というところで結びとさせていただきます。

村田尾上:お互いの前だと虚勢を張り合ってしまい、色々エラそうなことを言ってしまい、すいませんでした。

※講演の内容に一部加筆・修正をしております。

電通九州 村田俊平

CMプランナー/コマーシャリスト。2009年電通入社組。2013年より電通九州所属。卓越した企画力と演出にも優れた才能を発揮し、国内外のビッグキャンペーンを多数成功に導く。そんな人になれたらいいなぁ~、と思って結局いつもダラダラしている。 2015年ACC小田桐昭賞、2015クリエイター・オブ・ザ・イヤー・メダリスト(尾上は未受賞)など受賞そこそこ。

 

電通CDC 尾上永晃

プランナー/イラストレーター。2009年電通入社組。主に、デジタルを軸としたキャンペーン設計を行う。好きなアーティストは、秋本治。一回で消滅した第一回ブレーンデジタルアワードグランプリ、TCC新人賞など、国内外でいろいろ受賞。+最近の主な仕事「鴨長明の野望」(NEW!)「イタリア人が認めなかったパスタ」「KAMABOKO ROAD TO1000」