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FRACTAブランディングスクール【第1回】全社を挙げたブランディング実行には、オムニチャネル対応の組織づくりがカギ

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ECサイトをコミュニケーションのハブにする

「そうは言っても、実際に進めていくのは、なかなか難しいですよね」。ここまでの提起を受け、フラクタ代表取締役の河野貴伸氏が話を引き取った。オムニチャネル化を進め、全社を挙げてブランディングに取り組むためには、何から始めたらよいか――これまでのディスカッションの内容を踏まえ、河野氏が示した改善策は、「ECサイトをコミュニケーションのハブとして活用する」ことだった。

「企業全体が同じ方向を向いて、一丸となって進めていかなければ、ビジネスは成功しないもの。ECサイトは、そうした組織体制をつくるために、役立てることもできます。サイトの運用を通じて有益な顧客データを蓄積し、それをもとに企画制作した情報・コンテンツを発信することで、ブランディングの効果を高め、ひいては実益につなげていくことができます。また、他部門が運用している各種チャネルの情報を発信する場としても活用することができます」(河野氏)。

部門間連携なくして、EC運用を通じたブランディングの実現は難しい。例えば、ECに掲載するコンテンツ一つとっても、効果の高いものをつくるには、部門内・部門間の情報・データ共有が欠かせない。「Web上には膨大な量のコンテンツが氾濫していますから、外注したコンテンツでは、伝えたい情報やメッセージは伝わりません。『社内の言葉』で語るほうが、当然クオリティは高くなりますが、それには部門横断の情報共有体制が必要です」(河野氏)。

部門横断で連携し、従来はチャネル毎に担当部門が行ってきたブランディングに、全社を挙げて取り組んでいく。カスタマージャーニー(顧客体験)を描き、その精度を高めながら、必要な施策を打ち出していく――社内の各部門が保有しているデータや、属人的な経験を共有することなくして、実現は不可能だ。データ共有のコツとして、河野氏は「カスタマージャーニーの設計は、一人や一部門ではできない」という認識を共有すること、そして「やらないことを決める」というルール化を挙げた。

部門間連携やデータ共有が進めば、オウンドメディア(自社サイトなど)とペイドメディア(広告)、アーンドメディア(顧客の共感を目的としたSNSでの発信)の、効果的な相互連携が可能となる。河野氏は、同社がECを通じたブランディングを支援する「土屋鞄製造所」を事例に挙げ、「SNSでの発信を通じて、顧客の認知・共感を得る取り組みを行っている」と説明。

「SNSでのコミュニケーションが、ECサイトでの売上増につながるまでには、一定の時間がかかります。このタイムラグを理解せず、SNSから急にECに誘導しては、顧客からの信頼や共感が損なわれます」。SNSを通じて顧客に伝わる、企業の個性・キャラクター。これを維持したまま、段階的に販売チャネルへと送客していく。この、適切な“間合い”を身に付けたり、コミュニケーションの全体設計を描くためには、社内連携が欠かせない。

セミナーの最後には、第2回以降で取り扱っていく具体的な「課題」を設定するため、参加者同士でEC活用に関する課題や、その解決策をテーマに、グループ毎にディスカッションを行った。メンバー共通の課題として「社内部門間の連携不足」を挙げたグループでは、その解決策として「ステップ・バイ・ステップで達成しやすい共通のゴールを設定し、克服する過程で連携を強めていく」というアイデアを導き出すなど、活発な議論が行われた。

次回以降、ECを通じたブランディングの実現に向けた、より具体的な課題解決方法を学んでいく。