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BuzzFeed、ハフポスト、NewsPicksが語る「これからのニュースの伝え方」

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良い記事は議論の場を提供する

竹下:ライフスタイルに関するテーマも大事にしています。現在はライフスタイルの激変期で、特に職場がそのありように大きな影響を与えています。そこを上手く捉えることによって、日本が今まで抱えてきた問題を、逆照射したいとも思っています。それで、「#飲み会やめる そしたら、人生変わる気がする」 という記事を書いてみました。

後藤:記事を見て、飲み会が嫌いなのかと思いましたよ。

竹下:飲むこと自体は好きですが(笑)。一方で、好きとはいえ仕事の延長になってしまうと居心地の悪さも感じていました。以前の職場では、飲み会で物事が決まってしまうことや、上司とパイプをつくって社内政治を始めるところを見たこともあります。それに、同僚には子育てをしているシングルマザーの女性もいました。彼女の働き方を見ていると、18時ちょうどに帰らないといけない。飲み会に参加できない人もいる中で、物事が決まる現状はフェアではない。問題提起をしたいという思いがありました。

古田:反響はどうでしたか。

竹下:様々な反応がありましたね。「飲み会がすごく嫌だった」と賛同するものから、「日本の会社は同質性が高く、仕事が終わった後も上司とのやり取りが続く」というような、問題点が浮き彫りになったりもしました。現代では、職場でライフスタイルの変化が起きているのに、まだ大手メディアが捉えきれていないところがあるのではないかと思います。

古田:バズフィードで話題になった記事に、「【黒歴史】昔のガラケーを持ち寄って『せーの』で電源を入れたら即死した」 というものがあります。昔使っていた携帯電話を今でも保管している人は多いですよね。そのガラケーをみんなで見返してみたら、中に自分たちの黒歴史が詰まっていたという記事です。すると、自分もやってみたという読者の方も多く、「やっぱり死んだ」という人たちが続出しました。やはり共感を呼ぶ記事は、ネット上でものすごく広がっていきますね。

一方、「ゴシップやエンタメ系ばかりやっているんでしょ」とよく言われますが、まったく違っています。バズフィードでも、最近多く読まれた記事は、一つが熊本地震について、もう一つはイギリスのEU離脱について。硬いニュースが読まれないというわけではなく、しっかりとつくればエンタメもニュースも、同じように読まれているということです。

竹下:私たちも同様で、かなり硬派な記事が読まれています。実際にAKB48の総選挙でのスピーチを伝える記事よりも、オバマ大統領の広島訪問関連のニュースが読まれました。

古田:僕はスピーカーとして、新聞社が開く勉強会に呼ばれることがよくありますが、そこでよく聞かれるのが「PVばかり見ているんですよね」ということ。「PVを見ていたら易きに流れるんじゃないですか」と。

竹下:それは多いですよね。

古田:例えば性犯罪の記事は、確かにすごく読まれます。そこで、PVの分析に慣れていない方がその傾向を見て、「性犯罪の記事が読まれるなら、同様の記事を書けばいい」と考えてしまうと、それは近視眼的と言わざるを得ません。

竹下:PV狙いの記事は見破られてしまいます。記事にひと手間ふた手間をかけたり、違う視点を加えていかなければ、読まれなくなっていることがサイトのデータを見れば一目瞭然です。

古田:PVやシェアという数値だけでは不十分だと感じます。そこにはクリックしている生身の人間がいるわけです。どういう人が記事をクリックして、どういう人がどんな感情を持って記事をシェアしたのか。そういうことを、しっかりと想像して編集方針を決めていけば、PVに引きずられたり、記事のテーマ設定が近視眼的になることはないはずです。

後藤:私はニューズピックスが「意識高い」「ITベンチャーの仲良しクラブ」だと、誤解されるのを恐れていました。自分自身、企業批判もどんどんする記者だったので、入社後に編集長の佐々木(紀彦氏)に、「一度ニューズピックスのイメージを自己否定したい」と提案しました。

その後5月に始めたのが、「LINE 韓日経営」という特集。今年上場する日本のIT企業の中で、最も目玉になるLINEをターゲットにしたものです。日本発のアプリと言われるLINEですが、韓国資本の会社ですから、実際は韓国人がマネジメントしている非常にユニークな企業なのではないかと。ギリギリの取材交渉をしながらでしたが、念入りに取材して書きました。ニューズピックスは骨太なメディアであることを、企画で証明したいと考えています。

古田:僕らも「ポジティブなインパクト」が方針とはいえ、結果として批判記事になることもあります。そのときに議論しているのは、「この批判記事は何のために書くのか」ということ。批判するための批判や、炎上させることによって自分たちがPVを得るような記事ならば、書く意味はありません。批判の先に、世の中がポジティブになると確信を持てるのであれば、それはポジティブな記事になり得るということです。

次ページ 「新興メディアにもスクープは出せる」へ続く