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コラム

ビデオコミュニケーションの21世紀〜テレビとネットは交錯せよ!〜

AbemaTVと『君の名は。』のプロモーションは似てるんじゃないかという話

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『君の名は。』のヒットにはオウンドメディア戦略がある

知ってます?知らない人は、まず見に行ってください。素晴らしい映画です。この映画が、大ヒット中の『シン・ゴジラ』の興行収入を抜き去ろうとしています。最終的には100億円も視野に入ってきた。100億円に達する映画って年に一本出るか出ないかですよ。

監督の新海誠氏はこの作品が言わばメジャーデビュー。決して一般的な知名度があるわけじゃない。それが、超有名人であるゴジラの新作を抜こうとしています。なんだか大変な事態ですよ。

そこで『君の名は。』についていろいろ調べてみたんです。すると、まずツイート数がえらいことになっていた。

これは二つの映画のツイート数を比べたグラフです。データ提供はソーシャルメディア分析のデータセクション社。『シン・ゴジラ』は7月29日に公開されるや爆発するようにツイートが炸裂しました。普通は公開日以降下がるものなのに逆に増え続け、8月3日には最高値に達しました。10%抽出データなので、25万件ものツイートがつぶやかれたことになります。映画のツイート数として、記録的数値です。

ところが、8月26日に公開された『君の名は。』はそれを越えるツイート数を放ち、9月4日には3万9141の10倍で39万ものツイート数に達しています。バケモノです。それくらい感極まる作品で、そのツイートがまたお客さんを呼んでいるのでしょう。

もちろんtwitterだけでメガヒットになったのではなく、公開前にはテレビCMも十分に展開しています。配給は東宝ですから、そこはしっかりやってますね。

では直前のCMと、公開後に見た人のツイートで興行収入100億、という解釈でいいのでしょうか。いやいやもっとありました。

いちばん大きいのは7月7日の全国50館での試写会です。六本木で監督やキャストが舞台挨拶し、その模様を全国の映画館に中継したあと、一斉に試写が行われました。1万5千人が鑑賞したと聞いています。

それだけではない。6月25日には新海監督による小説版が角川文庫から発売。サントリー天然水のコラボCMもオンエア。山手線ADトレインも展開され、ローソンではリツイートキャンペーンが実施されました。

極め付けは、RADWIMPSによる主題歌「前前前世」が7月25日に、8月24日にはアルバム「君の名は。」が発売されています。新海監督が熱望して実現したコラボレーションで、そのマッチングの素晴らしさは映画を観るとわかります。

これね、オウンドメディアの話ではないですが、次から次に施策を打つのは、オウンドメディア的な作用だと言えると思うんです。

『君の名は。』にはオウンドメディアがあるわけではないです。でもあたかも「君の名はTIMES」が存在するかのように公開までの期間、次から次にいろんなコンテンツが飛び出してくる。もっとも大きいのが全国試写会でしたが、もっと細かな施策もどんどん出てくる。そしてわりと、見せちゃうわけです。なにしろ小説版を6月に出しちゃってるから、それ読んだ人は物語を知っている。だから誰かに何かを言いたくなってツイートが増えていく。試写会行った人もものすごく感動してるのでそのエッセンスだけでも分かち合いたい。巻き込まれた人びとがどんどん見たくなるわけでしょう。

そして公開日直前のツイートは、「ああ君の名は見たい」「早く見たい」「やっと見れる」そんな熱い期待であふれんばかりでした。

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ね、『君の名は。』とAbemaTVのプロモーションは、やや強引だけど似てるでしょ?
ええ、そうですよ。こういうプロモーションはこれまでだってありました。映画でもあったと思います。でももっと小さな規模の、マニアックなファン層がいる題材で行われていて、中ヒットぐらいになったパターンだと思います。

でもAbemaTVは800万ダウンロード、『君の名は。』は興行収入100億円。そんな規模は動かせなかった。マスを動かすのはマスメディアで、ソーシャルだなんだはそのフォローみたいな位置づけだったんじゃないでしょうか。それが、むしろ主です。テレビも打ちますけど、それで認知はできても人を動かせない。

ネットコミュニケーションはいま、マスレベルの人を動かすことができるようになったのではないでしょうか。

と言いつつ、『君の名は。』の話をしたかっただけですけどねー。

境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)

1962年福岡市生まれ。1987年東京大学卒業後、広告会社I&S(現I&SBBDO)に入社しコピーライターに。その後、フリーランスとして活動したあとロボット、ビデオプロモーションに勤務。2013年から再びフリーランスに。有料WEBマガジン「テレビとネットの横断業界誌 Media Borer 」を発刊し、テレビとネットの最新情報を配信している。株式会社エム・データ顧問研究員としても活動中。お問合せや最新情報などはこちら