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会議賞最終審査員が応募者だったら? — 素人目線で考える取り組み方

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一等賞になる「運」があるかどうか

—磯島さん・三井さんは一次審査員のご経験もあります。実際、どのようにして審査は進んでいくのでしょうか。

磯島:一次審査では、審査員一人ひとりに3000 ~ 5000の応募作品が割り振られ、そこから100程度に絞り込みます。

ざっと一通り見ると、今年の傾向がわかる。そこで、これは違うなというものを抜いていくと、200 ~ 300くらいになる。

そして、もう一度見ていくというやり方をしていました。

三井:私も磯島さんと同じ方法でした。

一次審査は、一人で審査をするので、その方が基準となります。だから、運の要素も大きいのでは…と思います。

岡本:人が選ぶのだから、運みたいなものもあるでしょうね。そうは言っても、最終審査に残っているコピーを見ると、良いものが多いよね。

磯島:最終審査のやり方は純粋な多数決です。ある一定のところまで絞ったら、最終投票。その前に、“応援演説”があるときもありますね。

岡本:不思議なもので、残る気配のあるものがあるんですよ。残さずにはいられない佇まいを持ったもの。ただしグランプリは、一瞬で「これだ」とわかるものではない。

磯島:それはそうですよね。最終審査となると、どれも一定以上のレベルの作品が揃いますから。あとはその中で、一等賞になる「運」があるかですね。

賞レースと仕事現場のギャップ

岡本:正直なことを言うと、宣伝会議賞は本筋の仕事現場とは違って、「コピー制作ごっこ」をしているんじゃないの?と思っていた。参加者が「頑張ったね~」とワイワイ騒いで完結するというイメージがあって(笑)。

磯島:それはわからなくもない。広告やコピーというのは本来、良いアイデアが出て、そこで終わりではないんです。それをどう実現していくか、形にして世の中に出していくか。この部分にものすごく力がいるわけです。賞レースでは、それを抜きにして「良いコピー」を書くだけで良い。かと言って、実際の仕事と宣伝会議賞で「選ぶものに違いがあるのか?」と聞かれたら、そんなに変わりはないと思う。例えば、第52回でグランプリを受賞した「人生の半分は無職です。」(課題協賛企業:ゆうちょ銀行/企業広告)。これは、クライアントから「うちじゃなくても良い」と指摘が入る可能性があります。実は「貯金」のコピーですから。でも、僕は実際の仕事だったとしてもこういうコピーを提案すると思う。だから、コピーを選ぶ姿勢はそんなに変わらないのではないかと思いますね。

岡本:僕も、実際に審査するときは、仕事か賞かという垣根を超えて、真剣に考えますよ。だからこそ「たくさん書いたから出しておこう」と思って応募してくる人には腹が立つ(笑)。

三井:リアルな仕事現場だと、薬事法に抵触しないか、考査に引っかからないか、などの視点が入りますよね。過激なものはなかなか実現しない事情がある。その意味で、過去に印象深い受賞作品があって。第50回のシルバー受賞作品の、「自殺のわけがない、だってラップをかけてるんですよ。」(課題協賛企業:旭化成/「サランラップ」)というもの。実際の仕事だと「自殺」というキーワードでNGが出る可能性がありますよね。でも、このコピーがファイナリストに選ばれたときに、なんだか泣きそうになりました。このコピーから場面が浮かんで…。まるで一つのドラマのように感じたんです。「実際に通すのも仕事」と考えたら、賞レースの甘いところが出た例かもしれない。でも、これが評価されるのが宣伝会議賞の良いところだなと。

岡本:リアルな仕事現場の事情を持ってくるのか、それとも賞レースとして割り切るのか、それは審査をしていても悩むところではありますよね。

—クライアントのオリエン内容と審査員の選ぶものにもギャップがあるのでは?といった声も聞こえますが、いかがでしょうか。

磯島:そうですね。難しいのは、選んでいる審査員がクライアントではないということ。第三者のコピーライターが選ぶのですから、やはり「コピーとして良いもの」を選ぶことになります。クライアントの要求を加味しながら、コピーライターとしてはどのように考えるか、どう世の中に出すかといった視点で書いたほうが、審査員とのズレがないと思います。

岡本:例えば課題企業の中にはBtoB企業もあるけれど、この賞自体は一般に広く公開されたもの。事情を知らない人たちの興味を引きつつ、クライアントの要求に適っているものが選ばれていくのではないでしょうか。複眼的に宣伝会議賞を見ると良いかもしれません。

次ページ 「「無意識の盗作」をしていないか」へ続く