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コラム

電通デザイントーク中継シリーズ

あなたは世界が熱狂する「eスポーツ」のポテンシャルを知っているか?【前編】

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eスポーツの日本普及を阻んでいたものは何か?

筧:海外では何万人もの観客を集め、賞金額が数十億円にも上る大会もあるeスポーツですが、なぜ日本ではそれほど流行していなかったのでしょうか。

馬場:日本ではゲームは、“子どものおもちゃ”と思われがちですが、海外では違います。統計によって幅がありますが、アメリカのゲームプレーヤーの平均年齢は34歳から37歳で、フランスでは41歳です。欧米ではゲームは大人のレジャーとして、多様で豊かな文化を形成しています。

さらに、ゲーム機の世界3大プラットフォームのうち二つが日本発であることから分かるように、日本のゲームはゲーム専用機を中心に発達してきました。その結果、パソコンで行うオンラインゲームの普及が遅れ、ガラパゴス化してしまったのです。

筧:最近は、その状況にも変化が起きているということですね。

馬場:はい、例えば「ニコニコ動画」などにアップされた上級プレーヤーのスゴ技動画を見て、驚き感激する人たちが増えています。さらに、「同人ゲーム」として自分たちでゲームをつくる人たちも出てきました。ガラパゴスだった日本は、少しずつ世界標準に近づきつつあるという印象を持っています。

筧:法律の観点から、eスポーツ普及の阻害要因になっていることはありますか。

藥師神豪祐
恵比寿南法律事務所代表弁護士

藥師神:プロゲーマーには欠かせない「賞金付きゲーム大会」を開催するためには、いくつかの法律を乗り越える必要があります。

まず一つ目は刑法の「賭博(とばく)罪」です。参加者から徴収した参加費が賞金の原資となると、賭博罪に当たる可能性があります。二つ目は、「風営法」です。例えば、風営法が適用される事業者であるゲームセンターが大会を開く場合、ゲームセンターが賞金などの「賞品」を出すことは明確に禁止されています。そして三つ目は「景品表示法」です。例えば、ゲーム会社が、賞金付きゲーム大会を開くに当たり、ゲームの購入者のみに参加資格を与えるような場合には、賞金でゲームの購入を誘引する形になり得ますので、景表法に抵触する可能性があります。最後の四つ目が「著作権法」です。賞金付きの大会に限りませんが、ゲーム会社からライセンスを受けずに勝手に営利目的でゲーム大会を開くと、著作権侵害になり得ます。ゲーム大会を開く場合には、使用するタイトルを保有するゲーム会社と連携することが求められます。

筧:どのように乗り越えていけばいいのでしょうか。

藥師神:風営法は警察庁、景表法は消費者庁が所管していますが、企画段階できちんと法的論点と適用され得る法令の条項を整理した上で問い合わせれば、通常は規制対象か否かにつき見解を示してもらえます。

著作権にしても、大会が行われれば宣伝にもなり、コミュニティーも育ちますので、無料でライセンスしてくれるメーカーもあります。勝手に大会を開くのではなく、事前に各所とすり合わせるという「契約的発想」をもって動かしていくと、企画が実現しやすいですし、内容も全体の利益にかなうものになります。実際、実務上の論点は整理されつつあり、日本でもたくさんの大会が実現しています。運営資金や賞金をどう集めるかについてのビジネス上の問題は残りますが、法規制の大きなハードルはありません。

筧:問題は解消しているわけですね。日本でも観客が2000人も集まるようなリーグオブレジェンドのジャパンリーグが開催されるようになりましたし、その大会のサマーシーズンのチケットは争奪戦で、あっという間に完売したそうです。飲料やパソコンのメーカーがスポンサーについていますし、日本でもeスポーツが浸透してきているのは間違いなさそうです。

続いては、プロプレーヤーの実態と、eスポーツの未来について聞いていきたいと思います。

【後編】に続く

電通報でも記事を掲載中


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馬場章
東京大学大学院情報学環元教授

1958年茨城県生まれ。専門は日本経済史、歴史情報論、コンテンツ創造科学。科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(CREST)で「オンラインゲームの教育目的利用のための研究」を推進、また、日本デジタルゲーム学会初代会長として日本のゲーム研究を牽引してきた。現在は、デジタルゲームを中心にエンターテインメント全般を学際的視点から研究。とくに、eスポーツプレーヤーの身体・精神的優位性と教育効果の究明を重視する。メディア掲載・出演など多数。中山隼雄科学技術文化財団理事、科学技術融合振興財団理事、日本eスポーツ協会理事などを務める。過去にはDiGRA2007(The Third International Conference of the Digital Games Research Association)組織委員長、日本賞コンテンツ部門審査委員なども歴任。第1回日本デジタルゲーム学会賞受賞。

 

梅崎伸幸
株式会社Sun-Gence代表取締役、プロeスポーツチームDetonatioN Gaming CEO、日本プロeスポーツ連盟共同代表理事

1983年福岡県生まれ。大学卒業後に大手電機メーカー企業に就職し、7年間営業職として勤務。入社の5年目に当時のゲームのオリンピックともいえる「World Cyber Games」に出場することを目的としたチーム「DetonatioN」を結成。2015年2月には「DetonatioN FocusMe」という、日本初の給与制・共同生活を行うプロゲーマーチームを開設。
2016年4月には日本初となるeスポーツ教育機関、東京アニメ・声優専門学校e-sportsプロフェッショナルゲーマーワールドコースの講師に就任。日本のeスポーツシーンを牽引するキーマンである。

 

中山大地

プレーヤーネームはノビ。1991年長野県生まれ。鉄拳インストラクターとしてナムコ巣鴨店で3年間鉄拳の講師として勤務。その後はフリーランスとして活動し、全国の組手イベントなどに参加する。2015年に開催された世界最大規模の格闘ゲーム大会であるEVOLUTION、同年12月には鉄拳20周年特別賞金制大会 THE KING OF IRON FIST TOURNAMENT 2015 GRAND FINAL 鉄拳7 無差別1on1部門優勝と世界大会を2連覇。過去にも世界大会で優勝しており、鉄拳で日本初の世界王者として君臨する。現在は各地で講習会やイベント企画などを通して鉄拳だけではなくゲーム業界を盛り上げていこうと奮闘中。

 

藥師神豪祐
恵比寿南法律事務所代表弁護士

1984年愛知県生まれ。東京大学経済学部卒業。東京大学法科大学院修了。eスポーツに欠かせない要素である、賞金付きゲーム大会についての法務や、プロゲームチーム・プロゲーマーの顧問業務等などに従事。東京アニメ声優専門学校プロゲーマー専攻講師(マナー・契約概論)。eスポーツ支援のための弁護士団体LNeS(Lawyers Network for eSports)を設立。外資系法律事務所や大型事務所の弁護士と連携し活動中。

 

筧誠一郎
一般社団法人日本eスポーツ協会事務局長、一般社団法人e-sports 促進機構理事、eスポーツコミュニケーションズ代表

1960年東京生まれ。1983年株式会社電通入社。主に音楽、ゲーム分野の作業に従事。2010年電通退社。eスポーツ関連業務とエンターテインメント系コンサルティングを手掛ける。