西脇 淳(にしわき じゅん)
タイガー タイガー クリエイティブ
クリエイティブディレクター
大広を経て「風とランディ」設立。2013年風グループを離れ「タイガー タイガー クリエイティブ」に。主な仕事にSUZUKI「SOLIO」、スロートレイン「河島亜奈睦」、関西電力「20歳の神戸」、阪神電鉄「阪神沿線物語」、朝日新聞「こども広告」など。この夏、書籍「広告四字熟語」を上梓。ACCグランプリ、TCC新人賞、佐治敬三賞など受賞。
この原稿を書くにあたって、「賞を取る」と「賞を獲る」どっちが正しいんだっけ?と気になり調べていると、ヤフー知恵袋に全く同じ質問を見つけました。そのべストアンサーには、こうあります。
『受賞といいます。受ける、いただくもので、「取る」や「獲る」など荒々しいことをしていただくものではありません。賞は資格とは違います。』
なるほど、そうなんです。そのことに気づかず、賞を取るために、賞を獲りたくて宣伝会議賞にエントリーしていた20代の頃。案の定、賞を「受ける」ことはありませんでした。最終ノミネートが、自己ベストだったかな。
コピーって、賞のために書くものじゃないんですよね。モノを売るため、ブランド価値を上げるため、何かを主張するため。コピーはクライアントの何らかの目的を果たすための言葉なんです。だから「賞を取りたい」は邪念。本来の目的にまっすぐ向かうべき気持ちを邪魔してしまう。それではピュアな「効く言葉」にならないんです。
まず、賞のためではなく、クライアントのためにコピーを書いてください。クライアントの社員として商品を売るためにどんな工夫ができるかを考えてください。広告は比較的サイクルの短い商売です。今取り組んでいる仕事がうまくいかなくても、次の仕事で取り返すことができる。でも、皆さんが取り組もうとしている課題の商品は何年も、何十年もかけて開発された商品かもしれない。自分が手塩にかけて開発した商品なら、ありとあらゆる可能性を時間の限り探しませんか。
もっと違うターゲットはいないのか?もっとお客さんに響くセールスポイントはないのか?もっと記憶に残る言い回しはないか?そうやって自分の案を疑うもう一人の自分をつくることで、360度あらゆる方向の可能性を探ってください。本当に360度全方位の検証ができていれば、必ず一つは正解があります。大正解ではなくても正解が。そこまで行ければ、一次審査は通過です。
まずは自分なりに全方位考え尽くした、と思えるところまで頑張ってみてください。それでも、やはり一人の人間が考えられることには限界があって、抜け、モレがあります。ライバルが書いた「自分は気づかなかった方向性」に、嫉妬、感嘆をおぼえたら、それは成長の証です。
たくさんの課題に取り組むことは受賞の確率を上げること、たくさんの経験を得ること。だから、できる人は是非そうしてください。でも考えるのが遅い人、まだコピーを書くことに不慣れな人は、自分が本当に好きだ、売りたい、と思う商品に集中して、自分なりの360度検証に挑戦してみるのもいいと思います。そうすれば、もし賞という結果において、ダメだったとしても、ライバルの思考に嫉妬することができるはずです。
宣伝会議賞のいいところは世界一ライバルが多いところ。一人では思いつかないアングルを必ず誰かが見つけ、自分の思考の幅の狭さ、考察の浅さ、遊び心のなさ、すなわち人間の器の小ささに気づかせてくれます。ライバルに嫉妬し、人間の器を大きくする努力を続けれていれば、いつか「賞を受ける」日が来ると思います。その日まで、自分を信じて。
引用:ヤフー知恵袋
日本最大規模の公募広告賞「第54回宣伝会議賞」は、11月11日13:00まで作品応募を受付中です。課題は好評発売中の「宣伝会議」10月号誌面をご覧ください。また、応募は公式サイトで受け付けています。
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