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コラム

電通デザイントーク中継シリーズ

映画監督と広告人による、超アナログ的な制作の秘密「ふたりは なかよし」(後編)

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CMから学んだ映画製作に生きること

田島:テレビCMと映画のディレクションに差はありますか?

吉田:先ほど言ったように、サッカーでいえばCMのディレクションは「フォワード」ですが、映画のディレクションは「監督」です。映画をつくるときは全体を見渡せるように視野を広く持たなければいけません。

田島:大八さんの映画はカット割とか編集の仕方がCMっぽいですよね。それが飽きさせない“間”だったりすると思うんですけど…。CMは30秒ですが、映画は2時間あるので、CMの演出や編集方法を取り入れるのも大変なんじゃないかなと思うことがあります。

吉田:自分では分かりませんでしたが、そうかもしれないですね。特に1本目と2本目はCMディレクターとして映画をつくっていた感覚で、芝居よりもカット単位で俳優を振り付けるなど、CMっぽいところがあったのかもしれません。でも、そういうやり方は、映画を撮っていく中で、まず演出をしてその中でどう切り取ろうかという映画の方法にだんだん変わってきたのだと思います。

田島:CMもいろいろ一緒にやりまたが、大八さんの演出には映画っぽい“間”がいつもあって、映画のワンシーンのような感じがするなという印象を持っていました。たぶん知らず知らずのうちに映画への思いを持っていたのかもしれませんね。

それでは最後に、最新作「美しい星」の話をお願いします。

吉田:「美しい星」は三島由紀夫には珍しいSF作品で、ある家族が自分たちは宇宙人であることに目覚めるという話です。原作が書かれたのは米ソ冷戦の1962年で、核の恐怖が背景にありした。それを現代に置き換えて脚色したのが今回の映画です。来年5月に公開予定ですので、ぜひ見てください。

田島:大八さんは僕にとってお兄さんのような存在です。僕らクリエーティブディレクターやプランナーは、自分が面白いと思うことがどんなふうに世の中に広まっていくのか不安だらけですが、そういう悩みを大八さんには素直に相談できます。CMディレクターや映画監督は着地点を知っている唯一の存在です。そういう相談相手がいることは、クリエーティブにとって強みだと思いますし、本当に幸せなことだと思っています。

今日はありがとうございました。

電通報でも記事を掲載中


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■吉田大八さんのプロフィール

1963年生まれ、鹿児島出身。CMディレクターとして国内外の広告賞を受賞する。2007年『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』で長編映画監督デビュー。第60回カンヌ国際映画祭の批評家週間部門に招待され話題となる。その後の監督作として『クヒオ大佐』(09年)、『パーマネント野ばら』(10年)。『桐島、部活やめるってよ』(12年)で第36回日本アカデミー賞最優秀作品賞、最優秀監督賞受賞。『紙の月』(14年)で第38回日本アカデミー優秀監督賞受賞。最新作『美しい星』を2017年公開に向け製作中。

 

■田島恵司さんのプロフィール

1968年生まれ。グループ・クリエーティブディレクター。20年前にマツモトキヨシのCMシリーズで吉田大八さんと初タッグを組み話題となる。その後、桃の天然水シリーズや白元、三菱地所などでもCMを共作。最近はユニクロなど数多くの作品のクリエーティブディレクションを手掛けている。