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コミュニケーション視点で読み解く、米・大統領選 — 識者はこう見る!(平林紀子氏)

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平林紀子氏
埼玉大学人文社会科学研究科 教授

政治学博士。専門は、米国政治および戦略広報。米国大統領選挙を中心に、政治選挙におけるマーケティングおよびコミュニケーション・広報戦略を研究。米ハーバード大学、ジョージワシントン大学の客員研究員、埼玉大学教養学部教授を経て、2015年から現職。主要著書に『マーケティング・デモクラシー:現代米国政治の戦略技術』(春風社、2014年刊行)など。

 

トランプは、「怒りのメッセンジャー」(選対本部長)として、そのメッセージにブレがなかった。

長年、米国の繁栄と価値観を支えてきたと自負する白人庶民層は、政治からないがしろにされて、もはや怒りは限界値。トランプは、最大の投票ブロックである彼らの怒りの究極の代弁者であり、それに尽きる。だから、政策もセクハラもどうでもよかった。米国選挙で当たり前のマーケティングや世論調査もほとんど使わない。何が欲しいかでなく、何に一番苛立っているかをカギにした大きなマーケティングだともいえる。

メッセージの拡散力も飛び抜けていた。選挙戦が始まるまでの1年間に、トランプが得たマスコミ報道は広告価値に換算すると20億ドル分にもなる。選挙中のTwitterフォロワー数は1500万人とダントツだ。

ヒラリーのほうも、トランプ政権への「恐怖」に駆り立てられて投票した人は少なくなく、実際、投票者総数ではトランプを上回った。しかし最新の広報マーケティングを駆使したヒラリーの都会中心の選挙では、全米の田舎や工場地帯にうねる怒りの波には勝てなかったということだろう。

ヒラリーとトランプの選挙運動は、よく「マシン対ムーブメント」に例えられるが、民主党予備選挙でヒラリーを追い詰めたサンダースの例でもわかるように、ムーブメントの季節がやってきている。熱いひとの、その熱が人々の間を伝染していき、化学反応を起こす。その勢いは、計算や商売で止められるものではない。やはり、ひとを動かすのはひと、だ。

ただ、選挙は説得すればいいが、実際の政治運営は対話だ。交渉は、勝つものではなく分け合うものだ。トランプにそれができるか。大統領の戦略コミュニケーションの真価が問われるのはこれからだ。


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