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神谷佳成監督が語るディレクター道「『1億人がドカンと沸く』 それが CMの快感」

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神谷監督が選んだCM3選 せがた三四郎、ポッキー、ジョージア

1つ目に流れたのは今から約20年前、神谷監督がフリーになった直後に制作したセガサターン「せがた三四郎」のCMだ。黒沢映画の登場人物・柔道家の姿三四郎にかけた藤岡弘、が演じる「せがた三四郎」が登場し、セガサターン以外の遊びに興じる子どもたちに背負い投げなど容赦ない制裁を加え、「セガサターン、シロ!」の決め台詞を放つ、当時の大人気シリーズだ。「僕はバカバカしいことを突き詰めてやるのが大好きなんです。このCMはその典型で、その後の自分の演出のベースになっています」。

次に演出家として転機となったCMは、新垣結衣が街中で踊るポッキーのCMと、カンヌライオンズも受賞したつばさ証券の忍者が登場するCMだ。「当時まだ無名だった新人の新垣結衣さんがポッキーを持って突然踊り出し、街に出ると皆もついてきて踊り出す…という設定でおかしさを演出しています。ポッキーは定番商品ですが、新鮮に見せたいということで、新人タレントを使うことになりました。しかしそれだけではCMのタレント力が弱くなってしまうので、そこを楽曲のORANGE RANGEのメジャー度でカバーするという計算をしたんです」。

つばさ証券のCMではマヌケな行動をとる忍者にスポットを当て、パートナー選びの重要性を訴えた。「登場する忍者の掛け声は実は僕の声です。プランナーの人たちに演出コンテを説明する時は、僕自身がいつも通しで演技して説明するんですが、だいたい完成した作品よりもそっちの方が面白かったと言われるんです。エステWAMのCMのプレゼンでは、そのまま『監督が出ればいいんじゃないか』という話になり、CMに出演したこともあります(笑)」。

最近のドコモのdポイントシリーズでも、キャラクターのポインコの声をまず自分の声で吹き込み、その声を元にマペットを動かし、最後にお笑い芸人のロッチに吹き替えてもらっている。「声で雰囲気をつくりこんで伝えることで、マペットを動かす演者の人の動きが変わります。より自分のイメージに近づけるための方法です」。


最近手がけたCMとして、最後に紹介したのは、缶コーヒー ジョージアのCM。山田孝之が営業マン、大工、海の家の従業員など、さまざまな職種を演じるシリーズだ。「完璧な営業マンや大工さんが出てきて、『世界は誰かの仕事でできている。』と普通にカッコよく演じると、作っている方も気恥ずかしい。それに、きれいごとに聞こえて共感されないと思いました。僕自身、とても俗な人間なので、どこかダメな人間じゃないと愛せない。そこは山田くんも同意してくれて、『全員欠点のある人のシリーズにしましょう』と話をして。そうすることで、愛されるCMになるんじゃないかと考えました」。


どこか愛すべきところを入れる、というのは他のCMでも心がけている点。「ポッキーのCMでも、踊り慣れていないガッキーが一生懸命にギリギリ踊れている感じだったり、ポインコのCMだったら、人が動かしているので多少動きがブレていたり。きちんとできているけれど、愛すべきところがあるようにしたいと思っています」。

次ページ 「CMは1億人を相手にできる仕事」へ続く