メール受信設定のご確認をお願いいたします。

AdverTimes.からのメールを受信できていない場合は、
下記から受信設定の確認方法をご覧いただけます。

×
コラム

電通デザイントーク中継シリーズ

「オヤジフェス2016!」旧は新を兼ねる。オヤジは若さの進化形。【前編】

share

みんな失敗を経て成長した

山本:日高くんは若い頃、どんなことを考えていた?

日高:僕が上京した1985年の広告界は、アート派と言われるサイトウマコトさんや井上嗣也さん、戸田正寿さんが活躍している時代でした。初めて働いた会社は雑誌専門のデザイン会社で、ずっと広告デザインの世界に行きたいと思っていた。当時、一番すごい会社はどこだろうと探す中で仲畑広告制作所を見つけ、仲畑貴志さんに手紙を書きました。

絶対に読んでもらえるように工夫して、模造紙に手書きで文字を書いて、A4サイズに折り畳んで送りました。そしたら仲畑さんが会ってくれることになって、僕はすっかり仲畑広告制作所に入れるものだと思い込んで、働いていた会社に辞表を出しました。若造のくせに根拠のない自信だけはあったのです(笑)。面接で一所懸命にプレゼンしたものの、けんもほろろで入社できませんでした。ちょうど25年前のクリスマスでしたね。

それから年末に郷里の宮崎に帰って1カ月ほどいたのですが、一念発起して『コマーシャル・フォト』の求人欄を探し、宮田識デザイン事務所(現在のドラフト)を見つけました。「広告をテーマに原稿用紙5枚書く」という課題の締め切りは翌日。そこで新幹線の中で課題を書いて、そのまま東京にある事務所まで持っていきました。

たまたまエレベーターの中で宮田さんと乗り合わせて履歴書と課題を渡し、4回ほど面接を受けて入社できました。運もあったのですが、「次のステップに行きたい」という若さゆえの無鉄砲さや熱意、野望がありましたね。

山本:ドラフトに入った当初はつらかった?

日高:そうですね、ドラフトに入ればすぐに宮田さんと一緒に仕事ができると思っていたのですが、なかなかできなくて悔しい思いをしました。まだ27歳の若造でしたから、今から思えば、必要な下積みでした。

ようやく念願がかなって宮田さんと仕事をするチャンスが回ってきたら、提案したデザインを全部破られてしまうほど厳しくて、それはとても大変でした(笑)。

山本高史氏

山本:僕が電通に入ったのも1985年でしたね。第2クリエーティブ局に配属になり、当時30代後半だった大島征夫さんの下に付きました。

ある時、そろそろ独り立ちするように言われて、お肉用ソースのコピーを担当しました。ターゲットの専業主婦にソースを売るという比較的シンプルな仕事でしたが、いくら考えても何のアイデアも出てこない。結局、当時の僕は主婦が何を幸せに思うのか、家族に対してどう思っているか、ご飯をつくることをどう考えているのか、何も分かっていなかった。

知らないことは考えることもできないのだと気付き、それ以来、できるだけいろいろな経験を積むように心に決めました。

三島くんは入社した頃の自分をどう思う?

三島邦彦氏

三島:僕は入社して9年目です。1年目は営業で、2年目からクリエーティブに配属されました。転局して数カ月たった時に高史さんに飲みに誘われ、「どうやったらコピーがうまくなりますか」と聞いたことがあります。

すると、「そんな質問はするな。おまえは最短距離を行こうとし過ぎるから、できるだけ遠回りをしろ」と言われて、ハッとしました。何も分かっていない自分が悩むのは当然のことで、悩むこと自体が良いことなのだと気付きました。

山本:そんなこと言ったっけ? お酒を飲むと説教じみたことを言いたくなるんだよね(笑)。

後編につづく

電通報でも記事を掲載中


「電通」に関連する記事はこちら

山本高史
株式会社コトバ クリエーティブディレクター コピーライター

関西大学社会学部教授。1961年京都府生まれ。1985年大阪大学文学部卒。同年、電通入社。数多くのキャンペーン広告を手がける。2006年12月電通を退社。コトバ設立。オリンパス「ココロとカラダ、にんげんのぜんぶ」、三井住友海上「未来は、希望と不安で、できている。」、JR東日本「Suica」、トヨタ自動車、サントリー、資生堂、キリンビール、キユーピー、S&B、MS&AD、よしもとクリエイティブ・エージェンシー、インベスターズクラウド、カメヤマなど数多くの広告を手掛ける。著書に「案本」(インプレスジャパン)、「伝える本。」(ダイヤモンド社)、医師・鎌田實氏との対談本「ここから。」(KKベストセラーズ)、隠された名エロ小説「ボクキキイッパツ」(講談社)などがある。2016年9月1日「広告をナメたらアカンよ。」(宣伝会議)を刊行。主な受賞歴:TCC最高賞、クリエイター・オブ・ザ・イヤー特別賞、TCC賞、ADC賞、ACC賞、日経広告賞、新聞広告賞、消費者のためになった広告コンクールなど多数。

 

日高英輝

1962年宮崎県生まれ。株式会社ドラフトを経て、2001年グリッツデザイン設立。グラフィックデザインをベースに広告、グラフィック、パッケージ、映像、ウェブなど、さまざまな領域で活動中。主な仕事に、LEXUS 、UNIQLO、au、 JR東海、サントリー「天然水」、宮崎県プロモーションなど。主な受賞に、日本グラフィックデザイナー協会新人賞、日経広告賞グランプリ、ニューヨークADC銀賞、JR東日本ポスターグランプリ金賞、世界ポスタートリエンナーレトヤマ銅賞、グッドデザイン賞など多数。

 

三島邦彦
電通コピーライター

長崎県長崎市生まれ。朝日広告賞、ラジオ広告電通賞、ACC賞、交通広告グランプリ、FCC賞、OCC賞など。