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ニューズピックス×幻冬舎が挑む、新たなメディアビジネスのかたち

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「本が売れない時代」と言われて久しいが、本が持つポテンシャルはまだまだ発揮されていないのではないか――。そんな本の持つ可能性を最大限活用しようと、出版社とネットメディアによる新たな取り組みが、本日4月1日より幻冬舎とニューズピックスから発表された。両社がタッグを組んで開設する「NewsPicksアカデミア」は、経済と教養を学ぶプラットフォームだ。本を教科書のように活用し、「リーダーの教養」をテーマにして、多数の講義やイベントを開催。リアル×ネットを通じて、新たな時代を担うリーダーや挑戦者が集う場を創るという。同プロジェクトを主導する「NewsPicks」編集長の佐々木紀彦氏と幻冬舎の箕輪厚介氏に、その背景を聞いた。

――今回のローンチに至るまでの背景について教えてください。

佐々木紀彦:まず、これまでNewsPicksを運営していくなかで課題だと感じていたのは、どうすれば今以上に読者のみなさんが思考を深める機会や、読者のみなさんとの関係性そのものを深める場を創ることができるのか、ということでした。

ニュースとそれに対するコメントがつくという現在のモデルは、何かを知ったり学んだりするきっかけとしてはいいのですが、その関係性をより深くするために何ができるのか、というのは長らく考えていたことでした。

今はこれだけスマホが中心の世の中になって、最新のニュースや短い記事ばかりが読まれるようになると、その対極とも言える「じっくり本を読むこと」や「じっくり語り合うこと」の価値は、相対的に高まっていると思うんです。

たとえば、NewsPicks上でのコミュニケーションがカジュアルに挨拶するものだとしたら、本を読むのは居酒屋で長くトークするような深みがある。ネットだけで完結できない深みを演出するような仕組みをつくりたいというのは、以前から考えていました。

箕輪厚介:僕ら幻冬舎の立場から言えば、これからの出版社のビジネスを考える上で、コンテンツ提供側ではなく、プラットフォーム側にならなくてはいけないという想いがあり、社長の見城はそのことを強く感じていました。

自社でつくるか、どこかとパートナーを組むべきかを考えた際に、真っ先に僕の頭に浮かんだのが、NewsPicksさんだったんです。ネット上ではなかなかコンテンツにお金を払うという文化がない。そんな中、NewsPicksさんだけは有料会員が継続的に増え、記事の質がどんどん高まり、それでまた有料会員が増えるという良い循環があった。

書籍というのは広告ではなく、読者からお金を払ってもらうことでビジネスが成立しています。だから組むとしたら、コンテンツにしっかりとお金を払うユーザーがいるニューズピックスさんしかないと思い、佐々木さんに相談をしてみたんです。

佐々木:昨年からNewsPicksもイベントに力を入れ始めましたし、私自身は前職の東洋経済時代から通算すると5年以上にイベント事業に携わってきましたが、どうしても、その場だけで完結してしまうことが多かった。つまりいくらイベントをしても、それがコミュニティにまで発展したり、実際の行動や出会いが生まれたりする空間にはなっていなかったんです。

そうしたこともあって、イベント事業をより大学のように進化させて、継続的に同じテーマで集まったり、テーマを設けて学べる場にできないかと考えていました。そんなときにちょうど箕輪さんからの話があり、今回の新たなプロジェクトにつながったんですよね。

――まさに両者の構想とタイミングとが合致したと。

佐々木:そうですね。今回アカデミアのコンセプトも「リーダーの教養」としているんですが、それはたとえば経済だけに完結するのではなく、アートなども含めて幅広いジャンルを想定しています。

経済メディア同士で組むのではなく、あえて幻冬舎さんのような多様なジャンルに精通されているメディアと組むことで、これまでにない新しいコンテンツを発想したり、新たな出会いを演出することもできるではないかと思っています。

箕輪:NewsPicksさんのような最先端のWebメディアと、アナログな本を扱う幻冬舎との両者の知見を組み合せることによって化学反応を起こそうというのは、最大の狙いでもありますね。

佐々木:本というのは、やはり深みのある媒介なんですよね。たとえば、教会があれだけ盛り上がるのも、聖書という存在があるからだと思うんです。ただ単にみんなで集まるだけじゃなく、聖書を通じて知や教養を共有している。

私自身も、スタンフォード大学大学院に留学していた際に、同じ「知」と「場」を共有することの価値を強く感じました。授業中の議論がすごく盛り上がる大きな理由のひとつは、みんなが共通の課題図書を読んだ上で、思考をぶつけ合うからなんですね。あらかじめみんなで同じ本を読み込んだ上で話し合うから議論が深まるわけです。

箕輪:自分自身で考えてみても、自分の人生に影響を与えた本を10冊挙げろと言われたらすぐに挙げられますが、ネット上の記事やコンテンツで10個挙げろと言われても難しい。毎日膨大な数のネット記事を読んでいるにもかかわらずです。

なので、どっちが良い悪いではなく、本とWebコンテンツは役割そのものが違うと思っています。本はある種隔離された空間で読むから、すごく深く心に刺さりやすいんですよね。

――だからこそ本を教科書のような位置づけにして、イベントやNewsPicks上でも連動させていくんですね。

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「NewsPicks Book」第一弾は『リーダーの教養書』

箕輪:そうですね。その本というのが、ニューズピックスさんと幻冬舎で立ち上げる「NewsPicks Book」という新たなレーベルです。これを月に1冊ずつ出していく。もちろん本は書店にも並びますが、雑誌の定期購読のようにNewsPicksアカデミアの会員には毎月届きます。バラバラと出すのではなく、1年12冊揃ったときに、体系的な知が得られるようなものを考えています。

各分野の専門家による骨太の教養から、堀江貴文さんのような「今を生きる」起業家の仕事術まで、普遍と最先端を両翼でやっていきます。その際に、NewsPicksで話題になった特集を書籍にしたり、逆に本の内容をNewsPicksで記事にするなど、縦横無尽にコラボしてやっていこうと考えています。

佐々木:NewsPicksアカデミアは、月額5000円の会員サービスですが、本を単なる独立したハードとして考えると、5000円という定額モデルにする必要はありませんし、みなさんに直送する必要もありません。

今回、本をイベント・書籍とセットにして提供するのは、本はあくまで入り口として考えているからです。その先にある体験や出会いや思考のぶつかり合いを掛け合わせることで、新たな価値を生み出せないかと思っています。いわば、「本×イベント×コミュニティ」でどんな化学反応を起こせるかというチャレンジです。

流通面でも、直接、読者の方々とつながることによって、直接フィードバックを得られるというのも、今までの書籍流通との大きい違いですね。

左)「NewsPicks」編集長 佐々木紀彦氏、右)幻冬舎 箕輪厚介氏

箕輪:本をつくる側からすれば、出版不況の中で、内容よりも売れるタイトルをつけることを優先したり、新人を発掘するよりも、過去の実績がある著者に書かせるという方向に行きがちです。もちろん売れなくては意味がありませんが、そればかりを考えていると似たような本の縮小再生産になってしまって、結果的に「本はつまらない」と読者が離れてしまうと思っています。

今回のプラットフォームが軌道に乗れば、腰を据えて良い本がつくれる、面白いと思う企画をフルスイングしやすくなる土壌になるかなと思っています。「NewsPicks Book」の第一弾は『リーダーの教養書』といって、11名の選者の方が130冊の教養書を紹介するかなり骨太の本ですが、初版はかなりの大部数で勝負します。

佐々木:近視眼的な売上にとらわれない本をつくれるという意味では、チャレンジしやすくなりますよね。

それに、これから人生100年時代と言われるように、80歳くらいまでは自分のスキルや好奇心、人脈などを日々更新していかないといけない。ただ今の日本では、大人が新しい知見や教養や仕事と出会える「学び」の場がほとんどありません。

たとえば最先端のテクノロジーの教養を身に付けたいと思ったら、AIについて、その本質をサクッと学べる場があったらいいですよね。そうしたテーマを面白く学べる場を提供してきます。この“面白く”というのはすごく大事で、そこは徹底的にこだわりたい。学ぶことは本来、苦痛ではなく、最高の娯楽でもあることを表現できればと思っています。

箕輪:最近お会いしたコルクの佐渡島庸平さんが「今の時代に成功するのは、インターネットを使って、リアルでもやらないくらいの地道なことをやりつづけること」とおっしゃっていて、今回の取り組みも、あっと驚くようなインパクトを生み出すとともに、いかに地道な改善を重ねて運用していくかが大切だと思っています。一度参加した人が、どれだけもう一度参加したいと思ってもらえるかだと思っています。

佐々木:そうした意味でも、まずはどれだけの人を集められるかという数よりも、熱量を優先したいと考えています。そしてできるだけ早期に、ライブで中継をして地方や海外にもつないでいくなど、テクノロジーの力をふんだんに活用した設計をしていきたい。

NewsPicksアカデミアの目的は、年齢、専門、組織などの枠を超えて、新しい時代をつくるリーダーや挑戦者を応援することです。NewsPicksアカデミアを、新しいチャレンジが次々と湧き出てくる「究極の学びの場」に育てられればと思っています。