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未来から振り返る、「目的」を再解釈しなおす作業

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私たちが顧客に提供しているものは?

組織や会社、事業についての戦略策定であれば、ヴィジョンや理念に立ち返ってみるのは思考のきっかけになります。もし、ヴィジョンや理念があまり明確でなかったり、そもそも存在しなかったりという場合、自分のビジネスが顧客に何を提供しているのか明確にし直してみるといいでしょう。「自分のビジネスが顧客に何を提供しているか」というのは実にパワフルな質問です。

1990年代、カセットテープ・プレイヤー「ウォークマン」が全盛を誇っていた頃のこと、ソニーの一人の技術者がこう語っていました。

「ソニーが工場でつくっているのは小さなカセットテープ・プレイヤーです。でも、消費者が買っているのは音楽を外で聞くという習慣です」

駆け出しのマーケターには衝撃の概念でしたが、この技術者の言葉はきわめて的を射たものです。ソニーがビジネスを通して顧客である消費者に提供していたのは小型で高性能の音楽再生機器そのものではなく、屋外に音楽を携帯するという新しい習慣であり、便益でした。消費者が得ていたものは、モノではなく、モノを通した経験や行為です。

モノは経験や行為を具現化する手段に過ぎません。コレクターズ・アイテムや骨董のようなビジネス以外では、製品の所有は究極の目的ではなく、製品は便益の経験を提供する手段です。

このように考えると、自分のビジネスが顧客に何を提供しているのか、再定義できます。洗剤会社は洗剤を売っているし、消費者は洗剤を買っているけれど、本当は洗剤の使用を通して「洗濯されて汚れのない衣類」や、「いつもきれいに洗濯された服を子供に着せている親としての満足」を得ている、ということです。

製品あるいはサービスの向こう側にある消費者の購入理由が見えていれば、自分たちが何業であるかわかってくることでしょう。

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