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「パナソニック宣伝100年の軌跡」(4)日常をドラマチックに切り取る — 家事の広告篇

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【前回記事】「「パナソニック宣伝100年の軌跡」(3)時代を切り拓く創意工夫 — 空調の広告篇」はこちら

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2018年に創業100周年を迎える、パナソニック流の宣伝に迫る対談。第4回は「家事の広告篇」です。洗濯機や掃除機、アイロンなど生活に密着した個々の家電が、日常をどのように変えるのか。生活者目線を大切にし、複数の商品を一貫したコンセプトで括りながら広告をしてきました。今回は、約10年にわたり生活家電の広告に出演された女優・三田佳子さんと、同社の広告制作に長年携わってきた元電通・美堂恒男さんの対談です。

左)三田佳子さん 右)美堂恒男さん

家事を楽しむ陽気で明るいお母さんに親近感

—三田さんが出演された家電のCMは100本を超えます。なかでも印象に残っているものはありますか。

01. 1985年 テレビCM「世のため」
02. 1988年 テレビCM「お母さんは毎日がオリンピック」

三田:どれも懐かしいですが、最初に出演した掃除機「キャニスター」のCMです。

美堂:このCMは三田さん扮するお母さんが、掃除機をかけながらズッコケる、というコミカルなシーンがありました。

三田:このシーンは役者としてのチャレンジだと覚悟を決めて臨みました。カメラのほうを向きながら、画面に収まるように転ぶのは、実は難しいのです。でもお客さまからはこのCMが好評でした。

美堂:この難しいシーンも見事に一発OKでしたね。大河ドラマで主演もされる三田さんの、いつもと違った魅力を引き出して、どれだけ親近感を持たせられるか。それが企画で実現したいことでした。

三田佳子(女優)
1960年に映画デビュー。大河ドラマ『いのち』、『花の乱』で主演を務めたほか、93年『遠き落日』で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞するなど受賞多数。パナソニックの家電の広告に出演し、86年、87年度ACCタレント賞を受賞している。

三田:女優だからできるドラマチックなものをCMの世界で表現したい。そう思ってお母さんの役柄をつくっていきました。リボン付きの髪型や明るい色の服装も、陽気で天真らんまんなキャラクターに合っていて、その世界観を楽しみに見てくださる方がたくさんいました。CMは、お客さまに届き、しかも売れることが絶対条件。商品に人気が出て安心しましたし、やりがいもありました。

美堂:掃除機、アイロン、洗濯機と実に様々な家電の広告に出演されましたよね。10年出演され続けたというのは異例の長さです。商品は多岐にわたり特長もそれぞれありますから、三田さんに出演していただいた一連の広告が定着するまでは、商品別に色を出すようにしていました。掃除機なら三田さんとご近所の奥さんとの掛け合いを毎回入れる、洗濯機では子どもとのやりとり、アイロンでは歌ってもらう、といった形です。シリーズが定着してからは自由な発想で新しい企画にチャレンジしていきました。

三田:アイロンのCMでは、卓球もしましたね。コードレスで軽いから、アイロンをラケット代わりにできるわよ、と。CMを見た方に、明るく家事をしようという気持ちになっていただく。それはパナソニックの商品を買おう、という気持ちにつながっていきます。反響の大きさに、宣伝の大事さが身にしみました。

03. 1986年 テレビCM「単身赴任物語」

美堂:そういった商品広告と同時に制作していたのが、ブランドを浸透させ、生活の奥深くまで密着させるための、ブランディング広告でした。例えば、三田さんが夫の単身赴任先を訪ねて、身の回りの世話を焼くという「単身赴任物語」という長尺のCMもそのひとつです。

三田:市川崑監督が演出のCMですね。

美堂:帰りの新幹線のホームで、妻が夫に別れを告げるシーンは今見てもいい画です。

三田:数十秒という短い間で、どれだけのドラマがつくれるか、常に挑戦していたので、楽しくて飽きなかったです。ちょっとした表情やしぐさで、単身赴任の夫を思う妻や、子どもを見守るお母さんの優しさ、家族のありようが見えてくる。そんな表現を目指して演じて、監督やパナソニックの方からOKが出ると、やって良かったと喜びを感じていました。

次ページ 「企業からのメッセージを生活者目線へと切り替える」へ続く