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「パナソニック宣伝100年の軌跡」(5)ドキッと心を動かす広告 — 美容・健康の広告篇

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最後の2秒に込められた想い

—CMの最後の2秒は、男性とデートしているおねえさんが映り、弟の台詞で「きれいなおねえさんは、好きですか。」と入ります。どのような意図があったのでしょう。

齊藤洋久(プロデューサー)
数々のCM話題作を手掛けたほか、テレビ番組や映画、アートイベントをプロデュース。2009年に「Pの眼 。」を設立、現代アートの作家として活動している。ACC、ADC賞など多数受賞。著書に『Pの時代』がある。

齊藤:広告はすぐ自分の商品を褒めたがるものですが、少なくとも水野さん自身に「きれいでしょ」とは言わせたくありませんでした。他人が「きれいになったね」と言うから真実味があります。弟は家の中でふだんおねえさんを見ていますから、きれいの秘密を知っている。CMの最後で、彼氏と会うおねえさんの、いつもと違う一面を見せ、弟のモノローグにすることで、客観的に商品の良さを伝えたかったんです。モノローグは妹でも良かったんですが、弟のほうがドキッとするでしょう?

水野:確かにそうですね。私は絵コンテを見たとき、CMで伝えたいことは最後の2秒のデートシーンに凝縮されると思いました。自分が少しでも素敵に見えないと、CMとして成り立たないと思い、誰かを好きだったときの気持ちをたくさん引っ張り出して、自分がどう見えているのか、モニターを確認しながら演じたのを覚えています。

齊藤:水野さんが企画の意図を理解して、家の内と外で異なるおねえさんの姿をうまく演じ分けてくれたから、女性の共感を得ることができたし、CMのシリーズとしても長続きしたのだと思います。でも実は、最後の2秒のシーンはやめて、商品の機能をもっと強調してはどうかという意見もあったんです。

03. 1995年 雑誌 フェリエ

水野:肌がツルツルになるとか、処理が簡単といったことを言ってほしかったのでしょうか。

齊藤:そういうことです。でも、最後の2秒がなければCMは全く意味をなさなくなります。それでパナソニックの宣伝担当の方と一緒になって、必死に上層部を説得しました。「ほかのことは何でも聞きます。修正もしますから、この2秒だけは譲れません」って。「そこまで言うなら」と採用していただけました。

水野:その決断がなかったら私もここまで世に出ていなかったかもしれません。「きれいなおねえさん」は5年も担当させていただきました。

齊藤:パナソニックの社員の方はすごく真面目ですし、商品への思いが強いですからね。当時の宣伝担当の方は、大きな要望だけくれて、細かいところは任せてくれたんです。だから私も裏切れない。必死でした。

水野:商品は時代を先駆けたいいものでしたね。痛みを和らげた脱毛器は、撮影時に試してみて感心しましたし、ドライヤーも蒸気が出て、ただ髪を整えるのではなくケアする時代に、細部まで気を遣う時代になったのだと思いました。当時、バブル期を経てみんな目が肥えていましたから、家でプロ並みにセルフケアができる商品は受け入れられやすかったのかなと思います。

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