JAA広告賞の募集にあたり、2016年度、雑誌広告部門の最高賞であるJAA賞グランプリを受賞した花王の井上幸治氏と、屋外・交通広告部門の最高賞JAA賞グランプリを受賞したパナソニックの楳谷秀喜氏に広告制作におけるポリシーや広告賞との向き合い方について聞いた。(聞き手は宣伝会議取締役・田中里沙)
お客さまを不快にさせない
—花王、パナソニックとも、広告宣伝における「理念」を継承し続けてきた企業であり、現在も社内にクリエイターを置くなど多くの共通点があります。今日は、両社の広告制作における考え方を、最近の取り組み事例も踏まえてお伺いします。まず、それぞれの広告表現のポリシーについてお聞かせください。
楳谷:パナソニックの初代宣伝部長は、創業者の松下幸之助です。経営理念には「世界文化の進展に寄与せんことを期す」と掲げられていますが、事業や商品を通じて文化の発展に貢献するという思いがあります。広告のその一部であると考えています。
広告宣伝は、会社が向かおうとしている姿を伝える手段のひとつであり、企業の社会的使命でもあるというのが当社の考え方です。そのため、お客さまの立場に立つこと、お客さまを不快にさせないことは基本的なポリシーとしています。
ここ最近、特に心がけているのは、人々に共感を得られるような上質な表現であること。「ちょっといい暮らしだな」と感じていただけるような広告表現を目指しています。
—「上質さ」を意識するようになったのは、どんな背景からでしょうか。
楳谷:国内家電市場は飽和状態にあります。新しい市場をつくるような商品も時には出てきますが、ほとんどが買い替え需要です。その中で生き残っていくためには、より高いシェアを獲得するか、より高価値な商品を買っていただくしかありません。当社がメインターゲットとしているのは30~40代の子育て世代や、共働きの家庭などです。彼らにいかに支持されるかがここ数年の課題です。
ターゲット層数千人に向けた調査で家電に求めるものを聞くと、家事にかかる時間を減らしてくれるとか、子どもと一緒に楽しみながら家事ができるようなことを望んでいることがわかります。今の30~40代の家庭では、男性も家事に積極的にかかわって、女性のほうが仕事から遅く帰ってくることも珍しくありません。そこから出てきたのが、2015年秋から続けている「ふだんプレミアム」の展開です。
それ以前は「エコ」を前面に打ち出していましたが、機能面でも一段落して差異を訴求しにくくなってきました。一方で、お客さまの消費に対する価値観が変わってきた。高級から高品質、自分らしい精神的に豊かな生活をいかに楽しむか、といった方向へのお金の使い道の変化を指す「スペンドシフト」の傾向も意識しました。
「ふだんプレミアム」のキャンペーンで特徴的なのは、最初にテレビCMありきではなく、Web用の動画を100編ほど制作したことです。ベネフィットを意識した「お客さま寄り」、機能や特長を伝える「商品寄り」、それぞれの動画をつくり、SNSやモバイル広告として配信しました。その一部をテレビCMとして流しているほか、「ふだんプレミアム」のサイトでも見られるようにしています。
ターゲット層の方々はスマートフォンやタブレットで日常的にネットにアクセスしているので、SNSなどを通じて「この生活、楽しそう」と感じてもらい、パナソニック製品のことを意識してもらえれば、と考えています。
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