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コラム

至福の時をつくる体験ブランディング

行列ができるポップアップストアの立役者 ハッピーアワーズ 博報堂 藤井一成さんの新コラムがスタート

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「体験ブランディング」をテーマに、ハッピーアワーズ博報堂の藤井一成さんのコラムがはじまります。

従来、メーカーは新商品の開発により消費者に新しい価値を届けてきました。ですが、モノやサービスが成熟化したいま、消費者を振り向かせるような新商品を開発することは、いっそう難しくなりました。

いま求められているのは、自社の商品を売るための「仕組みづくり」(=マーケティング)です。とはいえ、これまでそこに注力してこなかった(注力しなくても売れた)ため、重要性を理解していても実践している企業は決して多くはないのではないでしょうか。

たとえば消費者に直接、商品やブランドを体験してもらうための場として注目されているポップアップストアひとつとっても、いざ展開するとなると、どのくらい予算がかかるのか、場所はどこがいいのか、商品は売るのか売らないのか(有料か無料か)、人は集まるのか、そもそも何を持って成功とするのか、など企業の担当者が抱える不安や悩みは多いはず。

本コラムでは、そもそものマーケティングの考え方の基本から、ポップアップストアに限らず体験で人を動かすブランディングについて、いろいろな角度から考察していきます。

藤井氏のこれまでの仕事

ピノフォンデュカフェの内観の様子

「ピノフォンデュカフェ」(2015年〜)。若者世代のブランド離れが進んでいた森永乳業のロングセラーアイス「ピノ」を“体験”により解決することを提案。

そのコア装置として原宿につくったポップアップストア。オープンからクローズするまでの2カ月間、連日のように行列ができて話題となった。

ピノを裸にしたバニラ玉をチョコレートソースにフォンデュして自分だけの「ピノ」をつくって食べるというもの。家族や仲間と楽しく食べるピノの原体験を掘り起こしながら、新たに生み出した若者の熱狂がメディアや流通のニュースとなり、1976年の発売以来最高の売り上げを記録した。

Lipton Fruits in Teaの行列。最大で2時間待ちになることも

2016年夏に登場した「Lipton Fruits in Tea」。変化の少ない「日本の紅茶」に新しい体験価値をつくりだし、紅茶の市場拡大を狙う夏の戦略シナリオ。

日本茶やコーヒーにはできない、紅茶ならではのアレンジ価値を訴求する「in Tea」スタイルを提案。色鮮やかなフルーツやハーブ、スーパーフードなどを専用のタンブラーに入れて街に持出す紅茶の新しい飲用スタイルが大きな話題を獲得した。

店舗では開店2時間前から長い行列が続き、ECでの専用タンブラー販売はカテゴリー1位を記録するなど、ひと夏で7万本の紅茶タンブラーが消費者の手に届いた。

HALLOWEEN&TOKYOの告知広告。ごみ袋の配布場所には、行列ができるほどだった

「HALLOWEEN&TOKYO」は、東京都の観光のブランディングの一環として企画された。都市東京と都民のエンゲージメントを高めるため、ハロウィンをテーマに都民の能動的な参加を生み出す街体験をデザインした。

ゴミを詰めれば詰める程、膨らんでカボチャのオバケになる「カボチャのごみ袋」は、ゴミ問題を報道するシンボルとして多くのメディアに取り上げられ話題に。

ごみ袋の配布場所には、行列ができるまで人気となった。深夜から仮装姿でのゴミ拾いが始まり、翌朝にはゴミ拾いのボランティアも多く集まるなど、都民自らが行動してハロウィンのゴミ問題は解決。街にはたくさんのカボチャのごみ袋が並び、東京の街の出来事が国内外に多く報道された。

藤井一成氏(ハッピーアワーズ博報堂 代表取締役/クリエイティブディレクター))

1968年広島市生まれ。1992年早稲田大学政経学部卒業後、電通国際情報サービスに入社。1999年から博報堂でインタラクティブクリエイティブを軸に統合キャンペーンを数多く手掛ける。その後、グループ内ブティック、タンバリンに参加。2016年より同社代表に就き、「至福の時間をつくる」クリエイティブブティック「ハッピーアワーズ博報堂」に社名を変更。消費者の“いま”の視点に立ち、ブランドが持つ価値を再編集することで新たなエンゲージメントを築き、ブランドと消費者、社会を次のステージへとポジティブに動かす。「正しいことを楽しく実践して、すべてのステークホルダーを幸せにしたい」という信念のもと、戦略、クリエイティブ、体験デザイン、PR、デジタルなど、360°の視野で構想から実践までを行う。