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AIによる「効率化」と人間による「クリエイティブ」の幸せな関係

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【前回】「AIコピーライター「AICO」と働いてみたら、コピーの未来が見えてきた」はこちら

執筆者
・博報堂アイ・スタジオ クリエイティブテクノロジー部部長 兼 CREATIVE AI研究所所長 北島知司氏
・博報堂アイ・スタジオ システム開発部 副部長 川添昌彦氏

技術革新が目覚ましく、さまざまな領域で活用可能性が探られている人工知能(AI)。広告・コミュニケーション施策においても、徐々に活用されるようになってきました。「人間の仕事を奪うのでは」とネガティブな文脈でとらえられることも少なくないAIですが、上手く活用すれば、人間の発想や思考、判断などをエンパワーしてくれる存在であることも知られつつあります。

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広告・コミュニケーションの企画制作の現場におけるAI活用を進めている、電通、博報堂プロダクツ、マッキャンエリクソンの3社が、各社の取り組み・研究の今をレポートするとともに、「AIはクリエイティブにどう役に立つの?」という疑問に答えます。

若手人材の発掘・育成を通じて広告クリエイティブの発展を願う、「宣伝会議賞」の特別企画です。

今後の更新予定(全6回)
第1回:博報堂アイ・スタジオ①
第2回:マッキャンエリクソン①
第3回:電通①
第4回:博報堂アイ・スタジオ②
第5回:マッキャンエリクソン②
第6回:電通②


AIで可能になる、ワントゥワンのコピーライティング?

前回触れたように、広告クリエイティブのフィールドでは、人工知能を活用して新しい表現を創出する試みが広がっている。

今回は、クリエイティブの中でも特に、コピーライティングにフォーカスしてみたい。人工知能の可能性を取り入れた「AIコピーライター」「AIクリエイティブディレクター」など意欲的な取り組みをいくつも見ることができる。そして、それらの特徴を探ってみると、どれも共通して人工知能と人間がほどよく役割分担できているのが分かる。

まず、人工知能が膨大なワードデータを学習する。人間のクリエイターの思考とは異なる意外な連想・意外なパターンの発掘を行い、メッセージを吐き出す。その結果はさまざまで、絶妙なメッセージと感じるものもあれば、果たしてどういう思考経路をたどって生まれたのか首をかしげたくなるものも出てくる。

一方で、人間はそのメッセージを解釈し、「こういう思考経路を踏んだのでは」「母体となったデータにこういう傾向があるのでは」「こんな思考の跳躍があったのでは」といった具合に結果を解釈・アレンジして、クリエイティブとして仕上げる。また、必要であれば、人工知能の学習を助けるために学習用データの分類・成型まで行う。

人工知能がもたらす自由な思考がクリエイターに刺激を与え、新たな表現や課題提示が生まれる。この人工知能と人間の役割分担の方法は、前回の記事で触れた広告クリエイティブの事例と通じるものがある。

ここまで見てきたように、クリエイティブを成立させるための人工知能の活かし方は限定的で、注意深く制御されているが、広告業界にはアクセス可能なデジタルマーケティングデータが豊富にある。

やがて、購買データや問い合わせデータなどのマーケティングデータを学習し、ブランドの戦略プランニングに寄り添うコピーライティングも可能になるのではないか。

また、人工知能の「学習し続け成長する」性質を活かせば、最新のデータを反復学習して変化し続けるコピーが生まれるであろうし、人間の手を離れて表現活動を任せられるようになれば、サイト訪問者の行動履歴に反応するワントゥワンのコピーライティングも可能になるだろう。

そのように、人間の発想と異なるアプローチで生活者の心が動くポイントを人工知能が抽出するようになる時、人間の役割はどこに置かれるのか。今後のクリエイターの課題になってくるように思う。

次ページ 「「効率化」と「クリエイティブ」の幸せな関」へ続く