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東京と地域のクリエイターが交われば、日本のクリエイティブはもっと面白くなる

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—田中さんは、東京のクリエイターと地域のクリエイターがもっと一緒に仕事をしたほうがいい、もっと交わったほうがいいというお話をよくされます。どうやったら上手くいくのでしょうか。

田中:僕は、クリエイティブディレクターという立場でプロジェクト全体をディレクションするので、コピーライター、アートディレクター、フォトグラファーなどのスタッフィングが重要です。

先ほど、地元のクリエイターと組むことで、刺激を受けることができるという話をしました。逆に、僕らが地元のクリエイターに刺激を与えられることもあると思うのです。

地域のクリエイターと組んで仕事をすると、技術はあるのに、僕らが当たり前のように持っている考え方・やり方を、知ったり学んだりする機会をこれまで持たなかったクリエイターがたくさんいるのだと気づきます。

僕らと協業することで、地域のクリエイターがそれを身につけられたら、例えば、提案型のビジネストークを、今後は一人でできるようになるかもしれない。決まったパターンの中から、何となく合いそうなものをあてがうのではなく、「もっと売るためには?」「ブランドの課題を解決するには?」と本質的なところから、デザインを考えることができるようになると思うのです。

地域には今、クリエイティブやデザインの力が求められています。しかし、そのための知識や情報、技術が東京に一極集中していて、地域の需要に追いついていないのが現状です。誤解を恐れずに言えば、地域と東京には“クリエイティブ格差”があります。クリエイティブの知識やノウハウが地域にもっと流れ込んでいけば、日本はもっと面白くなると思います。

平井:今日、田中さんと少しお話ししただけでも、「そういう考え方もあるのか」と気づかされることがたくさんあります。新しいものは、人と人が出会って初めて生まれるもの。ずっと同じ人たちと固まっていても、新しいものは生まれませんから、東京と地域のクリエイターが協業するのは、いいことだと思います。

田中:沖縄・今帰仁村のPR動画を制作したときも、演出、撮影、編集と多くの業務を沖縄のスタッフに担ってもらったことで、いいものができたと感じています。例えば、出演する地元の方への演技指導も、地元のスタッフがやることで引き出される表情や演技があるんですよね。

それに限らず、地元のスタッフと協業することで、地域の良さが引き出される経験を何度もしてきました。いいものをつくるためにも、地域と東京のクリエイターは、混ざり合ったほうがいいんです。

 

今帰仁村観光協会「今帰仁ベンチ」(田中さんの仕事)

—デザインがいいということと、売上が上がるということが、必ずしもイコールでないこともありますよね。「青柳ういろう」は、対前年比で予想を超えて売上を伸ばしたと伺いました。「デザインがよく、かつ売れる」ものを考えるためのポイントはありますか。

平井:「デザイン」に限らず、変えるべきものを変えるという意識が必要です。デザインについて相談をいただいても、もし商品そのもの、中身に問題があるのであれば、デザインではなく中身を変えるべきだと思います。

僕は、お土産品、特に食品の場合は、競合商品を含めてとにかく食べることを大切にしています。あとは、キオスクでお客さまが何を買っているかを観察する。そうすると、「クライアントがまだ掘っていない山」が見えてきます。その山を掘りましょうと提案することで、ただデザインを変えるだけでは達成できない、売上アップにつながることがあります。

田中:平井さんに伺いたいことがあります。平井さんは、名古屋にいながらにして、国際的なデザイン賞を多く受賞されていますよね。どうやって自己研鑽をしているんですか。

平井:勉強らしい勉強はしていないですね(笑)。つくることが勉強、という感じです。デザイン年鑑なども見ますが、「いま自分が考えているものと、似ているものがあったらやめておこう」程度の感覚でチェックするくらいです。

たとえクライアントの“OKライン”を超えても、もう少し磨けそうだと思ったら、なかなか入稿しないということはあります(笑)。僕のクライアントは、“悠久の時の流れ”の中でビジネスをしていて、僕がつくったパッケージを「10年は変えない」ぐらいの気持ちを持ってくださっている企業が多いんです。極端に言えば、「入稿は今日でなく、明日、明後日でも構わない」という……時間をかけてつくらせていただいているところはあると思います。

地域はのんびりしている、とよく言われますが、“のんびり”というよりは“悠久の時の流れ”の中でやっている企業が多いのだと思います。

田中さんは全国を飛び回って、たくさんの仕事を手がけていますね。多くの案件を並行して走らせていて、どこかが疎かになってしまったりはしないのでしょうか。

田中:シティプロモーションや地域企業のブランディング、デザインなど、同時に20くらいのプロジェクトを進めています。そのため、一つひとつの仕事を、短期にぐっと濃く進めるようにしています。ゴールをイメージするのは早いので、そこにクライアントを含め、関係者をどう巻き込んでいくかが成否を決めるように思います。

案件ごとに頭のチャンネルが切り替わるので、多くの仕事を手がけることは、僕にとってはリフレッシュにもなっています。各プロジェクトで、アートディレクターや映像ディレクターなど、適切な人とチームを組めていることも、上手くいっている秘訣と言えるかもしれません。

2

ピースグラフィックス 
アートディレクターの平井秀和さん。

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POPS 
クリエイティブディレクターの田中淳一さん。

—どの地域にも共通するニーズや課題はあるのでしょうか。

田中:共通の課題は、ないんですよね。それが面白いんです。移住者、定住者、交流人口を増やしたいという思いはどの地域にもありますが、それは課題の本質ではありません。背景には、それぞれの地域が抱えている課題があるものです。

つまり、オリエンシートには「移住者、定住者、交流人口を増やしたい」と書いてあっても、それは課題の本質ではないことがある。そこで、真の課題を解き明かすことが、「何を表現すべきか」の答えにつながると感じています。

平井:企業であれば、共通する課題であり、目標となるのは「売上」だと思います。でも、ただ売れればいいわけではなく、ターゲットに対して商品・ブランドを「どう見せたい」か「どう感じてほしいか」を大事にしている企業が、実は多いものです。
売れそうでも、企業が“格好悪く”見えるようなものはダメ。企業は、自分たちらしさを強く意識した上で、より売れるものを求めています。

そこでは、企業やブランドに対する深い理解が欠かせません。経営トップに話を伺うことももちろん重要ですが、せっかく地元のクリエイターが地元の企業の仕事を手がけるのですから、自分なりの感覚も大事にしたいと思っています。いち生活者から見て、この企業・ブランドはこう見えるという感覚を、失わないようにしているんです。そうすることで、企業が目指していることと、現状とのギャップも見つけやすくなりますから。

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