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自社で不祥事が発覚!広報が頼れるマニュアルとは

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「発覚」したときに頼れる存在

ここ数年では、危機管理広報マニュアルでしか対応できない危機も増えています。例えば、ブラック企業だ、経営不振だ、放射能が残留している、料理がまずい、不道徳だ、不衛生だなど、ありもしないうわさや針小棒大な批判が山積してできた「風評」は、SNSで拡散されることで世界中に広がり、企業の死活にかかわる危機を招くことがあります。このような風評被害に対応できるのは危機管理広報しかありません。

さらに最近、「発覚」を原因とする大きな危機が急増しています。発覚とは隠蔽していた「悪事」が露呈すること。このようなケースでは、悪事自体はすでに起こってしまったことなので、リスク管理マニュアルや危機管理マニュアルは用をなしません。それ以前に、隠蔽が行われたということは「リスク管理・危機管理の失敗」と言えるでしょう。

2017年10月に発覚した神戸製鋼のデータ改ざん問題は、10年も前から現場で行われていた不正です。この件のように、何らかの理由で発覚し不正を公表した場合、メディアの報道はすさまじく、経営を追い詰めるようなことにもなりかねません。このような危機対応の主役は、危機管理広報であると私は思います。

なお、不祥事が発覚する原因として大部分を占めるのが内部告発です。今や告発先はマスコミだけではありません。昨年末、子会社のデータ改ざんに関して謝罪会見を行った東レの社長は、ネットの掲示板への書き込みによる内部告発が不祥事公表の理由のひとつだと認めました。

表1 危機管理広報マニュアルに必要な項目(簡易版)

マニュアルで混乱を最小限に

では、危機管理広報のマニュアルには、どんな内容を盛り込めばよいのでしょうか。メディアや利害関係者への対応だけでなく、危機発生時の社内連絡、危機管理対応方針の策定、危機の報道重篤度の評価など、日ごろから頭にいれておかなければならないことと、初期対応から収束までの手順を詳しく記載します。

特に初動対応は重要です。危機発生時、役員と当該部の部長、顧問弁護士のみが集められて秘密裏に話し合い、最後の最後まで広報には知らされないことがあります。しかし、隠しごとはいずれ発覚するもの。何も知らない状態でメディアの奇襲取材を受けるのと、少しでも情報整理や対策を練る時間があるのとでは広報対応がまるで違ってきます。スピーディーに情報共有し、混乱を最小限に抑えるためにも、危機発生時の連絡手順はマニュアルとして定めておくべきです。その他必要な項目は表1に整理しました。詳しい内容は書籍にも掲載しています。

近年では、「不祥事を起こさない」風土を醸成するために、マニュアルを利用した社内研修を実施する企業も増えています。組織を長く健全に持続させるためには、従業員一人ひとりに「危機を起こさないことが何より大切」という自覚を持ってもらう必要があります。そのためにも、危機管理広報マニュアルを作成した後は、全従業員への共有を進めてくださいね。

山口明雄(やまぐち・あきお)
アクセスイースト 代表取締役

東京外語大学を卒業後、NHKに入局。日本マクドネル・ダグラスで広報・宣伝マネージャーを務めたのを皮切りに、ヒル・アンド・ノウルトン・ジャパンで日本支社長、オズマピーアールで取締役副社長を務める。現在はアクセスイーストで国内外の企業に広報サービスを提供している。2018年2月、『危機管理&メディア対応 新・ハンドブック』(宣伝会議刊)発売。