女性のインサイトを捉えたヤッホーブルーイングの“観察力”【前編】

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エモーショナルな価値が、新しいポジショニングを生み出す

稲垣:私は前々職でリクルートという会社にいたのですが、当時の同僚の女性たちの中にはビール好きを公言している人がたくさんいて。でも、これが珍しいことだと思っていたので、そこに何か心理があると思ったのです。彼女たちは堂々と、「ビールが好き」「ビールが飲みたい」と言える人たちでしたが、そうではない、けれども飲みたいという女性も結構いるのではないかと思ったのです。

そこで、「平日も飲みたいけど、堂々とビールを買うのは気が引ける」という女性のインサイトがあるのではないかと考えたんです。ポジショニングとしては、「気ままに心を緩めることができるビール」です。

ここからアイデアが出て、ネーミングは週の真ん中の水曜日に飲むホワイトエールなので、「水曜日の白」というのがあがったのですが、もう少し気ままな感じを出せないかと「水曜日のネコ」になりました。平日の夜遅くなら、仕事のことも忘れて上司や彼氏もどうでもいいというような気持ちになってもいいのではないかとイメージしています。

デザインもネコのキャラクターにして、あまりかわいくない、つんとした感じのネコになっています。

なぜこのように、私たちが拙いながらもインサイトを発見できたのか振り返ると、やはり「観察」が重要だと思います。たまたまターゲット層に近い女性が友人にいたり同僚にいたり、その人たちと一緒に飲みに行ったり、遊びに行ったり、話したりする中でインプットされていた情報、飲んでいる様子を細かく覚えていたことが大きいです。

大松:先ほどの4要素の話で言うと、堂々とビールを飲むのは気が引けるという女性たちが週の真ん中ぐらいにゴクッとやるという「シーン」、ホワイトエールの味わいや香りという「ドライバー」が、心を緩めるという情緒的な価値「エモーショナル」につながっていますね。

稲垣:それで言うと、「バックグラウンド」には女性の社会進出があります。

大松:あと、ヒットする商品には既存路線でなくて新路線になっている「新奇性」と、どれぐらい買いたい人がいるかという「受容性の幅」の2つが大事だと僕は思います。

ビールは仕事がうまくいった後に乾杯する、いわゆる『アサヒスーパードライ』的な路線か、あるいは『ザ・プレミアム・モルツ』のような金曜日にご褒美のような価値訴求がありました。「心を緩める」という路線は、これまでビールでは提供されてきませんでした。そこを観察で見抜いた稲垣さんは、本当に素晴らしいです。

稲垣:このときは観察しかしていませんでした。実は、ボツ案で「日曜日のヒルヒナホワイト」というのもありました。ある女友達が「最高の瞬間は日曜の朝に風呂に入ってビールを飲むことだ」と言っていて。でも、水曜日にしておいてよかったと思います(笑)。

『僕ビール、君ビール。』の事例は【後編】で紹介します。

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