「カレーライスを一から作る」の場合
前田:大島さんがプロデューサーを務められた映画「カレーライスを一から作る」のお話を聞かせていただいていいですか。
大島:あの映画は、もともとは深夜のドキュメンタリー番組のために撮った50分ほどの作品でした。ただ、9か月もの間撮りためた映像を、その尺の中に収めるのは正直難しい。それだったら、再編集して映画にしよう思いました。
前田:9か月間という中長期的なプロジェクトだと、いろいろと想定外のことも起きたのではないかと思います。うまく行ったプロジェクトで共通していることとして、「アクシデントをプラスに転じる」ということがあると思いますが、この映画を作る過程でそういった契機のようなものはありましたか。
大島:映画製作上のアクシデントではないのですが、学生たちの中から、「〔いままで育ててきた〕鳥を殺さないほうがいいのではないか」という意見が出て、話し合いにカメラが入れたことが大きかったです。その話し合いの様子をきちんと撮影できたことが映画化に関しては一番の契機だったと思います。
あとは私がやった仕事としては、被写体やプロジェクトの性質から、監督を自分ではなく、私より遥かに適任だと思うスタッフ〔前田亜紀〕に任せたことぐらいで。あとは細かい部分でうまくいかないことはたくさんありましたけど、基本的にはスムーズに進んだと思います。逆に言うと、最初の話に戻りますが、トラブルのほとんどが人的問題に還元できる以上、人材の適切な配置がプロデューサーの最大の仕事なのではないかと思います。
前田:プロジェクトの観点から見ると、二つ教訓があると思います。一つは、いまおっしゃっていただいたように、人材配置の重要性。これはいくら強調しても強調しすぎることはありません。ただしそれは、全てをコントロール下に置く、ということを意味してはいないんですね。むしろ、様々な想定外の要素こそが、のちのちそのプロジェクトの核になったりする。そのセレンディピティに対する姿勢が、もう一つ重要な点かなと思います。
大島さん、今日はありがとうございました。
大島:ありがとうございました。
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