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プロジェクトのようにドキュメンタリーを撮り、ドキュメンタリーのようにプロジェクトを進める【大島新×前田考歩】

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左手に大きな花束、右手に小さなナイフ

前田:そうやってプロセスでは苦労したけれど、結果的にうまく行ったという作品はありますか。

大島:同業者によく言われるのは、10年位前の「情熱大陸」の秋元康さんの回ですね。これは「80年代以降、クリエイティブであること=金儲けがうまい事であるかのように捉えられているとしたらこの人のせいではないか」ということを裏のテーマで持っていて。ちょうど「CDの売り上げ枚数の記録で、阿久悠を秋元康が超えそうだ」と言われ始めていた時期だったので、「仮に超えたとしても阿久悠の方がクリエイターとしては上でしょう。そもそも秋元康はクリエイターなのか、ビジネスマンなのか」みたいな思いを抱きながら作ろうと思ったんです。もちろん、職業人としての秋元さんにリスペクトの気持ちもありましたが。

前田:一種の批判精神というか・・・

大島:人物ドキュメンタリーではある種の成功者を描くことが多いんですけど、ただ褒め称えるだけのものはすごく気持ち悪いなと思っていて。でも、「あなたに興味があります」というスタンスは持っていないと、そもそも撮らせてもらえない。だから左手に大きな花束と、右手に小さなナイフを持っている、と比喩的に言うんですけどね。そのほうが人物が浮かび上がってくる。

前田:それはプロジェクトにも通じるものがあるかもしれません。私、起業を二回やってるんですけど、特に2回目のプロジェクトはものすごい思い入れがあって「これは社会的にも意義があるし、サービスも大好きで、絶対成功させたい!」と思っていた。でも結果的にはそのプロジェクトが最もうまく行かなかったんですよ。1mmの批判精神もなかったので。

逆に、ソファーに座った偉い人があれこれ言ってきた1回目の起業の方がうまく行ったんですね。リーダーはメンバーにプロジェクトに対する賛同を求めがちなんですけど、むしろそういう批判精神を養っていかないと、よきプロジェクトになっていかないのかもしれないですね。

大島:僕も今までの経験からすると、被写体を完全無欠に好きだった時の方が番組の評価は低いというのはあります。どこかでちょっと疑問を持っていたり、興味はあるんだけれども「この人って本当のところどうなのよ」と思っていたりする時の方が、作品としては力があると言われますね。

次ページ 「「カレーライスを一から作る」の場合」へ続く


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