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共感の先、信頼をいかにつくるか? — 機能を超える、大塚製薬、Netflix、ボルボ・カー・ジャパンのブランディングの取り組み

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「このブランドがないと生きていけない!」と思ってもらえるくらいのポジショニング

ボルボ・カー・ジャパン 関口 憲義 氏

また「コモディティ化」の課題についても関口氏は、「市場が2極化しているだけ。もちろん、価格競争に巻き込まれないためにも、マーケターがいかにしてブランドの価値をつくり高めるかがますます重要になっている」と説明。また「スマート化」により、消費者の情報接点の奪い合いが生まれていることについては、車検などの定期的なお客さまとの接点がある自動車会社はむしろ有利であるので、デジタルとも連動したCRMの構築に腐心していると話した。

一方、松尾氏は「これがないと生きていけない!と思ってもらえるほどの、ブランドのポジションをいかにしてつくれるかが課題」だと言う。「他社との差別化のために、今年度は独自コンテンツ開発に約80億ドル(約8250億円)を投じる計画。多様な趣味嗜好を持ったお客さま、一人ひとりが興味を持ち、満足してくださるような、バラエティあるコンテンツの開発・配信に力を注いでいく予定」と話した。

大塚製薬の川上氏は「信頼を価値化する」という活動をしているという。川上氏は「情報は価値の源泉なので、情報に信頼を与えて価値化して、新しい需要をつくっていくことがひとつの戦略」と述べた。「情報接点」についても、「世の中の情報量が増えて顧客接点が奪い合いになる状況は逆にチャンスと見ている。お客さまにとって価値のある情報をいかに提供していけるか。その設計ができていれば、強固な関係性を構築することも可能」と話した。

広告とコンテンツが融合した新しいブランドコミュニケーションのアイデア

研究会の第2部では、各社に対するマーケティング企画の提案を行った。中高年向けに「ポカリスエット」を訴求する企画や、その企画を番組コンテンツとして、Netflixが連動した新たな番組制作をしたらどうか、という案が持ち上がるなど3社がコラボレーションした企画アイデアが次々と登場した。そして、このディスカッションでも3人の考えは、これからの時代は「共感」が企業の資産になるというマーケターとしての認識だ。

Netflix 松尾 崇 氏

例えば、大塚製薬に対して松尾氏は「僕ら40〜50代にとっては中高生の部活の思い出とともに、『ポカリスエット』がある。例えば、中高生時代の部活仲間と集まってもらうような企画を実施したらどうか」と提案。

それに対して川上氏は、「中年、高年のための参加番組として『Netflix』で番組にしましょう」とさらなる提案をしたうえで、こう続ける。「実は『ポカリスエット』のお客さまには、40~50代の男性が多いんです。厳しい部活の後に飲んだことが一番強烈に記憶になっているのではないかと思います。青春の思い出と結びついた記憶はブランドにとっての資産だと思っています」との見解を示した。

関口氏もまた、ロジャー・ムーアが1960年代に主演した人気テレビドラマ「天国野郎セイント」を例に挙げ、「ボルボ・P1800に乗って活躍するのですが、この番組の現代版をNetflixさんでやって欲しい。広告とコンテンツが融合した新しいコミュニケーションになるのでは」と話した。

ボルボに関しても、Uberでの試乗体験を例に挙げ、「まったくクルマに関心がなかった層に考えもしなかった新たな形の試乗体験の提供」と松尾氏が提案。関口氏は、現時点ではUberのビジネスモデルは国内では法規制の壁があることを指摘しつつも、「運転手に責任がなくなる『レベル4』の自動運転車が2020年代には出ると言われているので、その際にやってみたい」と意欲を示した。

また「時代的に安全がフォーカスされてきたが、『安全』をずっと言っていたのはボルボ。最先端でやっていたということを思い出してもらうことが大事」と話すのは川上氏。「安全教育をするのはどうか」と提案した。

互いのブランドの理解が、コラボレーションを加速させる

盛り上がったディスカッションの最後に、加藤希尊氏は「自分自身のブランド、ポジションを担いながら、他社のブランドが持つ資産について思考をめぐらすと、新しいコラボレーションのアイデアも生まれてくるのでは。

『JAPAN CMO CLUB』は「マーケターの集合知で、日本に突き抜けた成長力を生み出す」を目的に運営しているが、参加する企業のブランド資産を理解、意識する機会が、日本の経済を活性化するようなアイデアの創出につながる、そんな期待を感じる研究会となったのでは」と話した。

それぞれの視点で課題を課題だと思わずに突き進む3社。切り口、切り方を変えれば既存の商品・サービスにも新しい市場は必ず見つかる。競合他社との比較の中での相対評価の差異に目を向けるのではなく、お客さまと向き合い、絶対的な価値を自分たちの中に見つけ出すことがマーケターの仕事であるという認識で、3人の意見が一致していた。

真摯にお客さまと向き合い、共感を得られるようなブランドの体験を創る。さらには、共感の先、信頼をいかにつくるか、に3社の関心があるようだ。

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