「子育てプロジェクト」はキャリアアップのチャンス【マドレボニータ・吉田紫磨子×前田考歩】

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業務は分担するのではなく、得意分野を持ち寄る

前田:僕はよくわからないのですが、家事とか育児を「僕も手伝おうか?」と言うと、妻はカチンとくるみたいなんです。僕からすれば「手伝おうとしているのに、なんで?」と、悩んでしまいます。

吉田:それはですね、妻側は「あなた、マネージャーでしょうが!」と思うからです。自分がメンバーであるという認識があれば、「手伝おうか」なんて言わないはずです。ちゃんとコミットして、主体的に関わってもらいたいんですよ。

前田:そういうことか。それなら、自分がマネージャーとして、産後ドゥーラ(産後ヘルパー)を頼もうかとか、アマゾンでオムツを注文しておくねとか、やれることをちゃんとやっていれば、つい「手伝おうか」と言っても許してくれますかね?

吉田:それ、大事ですよ。そこがちゃんとできていれば、「手伝おうか」にリスペクトを感じるようになるんです。でも、それがないと「ふーん、全然かかわる気はないわけ?」と、腹立たしい気持ちになる(笑)。

前田:同じ言葉でも全然意味が違って聞こえるんですね。仕事でも子育てでも、プロジェクトの目標とメンバーの役割がしっかり共有された状態をできるだけ早く作った方がいいということか。

吉田:そうですね。ただ、役割分担には怖い面もあるんですよ。今ワーキングマザーの間では「家事の見える化」としてエクセルで家事シフト表を作る人もいるんですが、うまく回れば回るほどコミュニケーションが減って、ちょっと失敗するとあら捜しみたいになって殺伐としてくるそうです。夫婦は、「分ける」という考え方よりも、得意分野を「持ち寄る」ことが大事ではないでしょうか。

前田:なるほど!管理しすぎると減点方式になるということですね。でも、得意分野を持ち寄るというのは、具体的にどうやるんでしょう。

吉田:相手に委ねればいいんです。現代人には、手伝ってほしい、助けてほしいと誰かにお願いすることは難しいことかもしれません。人に頭を下げるくらいなら、自分でやってしまった方がと。でも、産褥期の女性は心身ともにダメージ受けているので、夫に委ねざるを得ない、委ねることを学ぶチャンスなんです。

前田:「委ねる」という概念はすごく大事な気がします。役割分担が明確化すると、責任の所在がはっきりするから自分は自分の役割さえきっちりやっていればいい。そこに「委ねる」という余白のようなものはない。でも、「委ねる」という概念が加わると、ミスをしたメンバーの心がパキッと折れるようなプロジェクトにはならずに、もっと救いがある優しいプロジェクトになりそうですね。

吉田:そうかもしれませんね。女性には委ねざるを得ない状況を経験するチャンスがありますが、学ぶ機会のない男性には難しいかもしれません。

前田:そうですね。男性の場合は特に、100パーセントのパフォーマンスが常態である、という思い込みがありますからね。そのため誰かが機能しなくなると、プロジェクトがうまく稼働しなくなることもあります。そういうリスクテイクの考え方と「委ねる」は全然別次元という感じがします。とくに女性がメンバーにいるようなプロジェクトでは、出産など予定外の事案が起きてあたりまえだというマインドをもっておく必要がありますね。それはけしてメンバーの替えを用意するとかそういう話ではなくて、マッチョなプロジェクトの進め方とは違う進め方があるということです。そしてそれは産褥期から学べるという感じがしてならないです。


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産褥記 産んだらなんとかなりませんから!

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