鍵は納得と共感。
次に、三次審査通過作品の中から同じ視点で書かれたコピーを見てみましょう。
「一等賞の瞬間、電話がかかってきた。」
審査員なら圧倒的にこの作品を推すはずです。それはなぜか?理由のひとつはドラマが見えるから。カメラ機能の差ではなく、そこから生まれる“共感できるドラマ”が見えてくる。これが大事なポイントです。
さらに言えば、ストーリーが感じられるから。言葉は概念的なものを運ぶ使命もあるけれど、共感を運ぶという使命もある。それが出来るかどうかがクリエイターに問われている資質です。トップランナーである審査員のみなさまは、その共感の部分を拾うはず。プロのコピーライターとは説明レベルではなく、その先にある”納得・共感レベル”を目指して日々鍛錬しているものだからです。
いいコピーは「発見」している。
それでは、2つ目の切り口を紹介しましょう。それは「一眼レフなら子どもの貴重な一瞬をおさめられる」というもの。これはタームの限定性という切り口で、カメラコピーの王道といえます。とはいえ、これならスマホでもできる可能性がありますね。物性から見るとすこしゆるい切り口ですが、王道のやり方で差をつけるのもありでしょう。それでは一次通過のコピーを見てみましょう。
「わが子の成長は、シャッタースピードよりも早い。」
「今年の運動会は一生に一度。」
などです。
次に二次通過のコピー。
「小学校の運動会は、たった6回しか開催されない。」
「成長は、駆け抜けていく。」
大学でコピーの講義をしていると、学生から「いいコピーってなんですか?」と聞かれることがあります。そんな時にいつも答えるのが「発見しているかどうか」という判断基準。つまり、受け手が”なるほど、そうか!”と感じられるかどうかが大事なんですね。コピーを通じて隠された真実の発見があれば、それは文句なしの出来。発見としては最高レベルです。でも、そこまでのコピーをつくるのはプロでもなかなか難しい。「たった6回」は僕的には発見がありました。
対句を使ったコピーは強い
それでは、同じ切り口で三次審査を通過した作品を見てみましょう。
「なんでもない一瞬は なんどもない一瞬だ」
非常にうまいコピーですよね。これは書くことに詰まったら参考にしてほしいんですが、こうした対句的なコピーはハマると絶大な力を発揮します。それは読む人に新たな発見があったような気にさせるから。
世の中でよく使われる言葉には対句が多い。たとえば「人生は短く、芸術は長い」「右の頬を打たれたら、左の頬を差し出しなさい」など。対句表現には人の心に残る力があるんです。
全部、対句で考えろ、じゃないですよ(笑)、困ったら、思い出してという話です。
「商品特性への理解」があるか否か。
ここで気になったコピーを2つ紹介します。
「わが子以外、全員背景。」(二次審査通過作品)
「他の子は全員、背景です。」(三次審査通過作品)
なぜ片方は二次通過どまりで、もう一方は三次を通過できたのか?その基準には商品特性が入り込んでいると思います。上のコピーはわが子以外は撮らない、という感じがしますが、後者は言い方が優しいために「Eos Kiss」の商品特性に近い感じがする。微妙な感覚なんですが。審査において「このコピーは、商品の世界観から全然遠いね」という作品は最後までは残りません。それでは次の作品はどうでしょう。栄えあるシルバー受賞作です。
「子供の悔し涙は、遠くから撮るのが愛だと思う。」
これは商品の世界観に近いコピーといえる。つまりEos Kissの世界観は、愛情に根づいているんですね。そこをまっすぐにとらえて共感を生み出しています。
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