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コラム

編集・ライター養成講座修了生が語る いまどきの若手編集者・ライターの生き方

自分の名前で生きたいなら“好き”を貫け

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萩原かおり

【前回のコラム】「新人でも年収2倍に。選ばれるライターの生き残り戦略」こちら

「Webマーケティング」という武器を持つ

「独立1年半で年収1000万なんてすごいね」
このコラムを連載してから、よく言われる言葉だ。ありがたいが、もっと稼ぐ人は山ほどいるし、ライターとして有名なわけでもないので「私は何者にもなれていない」という意識が影のようについてくる。たまにどうしようもない焦燥感に駆られて、心臓の端っこがちりちり焦げつく。ある日、「もっと早く成長したいのに」と悔しくなって、ひとりでぼろぼろ泣いた。はたから見たら情緒不安定でしかないが、至って正気である。

たくさん書いて勉強して、全力を出してもまだ足りない。本気で走り続けていると、自分の限界もある程度予想できる。「今の私が頑張り続けても、到達できるのはせいぜいあの辺だろうな」と、てっぺんが見えるのだ。努力できる・できないも自分の能力なので「やればできる」は存在しない。もっと速く走りたいのに、もっと上まで行きたいのに、私の足が追いつかない。どうしよう、と思った。明日車に轢かれて死んだら、きっと成仏できない。

そこで「飛び道具がほしい」と思った。自分の足で届かないなら、道具を使えばいい。かつて経験したマーケティング仕事が楽しかったので、Webマーケティングの勉強を始めた。ライターだとコンテンツをつくる部分しか担当しないが、Webマーケティングの知識があればもっと上流の仕事ができる。ネット記事はアイキャッチとなるサムネイル画像も大切なので、Photoshopの勉強もした。サイト制作の知識も欲しくなり、あれこれやっているうちに50万円が消えていった。

もしかしたら、結果には結びつかないかもしれない。でも私はできるだけ多くのことを試したい。もしダメだったとしても、それがわかれば無駄じゃない。たくさんの不正解を積み重ねた先に正解がある。立ち止まっているくらいなら当たって砕けたい。昨日の私を壊して前に行けるなら喜んで壊す。無名を逆手にとって、変化を恐れず歩み続けたい。

自分の強みは「好き」の中にある

自分の現状に納得できず涙を流していたとき、ふと「もうだめだ」と思った。私は、今の自分を認められない。「やり切った、今日死んでもいい」と思えない。そこでもう一度自分の強み、つまり好きなことを探した。書くことが好きだが、何を書くかが重要だ。私が書くことと同じくらい時間を使っているのが、YouTuberの動画を観ることだった。「YouTuberについて書けばいいんだ」と思い、YouTuberに取材するメディアの立ち上げを決意した。7月1日のことだった。

サイトデザインを決めて制作会社に発注し、ロゴを友人につくってもらい、媒体資料を自分でつくって好きなYouTuberに取材依頼をした。その段階ではサイトのデザインカンプすらできておらず、何の実績もないため返信はほとんどこなかった。7月の暑い時期で、扇風機の風に煽られながらくやし泣きをした。世間的には当たり前かもしれないが、私は「まあそんなもんだよね」と受け止められないくらい切羽詰まっていたのだ。「つらい」と言って泣く私を見て、夫は「そんなに泣くほどくやしい仕事があるなんて、俺はうらやましいよ」と言った。

今まで数々の成功者に取材してきたが、多くの人が「継続が一番大事」と言った。「この人もさぞ苦しかったのだろう」と思って聞いていたはずなのに、実際に自分がゼロからメディアをつくろうとしたら、想像の100倍しんどかった。取材依頼に行った事務所で「現段階では取材を受けられない」と断られたとき、ひとりでメディアを立ち上げると言った私に、相手は目を丸くしながら「諦めちゃだめですよ」と言った。諦めたらさぞかし楽だろう。

自費で個人メディアをつくるだけでこれだけしんどかったのだから、起業のしんどさは想像を絶する。しかし、今まで取材をしたたくさんの人たちの言葉が背中を押してくれた。取材されるほど成功した人は、血の滲むような努力をしてきた人なんだと再認識した。

そして8月末、動画クリエイター取材メディア「スター研究所」を立ち上げた。

 

平成最後の夏に、ひとつ大きなチャレンジができた。取材依頼に苦労した分、取材に応じてくれた動画クリエイターの魅力をぞんぶんに描き切ろうと気合いを入れて書いた。まだまだこれからで、脳内では「継続が大事」という言葉が鳴り響いている。私が自信を持って世に出せる文章を書いて、動画クリエイターを言葉の光で照らしたい。

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講師陣は、総合誌、週刊誌、ビジネス誌、ファッション誌、Webメディアなどさまざまな分野の現役編集長や、第一線で活躍中のライター・ジャーナリスト・作家など。多くの課題添削、実践トレーニングを通じて、現場で活躍できる編集者、ライターを養成します。

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