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「販促とブランドづくり」 — イトーヨーカドー富永氏、元レクサス高田氏対談

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企画提案時に「松」「竹」「梅」を用意するのは愚策

富永:先ほど「販促コンペ」に集まった企画で「コカ・コーラ シークレット・メッセージ」を紹介しましたが、第10回の企画でもうひとつ面白いものがありました。「死んだあとシミュレーター」というもので、現在健康な人が生命保険へ興味・関心を持ってもらうための企画として応募されたものです。

生命保険は、いざ何か起こったときのことを、そのはるか前に心配してもらう必要があって、営業しにくい。だから健康な人に興味関心を持ってもらえるアイデアありませんかというお題だったと思います。消費者が生命保険に関心を持ちづらいのは、誰も死んだことがないからです。死を経験した人がいない。だったら、それをシミュレーションしようというものでした。

最終審査会では、いくらなんでもブラックだろう、ということで主要賞には入らなかったんです。私がマイノリティだったので。ただ、各審査員が選べる「審査員個人賞」というのに選びました。

高田:富永さんは、こう企業の中で企画の説得の仕方、説明の仕方というので工夫されていることはありますか。

富永:ちょっとTips的になってしまうんですが、よく企画を3本「松・竹・梅」を用意して、役員に選んでくださいとやりたくなりますよね。

高田:あります、あります。

富永:それは愚策だと思っています。

高田:というのは。

富永:それはマーケティング部としては「松」の案をやりたいわけです。でも3つ説明する。しかし偉い人には「松」なんて破天荒な策に見えて、真っ先に落とされるわけです。「まあ、『梅』だろうな」と思っている。

でも、「そのまま『梅』にしてしまうと、彼らもスネてしまうかもしれない。『竹』にしよう」というふうに考えます。マーケ部の意を汲んで「『竹』をやらせてやった」というふうに見ます。一方、提案する下の人は「『竹』にしやがって」となる。

高田:どうしてそういうことが起きるんでしょうね。

富永:ちょっと変なたとえなんですが、理髪店に行くと目の前に鏡がありますね。ちょっと隣を見ると、おじさんがおすましした顔で鏡を凝視している。ちょっと顔をつくっているわけです。滑稽さを感じるわけですが、私も私で鏡を見ているときは顔をつくってしまっているんでしょう。

何が言いたいかというと、誰しも自分の顔はハンサムな顔しか知らないわけです。きっとふだんはもっと、間の抜けた顔をしているんだと思います。自分の顔は実際より2割増し、という。

会社も同じで、偉い人のとこに入ってくるのは、基本的にはいい情報だけです。偉い人というのは基本的に自分の会社が好きで、2割増しでハンサムだと思っている。

実際それは錯誤であって、消費者の視点に精通したマーケティング部の渾身の一作が、いかに的確なものなのかを説明するほうがいいのだと思います。

高田:でもわかんないんだ、上は。

富永:そうですね。だから、どうせなら「松」と「竹」を持っていって、泣き落としのほうがいい。「かけてるんです! これに!」とか。最終手段ですが。少なくとも、善悪で見ているのか、筋が通っているか、通っていないかなのか、好き嫌いなのか。どんなものさしで測っているのかは聞いたほうがいいですね。

要するに人の発想にはパターンに限りがあるし、できるだけ複数の視点があったほうが、実態に即した企画ができるのだと思います。「販促コンペ」はそのあたりが面白くて、クリエイターサイドの方、メディアやPRの方、私のような事業者サイド、というふうに立場が異なるんです。なので、同じ企画を見ても、目の付け所が異なったり、評価が異なる。それだけに、いい企画が残るし、やりがいがあるのではないかと思います。

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「販促コンペ」は、マーケティング・プロモーションの専門誌「月刊販促会議」(発行=株式会社宣伝会議)が2010年7月、プロモーション手法の創造とさらなる進化、ならびに企画力に優れた人材の発掘・育成を目的としてスタートしました。10回めの節目を迎えた今回は、アサヒビールやカルビー、セブン-イレブン・ジャパンなど29社が、自社の商品やサービス、施設などのプロモーション企画を公募しました。応募総数は4088本となりました。

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