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クリエイティブ組織における「アート×サイエンスアプローチ」最前線

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「直感や主観に基づくアート的発想に基づく提案が通りにくい」「提案したアイデアに対して、根拠となるファクトや裏付けも示さなければならない」と頭を抱えるクリエイターも多いのではないだろうか。リクルートコミュニケーションズでは、こうした課題を解決すべく、「アート×サイエンスアプローチ」の実践プログラムに取り組んでいる。本プログラムの開発に携わるクリエイティブプロデュースグループの富田美智子氏とマーケティングリサーチグループの金谷朋子氏に、プログラムの概要と開発プロセス、そしてこれからのクリエイターに求められる要素を伺った。

左)富田 美智子 氏、右)金谷 朋子 氏

アート的アプローチだけでは通用しない時代

—お2人のこれまでのキャリアと現在の業務内容を教えてください。

金谷 朋子 氏

金谷:大手カフェの店舗マネージャーとポイントカード情報のデータ分析業務を経て、「オンラインコミュニティリサーチをしたい」と思ってリクルートコミュニケーションズに転職しました。

直接お客さまと対面する1対1の接客と、多くのユーザーや消費者の意見収集・分析といった異なる経験を通して、「より多くのユーザーや消費者とリアルなコミュニケーションを介したうえで、一緒に商品やサービスをつくる仕事をしたい」と思っていました。今は20歳前後の若者にグループインタビューやアンケートを投げかけられるオンラインコミュニティ「Raico(ライコ)」の運営と展開に注力しています。

富田:新卒でリクルートに入社して以来、一貫してクリエイティブ組織に所属しています。グループを横断して各種サービスのブランディングやプロモーションをするにあたり、「アイデアやクリエイティブの力で課題整理から提案、アウトプット制作まで携わる」役割をずっと担っています。

ただ、私たちクリエイターに求められる要素はここ数年で大きく変化していると思います。以前ならアイデアやひらめき、直感といったアート的アプローチで提案が通っていたのですが、最近はアート的アプローチだけの提案が通用しづらくなりました。

—具体的にどのような場面で、アート的アプローチが通用しづらいと感じるようになったのでしょうか。

金谷:いくつか評価軸を羅列して、上がってきた提案それぞれに点数をつけ、総合点が高い案を採用する……という場面はよくありますね。

富田 美智子 氏

富田:そうなんです。それもひとつの正しい方法だとは思うのですが、「数字からアイデアって生まれる?」「それって感動できるの?」「“イノベーティブさ”がもっとあっても良いのでは?」と、もどかしい気持ちが湧いてくるんですよね。アート的アプローチがなかなか通用しない状況が続くと、クリエイターが本来強みとしていたはずの直感や審美眼に自信を持ち続けにくくなることにも、問題意識を感じていました。

金谷:アイデアの根拠となる事実情報がないと、クリエイターが提示する案が通らないんですよね。合理的な意思決定の中でしかチャレンジできないというのは、非連続なアイデアが生まれない危機感を感じていました。クリエイターにアート的アプローチとサイエンス的アプローチの両輪が求められる時代になっているのだと思います。

そうした背景があって、クリエイティブプロデュースグループとマーケティングリサーチグループのコラボレーションによる「アート×サイエンスアプローチ」の実践プログラムが発足しました。

リアルな案件を題材にした「アート×サイエンス」実践型ワークプログラム

—「アート×サイエンスアプローチ」の実践プログラムについて、詳しく教えてください。

金谷:クリエイター9人を3チームに分けて、リアルな案件を題材にしたロールプレイング形式のプログラムを実施しました。クリエイターにはオンラインコミュニティ「Raico」を通してユーザーとコミュニケーションをとってもらいます。仮説立案のためのヒアリングだけでなく、アイデアを直接ユーザーにぶつけてもらうことも行いました。

富田:正直、最初は不安でした。「クリエイティブの良し悪しが判断されるのは怖いなぁ」とか「第三者が自分のアイデアを却下するのはつらい」といった思いもありました。でも金谷から「ユーザーの声を聴くことで、アイデアの幅が広がるし、後押しもしてくれる」と声をかけてもらったおかげで気持ちを切り替えられました。

金谷:数字や文字情報が羅列したデータに対して苦手意識を持つクリエイターも多いかと思ったので、クリエイターに対してリサーチ(この場合、ユーザーの声を聴くこと)の意味付けを丁寧に伝えることは特に重要だと思っていました。

逆にリサーチの立場としては、クリエイターのアイデアを豊かにするためにどんな情報を揃えればよいのかに苦慮しました。通常のリサーチ業務では、結論ありきで各種検証を進めるのに対して、今回のプログラムではあらかじめ決まった結論が用意されていません。クリエイターがアイデアを考える様子から「アイデアを生み出すにはユーザーのストーリーが必要」と分かってからは、いかにしてユーザーのストーリーや実態を引き出すかを意識して調査設計をしました。

クリエイターにもリサーチにも「アート×サイエンス」の思考が必要

—プログラムに取り組んだ率直な感想を教えてください。

富田:改めて「クリエイターは直感や審美眼でアイデアを出すことが得意」だと実感しました。3人1組のチームでアイデアを練り上げるプロセスも新鮮でした。普段はクリエイター同士で一緒に仕事する機会が少ないので、アイデア自体だけでなく思考プロセスも全然違っていて良い刺激になりました。

また、「リサーチ」という客観的な視点を取り入れるフェーズをアイデア創出に組み入れるのは、想像以上に手応えがありました。クリエイターがもともと持っているアート的アプローチを生かした仮説にリサーチなどの裏付けを取り入れて、効果の期待できるクリエイティブを主体的に提案できるようになりたいです。

金谷:クリエイターがアイデアを創出する現場を間近で見られて、私も良い刺激を受けました。リサーチで得た結果から多種多様なアイデアが飛び出す様子は本当に驚きました。

リサーチには「事実をどう構造化するか」をひたすら追求することが求められると思い込んでいましたが、プログラムでさまざまな経験をして「事実の構造化だけでは良いアイデアは生まれないのでは?」と思うようになりました。本来はサイエンス的アプローチを得意とするリサーチ側にも、クリエイターが得意とするアート的アプローチが必要なのかもしれません。

—プログラムをきっかけに、新たに取り組んでみたいことはありますか?

金谷:はい。クリエイターにとって、もっと活用しやすいリサーチができればと思います。クリエイターがより良いアウトプットをつくるのに必要なインプット装置として、「Raico」をはじめとしたリサーチサービスを強化していきたいですね。

富田:サイエンス的アプローチを取り入れる良さを実感したので、今後も引き続き取り組んでいきたいです。でもやみくもに取り入れるのではなく、クリエイターとして求められる直感や主観、審美眼を大切にしながら、アート的アプローチとサイエンスアプローチを自分らしくうまく融合していけたらと思います。



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