スーツをクリエイティブする体験ができる-イメージはデザイナーのアトリエ
—「Aoki Tokyo」の店舗の空間デザインのポイントを教えてください。
室井:僕は昨今のデザイン変遷に、トラディショナル、モダン、イノベーティブという3つの進化があると思っています。カフェを例に挙げると、トラディショナルなカフェは男性的で趣味深いコーヒーの世界。そこにモダンな雰囲気のスターバックスコーヒーが出現して、カフェはスタイリッシュで気軽なものに価値観が変わり、一気にユーザーの裾野が広がりました。次にブルーボトルコーヒーが出てきて、焙煎所というモノづくりの場所自体を新しいデザインと組み合わせることで、これまでにないカフェが生まれました。
モノづくりの場が売り場になるという原点回帰ですが、そのコンセプトをイノベーティブなデザインに仕上げているので、すごく新しく感じます。ブルーボトルコーヒーは、まさに原点回帰しながらデザインが進化したリテーリングだと感じます。
「Aoki Tokyo」もそうしたイノベーティブなオーダースーツ屋にしたいと思いました。ではオーダースーツにとって原点となるモノづくりの場は何だろうと考えたとき、思い浮かんだのが服飾デザイナーのアトリエでした。銀座店も池袋店も、ニューヨークのアパレルデザインスタジオをイメージしています。
コンクリートむき出しの壁とダメージウッドの床。装飾的なものは一切排除して、スーツをオーダーメイドする時に必要なものだけが機能的に収まっている空間です。店舗の中心には8人がけの大きなカウンターがドーンとあって、正面にはゲージ服と呼ばれるスーツの型のサンプルがずらりと並んでいます。お客さまには、スタッフのサポートを借りながら、自分がスーツをクリエイティブする体験をしていただく。そういう体験空間をつくれるのではないかと思ってデザインしました。
—プロジェクトを分業で進めるのではなく、メンバー全員で議論してきた結果、高い製品品質、イノベーティブな店舗空間、接客サービスの一貫した顧客体験ができあがったわけですね。最後に今後の展望をお聞かせください。
諏訪:「Aoki Tokyo」の急速な拡大は考えていません。一過性のものにはしたくないですから。まずは銀座店と池袋店の収益を上げて実績を積み、堅実に地盤を固めます。そして海外にも通用するブランドに育てていきます。『Aoki Tokyo』には、そういう大きなチャンスがあると思っています。
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