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ギター専門誌が好調 100ページ超の「大特集主義」で完売続出

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編集部の愛をもって伝える

—100ページ超もある特集の企画を、毎月どのように立てているのでしょうか。

尾藤:最初から100ページを目指しているわけではなく、始まりはいつも30~50ページくらいなんです。ただ、人に話を聞いたり関係性をたどっていったりしながら取材を進めていくうちに知らなかった事実がたくさん出てきて、新たに取材したい人や掲載したい資料が増えていくんです。

例えば、60~70年代のモータウンやディスコ、戦前の日本のジャズ・シーンといったテーマについて、その時代のそのジャンルを知るアーティストに話してもらうと、話の中に出てきたキーパーソンにも取材ができそうだぞということが発覚する。その結果70ページになり、80ページになり、今回も100ページ超えたねと、あっという間に増えていくんです。

河原:会議で特集を決めるときは、“ストーリー”があるかどうかが決め手になりますね。例えば、「70年代に活躍していたこのギタリストが超かっこいいんですよ」だけでは特集にはなりません。

そのギタリストが活躍していた70年代当時は、どんな時代背景があって、彼は音楽シーンでどんな立ち位置にいたのか、メジャーに対するアンサーだったのか、伝統的なものを発展させたのか、今現在の音楽に与えている影響は?……など、あるジャンルやギタリストを取り上げたときに見えてくる音楽の進化の歴史やエレキ・ギターの発展の影響などが見えて、初めて特集のテーマとして成立するんです。「ただ人気があって盛り上がっているから」という理由だけでも企画にはなりませんね。

尾藤:ウチでしか読めないスペシャルな何かがなければ「ギタマガ、ちょっと手を抜いたんじゃないの?」と思われても仕方がない。僕ら編集部員も一人ひとりがギター弾きなので、僕らが本当におもしろいと思うこと、読者に熱量を持って伝えていけることを企画にしたいと思っています。

河原:2019年4月号の「シティ・ポップを彩った、カッティング・ギターの名手たち。」もまさにそう。70~80年代のシティ・ポップで活躍していたギタリストのプレイは、今の僕らの耳で聴いても本当に素晴らしくて。もっと多くの人に知ってもらいたい、そして実際に弾いてみてほしいというシンプルな気持ちからスタートしました。

編集部全員がそういう気持ちになっているからこそ、絶対に手を抜けないし、結果としてあらゆる世代から大きな反響があり、この数年ではずば抜けた売上部数を記録することができました。

尾藤:タイアップ記事であってもフラットな目線でやろうと考えています。過剰に押しつけるのでも、あえてウイークポイントを書くのでもなく、目指しているのは“勧めてくるのがうまい人”。その上で愛があふれていると、「僕もそう思っていたんだ」といった共感が得られるんじゃないかと思っています。

河原:あとはいよいよ極端な特集でも読者を巻き込める形ができてきた気がしますね。ジャマイカだろうがカントリーだろうが、企画の立案者がテーマの良さをしっかり他のスタッフに伝えて、一度全員でどっぷりハマってからつくり始めるんですが、それがここ最近のギター・マガジンがグルーヴしている理由なのかもしれません。

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