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企業ブランドの転換期、どう立ち向かう?広報がリードするコミュニケーション改革

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グローバルで新ブランドを共有

—社外に向けてブランドを浸透させていく上で、重要視したポイントはありましたか。

2018年10月には、販売店やユーザー向けイベント「HiKOKI(ハイコーキ) Green Day」を開催しました、新ブランド「HiKOKI」のコンセプトを含めた要諦を伝えることが目的で、東京を皮切りに、中国の上海と北京、広州、インドのバンガロール、ドイツのデュッセルドルフ、フランスのパリでそれぞれ開催しました。

私自身も各地で登壇しましたが、ここでお披露目したのが「パワーツール(電動・エア工具)領域で、進化する極上のユーザー体験を創造します」というブランドプロミスです。その実現のための組織体制、製品開発の考え方やマーケティング・コミュニケーションの新方針についても披露しました。

変更されたブランド名の考え方や名称そのものは、まず誰も知らない状態からはじまります。実際に、工機ホールディングスという社名はほとんど知られていませんでした。

まずはとにかく「HiKOKI」の名前を覚えてもらうこと。デビューしたばかりの芸人さんが「とにかく今日は名前だけでも覚えていってください」とよく言いますが、まずは接点の数を増やすアプローチをします。これを行えば行うほど記事などの露出は増えていきます。実際に、以前は年間で数十件程度だったメディア露出件数は2018年度に月間20件、2019年度は7月時点で既に月間300件ほどまで伸ばしています。

広報などのコミュニケーション戦略の基本に、プロダクトライフサイクルを応用した考え方があります。企業や製品の成長には「導入」「成長」「成熟」「衰退」という4つの時期がありますが、これを事業にあてはめて考えるのです。工機ホールディングスと「HiKOKI」はまさに「導入期」にあたるため、お客さまやメディアのもとへ足を運ぶ回数を増やし、認知度を高め、他との差別化を図る活動が不可欠です。

それが一定のステージまで成熟すると、今度は需給が飽和して成長も頭打ちになっていきます。この衰退を頭に入れつつ、すぐに“イノベーション”を起こし、ステージを変える必要があります。そうすることでさらに新しい市場を開拓できる。この4つのフェーズを繰り返す。そして、今自社がどこにいるのかを見極めることがコミュニケーションの目的を明確にするうえで重要なものの見方なのです。

「広報バカ」になってはいけない

—玉川さんはコミュニケーションのプロフェッショナルという立場から、工機ホールディングスでは「マーケティング・コミュニケーション室長」として、ブランドを基軸としながら経営やマーケティング戦略にも深く関わっているのだということが分かりました。

「広報は人の意識と行動に変化をもたらす仕事」ですので、そのために必要なプロセスに関わるのはごく自然なことだと考えています。

工機ホールディングスでは経営陣との会議に出席すると、社長をはじめとする経営陣が2つの言葉をよく口にします。そのひとつが「お客さま目線の商売」で、もうひとつが「現場」。この2つに魂がこもっていない内容はほとんど通りません。

従来通りの手法をなぞるだけで変化を期待してはいけません。経営目線で、俯瞰的にどのようなコミュニケーション手法が必要なのかを考えることが必要です。これこそ私たちコミュニケーションを生業とする者が最も持たないといけない視点だと思っています。

そのためにも、慣習や技術に頼りすぎた「広報バカになりすぎるな」と伝えたいですね。広報の仕事に大事なのは、変化の激しいこの世界で、会社を成長させるためにファンをつくる仕組み、現場で商品が売れる仕組みをサポートすること。その考えを自分やチームの中でいかに確立させていくかが、今後の広報には重要になってくると思います。

新ブランド「HiKOKI」におけるマーケティング・コミュニケーションの方針を訴求するため、グローバルでメディアとの接点を強化した。