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コラム

「シェアしたがる心理」のこれからを考える

佐渡島庸平氏×天野彬氏 対談 「SNSは熱量からサステナビリティへ」-コミュニティの本質を考える【前編】

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電通メディアイノベーションラボでスマートフォンユーザーやSNSの動向に関する研究/執筆/コンサルティングを手掛ける、電通の天野彬氏。クリエイターのエージェント会社「コルク」でファンコミュニティ形成・運営を行い、従来の出版流通の形の先にあるインターネット時代のエンターテインメントのモデル構築を目指す、佐渡島庸平氏。天野氏は2017年に『シェアしたがる心理』を、佐渡島氏は2018年に『WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE. 〜現代の孤独と持続可能な経済圏としてのコミュニティ〜』を刊行している。

それぞれの著書では、ともにスマホ時代におけるコミュニティ形成など、ひとの繋がり方について言及しており、佐渡島氏の著書の中では、天野氏の『シェアしたがる心理』が紹介されている。

実践を通じてSNSやコミュニティについて、考察を重ねてきた2人に、ファンの獲得や若者とのコミュニケーションの取り方にも大きく関わるSNSとコミュニティの本質について話を聞いた(収録日:2019年4月8日)。

写真左から、コルク・佐渡島庸平氏、電通・天野氏。

SNSはフローだけでなく、本質が表れるストックの一面を捉えるべし

—企業がSNSをマーケティングや広報・コミュニケーションに活用する際、どのような姿勢で向き合うべきだと思われますか。

佐渡島:企業がSNSを使いこなせるかどうかは、フローとストックの概念を理解できているかどうかにかかっていると思います。SNSはタイムラインに情報が流れていくフロー型のメディアと思われがちですが一方で、その投稿はストックされていくという特質もあります。

テレビのようなメディアは、次から次に面白いことが放送されては、流れていく。典型的なフローのみのメディアですが、SNSは違います。数回の投稿で、たとえ自分を「盛れた」としても、その背後にある大量のストックを見れば、その人あるいは企業の本質がすべてわかってしまう。ですからテレビは瞬発的な面白さで、人気者になれますが、SNSの場合はそうはいかない。より本質勝負の世界になっていると思います。

SNSのフォロワーを増やす方法論の中には、大きく話題になった個々の投稿に言及しているものが多いので、ストックの影響はあまり考えたことのない方が多いかもしれません。しかしSNSで成功している人たちは、決してフローの世界における瞬間的な面白さだけで人気を得たわけではないのです。

天野:若い人たちはSNSの中に人や企業の本質が表れるということを感覚的に理解していると思います。彼らは「誰が」「何をシェアするか」、そしてその投稿が「どのような反応を得るか」を通して、アイデンティティを確かめ合っています。

互いを評価する基準としては「いいね!」の数やコメントの質、投稿の保存数など、さまざまな要素が複合されていて、その人の本質を理解するためにInstagramのタイムラインをくまなくチェックしているとも言えます。

企業もSNSを活用して本質的な魅力を知ってもらえるようになればよいですが、企業によって、その温度感には差があるように感じます。ですが、生活者をどのように巻き込んでいくか、どのように双方向のコミュニケーションをとり、本質を理解してもらえるかが、企業のSNSマーケティングにとってますます重要になってきていると思います。

佐渡島:企業がSNSを通して生活者とコミュニケーションをする場合、キャンペーンや投稿ごとにSNSのキャラクターやコンテンツを変えるケースがあります。これは、季節ごとに服を変えてもその人の中身が変わらないのと同様で、「服だけで勝負している人」のようなもの。従来の広告宣伝が、こうした方法をとってきたからだと思いますが、本来自分たちが自信を持っている商品であるならば、中身はブレず、本質的なコミュニケーションができるはずです。

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