【前回コラム】「なぜ、ブランドについて語ろうと思ったのか?」はこちら
あなたは、ブランドの「定義」を聞かれて答えられますか?
連載1回目では、ブランドの実務においては、教科書通りに戦略を実行しても、うまくはいかないということについてお話をしました。
この記事の中で「『ブランド(brand)』という言葉の語源は、家畜などに押した『焼き印(burn)』であることはよく知られています。昔、農家では自分の牛を、他の牛と識別するために熱く焼いた鉄印を押しました。転じてブランドは、『他者との差別化』を象徴する言葉になったと言われています。」と書いたところ、ブランド論の第一人者である田中洋先生から、なんと実はこの教科書に当たり前のように書かれていることは、そもそも正確ではなく、もともとburn(燃える)という意味でのbrandという言葉は存在しており、それがのちに、一方では「焼き印」となり、一方では「商標としてのブランド」になったという解釈が正しいのだ、ということを教えていただき、びっくりしました。ありがとうございました。
コラムが始まってから、いろいろな方からご意見をお寄せいただき、大変に励みになります!
さて今回は、なぜ日本の企業の多くがブランドを上手くつくれないのか、について言及していきたいと思います。
連載1回目でグローバルにはアップル、NIKE、スターバックスなどの誰もが認める本当に『すばらしいブランド』が存在するが、日本にはそうしたブランドは少ないという話をしました。
なぜ、日本の会社・製品・サービスにはすごいブランドが少ないのでしょうか?
どうして、あなたがこんなに頑張っているのに、すごいブランドがつくれないのでしょうか?
その前に、質問です。
ブランドとは、そもそも何ですか? 簡単でも、難しくでもよいので説明してください。つまり、ブランドを定義してください。
おそらく、大多数の人は、すぐには説明できないと思います。いろいろ考えて、「ブランドとは、○○○○………。」と、くどくどと説明を始める。
もちろん、すぐに説明できる方もいるにはいますが、100人いたら100人違うブランドの説明になると思われます。
ブランドがつくれない最大の理由はここです。
つまりは、「ブランドの定義がない!!」のです。
ブランドをつくらないといけないはずなのに、賢そうな言葉で、難しそうな単語で、なんだかんだと説明されてそれを聞くと、なんとなく理解したつもりになっているけど、ふわっとしていて、よくわからない。
だから『ブランド』をつくるということが、突きつめて言い換えると『よくわからない何か』をつくることになっているのです。
よくわからないものを、つくることなどできるはずがありません。
いや、私は説明できるし、定義しているという方も、もちろんおられます。
この場合、ブランド論によく書かれている「差別化」や「(顧客との)約束」という方が多い。
ある人のブランドの定義はA(約束)。
別の人のブランドの定義はB(差別化)。
とすると、このふたりがチームで『ブランド』をつくる場合には
A(約束)をつくるのかB(差別化)をつくるのか。
目指すゴールが異なってしまうことになります。
ブランドづくりはひとりではできません。いろいろな関係者の協力が必要です。自分が定義しているだけで、チーム内のすべてのメンバーに共通の定義がなかったり、単語としては共有していても、メンバーがその意味がよくわかっていなければ、ブランドなどつくれるはずがありません。
大事なことなので繰り返しますが、ブランドの最大の問題は、ブランドなるものの定義がなかったり、あってもあいまいで結局、人によって違ってしまうというところにあるのです。
日本人に「寿司」といえば、どのようなものであるのかはすぐに頭に浮かびます。ですから、「寿司」について話をしているときにお互いの話がかみ合わないということは起こりえません。
しかし、ブランドは違います。ブランドの議論をすると、お互いに話が全くかみ合わないことが圧倒的に多い。ちゃんとかみ合っていることは、ほとんどないのが現実なのです。
定義があいまいになっているのには、もちろんちゃんとした理由があります。そこでブランド論のいちばん基礎の部分として、まずはブランドなるものの定義があいまいになる理由から翻訳を始めたいと思います。
「ブランドなんか大嫌いなブランド担当者が33年かかって、たどり着いたブランド論」バックナンバー
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