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コラム

ブランドなんか大嫌いなブランド担当者が33年かかって、たどり着いたブランド論

なぜ、あなたの会社はブランドがつくれないのか? —あいまいな「定義」が引き起こす問題

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ブランドの定義があいまいになる理由

【理由①】ブランドという言葉の乱用

ひとつ目の理由は、ブランドという言葉が本来、使うべきではないところで乱用されてしまっていることです。

今、世の中には『ブランド』という言葉があふれています。

なんでもかんでもブランドという言葉を使う。

世の中で使われている『ブランド』という言葉のほとんどが、実際は単なる『企業・製品・サービス』という単語の代わりに使われているものです。

「私たちのブランドの今後を検討しましょう」という話を、よくよく聞いてみると、「私たちの製品の今後を検討しましょう」という意味である場合が本当に多いです。何となくかっこよく言うために、ブランドという言葉を使ってしまう。

乱用がどんどん広がって、広告宣伝やマーケティング関係の講演会では、最近は参加者を「ブランド」と「パートナー」と2つに分けたりします。たいていは、「お金を払う側(広告主:ブランド)」と「お金をうけとる側(受注先:パートナー)」です。実際、30年前は広告主といっていました。

ただ広告主というと、受注先に無理難題を押しつけていることがばれそうで、後ろめたい気持ちになるからなのか、近頃はブランドというようになりました。私は講演会ではいつもブランドという立場ですから、広告主より賢そうなイメージのこの区分は個人的には大好きです。ただブランド実務者の立場としては、本来の定義からはずれた使い方なので、本当は使ってほしくない事例です。

これらの例は、ほんのごく一部です。単に企業・製品・広告主のことを指すときもブランドという言葉を使うから、わけがわからなくなる。このことによって、ブランドという言葉が、ますますわけがわからなくても許される存在となり、あいまいであることに気づかなくなってしまいます。

〔余談ですがこれと同じような、あいまいだけどかっこいい言葉に、「戦略」があります。この2つの組み合わせである「ブランド戦略」は、本当にすごくて賢そうなイメージですが、あいまいさも最高で実務者にとっては最高レベルの翻訳が必要となります。〕

【理由②】正確なブランドの定義は難解

2つ目の理由は、正確なブランドの定義が難しすぎることです。

ブランドの本を読めば必ず出てくるのが、そもそものブランドの起源(差別化)とアメリカ・マーケティング協会(AMA)の定義。それによるとブランドの定義は「個別の売り手もしくは売り手集団の商品やサービスを識別させ、競合他社の商品やサービスから差別化するための名称、言葉、記号、シンボル、デザイン、あるいはそれらを組み合わせたもの」だそうです。

私、恥ずかしいけれど告白します。

いまだに、どういう意味なのかさっぱりわかりません。

33年、ブランド実務担当をしている人間がわからない定義なのです。

このように、おそらく正確と思われる定義はありますが、これをそのまま使っても実務者のブランド定義のあいまいさは、まったく解決しません。

【理由③】ブランドの世界は、無意識の省略が当たり前

3つ目の理由は、省略に気づかないことです。

実は、ブランドを信じる人の特殊な世界の中は、さらにいろいろな業界、国に相当するものに分かれています。その業界内、国内では、当たり前のことなので省略されてしまうのですが、ブランドという単語に本来つけておいてほしい言葉が省略されて使われます。現実社会の実務者には、その省略が見えないのです。すべて同じブランドの話だと思ってしまっていないでしょうか?

例えば
(コーポレート)ブランド
ブランド(シンボルマーク)、
ブランド(プロミス)
ブランド(エクイティ)、
ブランド(コミュニケーション)などいろいろあります。

( )の部分を省略して使うのが普通です。かつ使っている本人は省略しているつもりもない。結果として、( )の部分が同じ人たち同士のブランド話は成立する。

逆に( )の部分が違う人たちでは成立するはずがない。

ブランドをブランド(プロミス)の意味で使っている人に、「ブランド(シンボルマーク)の保護がこれから求められている」といっても、プロミスを保護するって何のことをいっているのかわからないのです。そして、悲しいことにお互いになぜ、話がかみ合っていないのかが、わからないのです。

ブランドには、本来つけておくべき言葉が必ず何か省略されていることを常に意識して、それを補って使わないとあいまいさはなくなりません。

次ページ 「あいまいでない、わかりやすい定義は間違っている」へ続く