流通主導によるサプライチェーンの「情報化時代」へ
したがって1970年代以降から、コンピュータを主体とした「情報化時代」が始まります。情報化は、まず製造業における生産管理の領域から始まりますが、この情報化は徐々に需要サイドの販売と消費の方へシフトしていきます。日本の経済成長は実質1973年ごろから鈍化し、安定成長期に入りますが、このタイミングは情報化時代による広告コミュニケーション業界が盛んになり始めた時代で、同時に百貨店やダイエー、イトーヨーカドーのような流通業が勢いを増した時代でした。
そして、この情報化時代のなかで、流通業が販売に関して主導し製造業に対する力を強めていきました。つまりは、製造から販売中心のビジネスに変わっていったのです。
この流れに対抗するため、大手製造業は自らの販売チェーンのネットワークを築くことで、売場とディストリビューションを抑えることに力を注いでいきました。その結果、情報化は生産管理だけでなく販売まで一貫して伸びたサプライチェーンを適切に管理することを意味するようになっていきます。この時期のテクノロジーは情報化技術と結びつき、商品のマスターデータを中心に在庫、出荷、POSによる販売データを中央集権的に管理することになりました。
流通から消費中心の「情報化」がデジタル化を加速
この流れで、さらに情報化は販売からさらに消費の領域まで広がっていきます。と消費の領域における情報化とは、つまり流通から消費者側に力が移っていくということです。
日本では1980年代からパーソナルコンピュータが普及し、1995年からインターネットが使われはじめ、2000年代には携帯電話がインターネットを取り入れてスマート端末に発展し、2010年代にはソーシャルメディアとスマートフォンの時代が始まりました。情報化の力が消費者の手にわたったという事実は、そのようなデジタルテクノロジーの普及と切り離して考えることはできません。
そして流通によるモノ中心の普及や販売による力が弱まっていくと、消費者側が何を求めるか、消費者の欲しいをいかに刺激するか、という情報の質が問題となっていきます。この変化は、消費者主導の検索ツールやソーシャルメディア、Eコマースのようなデジタルテクノロジーを活用したビジネスが勃興していった過程と時期を同じくします。DXとは、その意味でこの消費者主導の情報化経済の延長線上にあるといえます。
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