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コラム

ビデオコミュニケーションの21世紀〜テレビとネットは交錯せよ!〜

広告のいちばん重要な機能は「心を動かすこと」です。

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今のWEB広告は街でティッシュ配るのと似たような使い方しかされていない!?

前にいた総合代理店で無駄に頑張っちゃってたおっさんは「自分は文化を作っているんだと言い聞かせたい」から頑張ってたんですかね?そのおっさんが自分でどう思ってたかは知りませんけど、なぜ彼は少しでも良い表現にするのか。

広告にとっていちばん重要なのは、見た人の「心を動かすこと」だからなんです。広告の最大の機能がそこにこそあるから。どうもそのシンプルなことが最近の広告業界では、わからなくなっているみたいですね。私に言わせると、匿名ブログの彼もわかってなかったんじゃないの?と言いたくなります。おっさんの頑張りを「文化」とか言って精神論に持っていっちゃってたのはあなたの方じゃない?

「心を動かすこと」が曖昧で昭和な言い方なら、「態度変容」と言いましょうか。その商品のことを強く印象に残すこと、ひょっとしたら好感を持つこと、自分に関係あると感じさせること、何なら「欲しい」と思うこと。それが広告で最も求められる効果のはずです。

それはWEBの広告代理店で言う、クリック率なんでしょうか?「心を動かすこと」に成功したからクリックするんですかね?そうですか?人間ってそんなに単純ですかね?

クリックとは「ほぼ買うつもりになってた商品を買うと決めた時」に押すのであって、WEB広告(静止画バナー?YouTubeのバンパー?)で「知らなかった商品を認知して買いたいと思った上に買うことを決断する」に至るはずがない。あらかじめ「ほぼ買いたいと思ってた商品」を「よし!買うぞ!」と決めさせるのが目的だから「お得なキャンペーン」とか「今だけ何%キャッシュバック」とかが効くわけです。

ね、「クリックさせる」のと「好きにさせる」のとでは、広告制作の目標がそもそも違うの。クリック率を問う時、その前に「その商品を認知させたり好きにさせたりしていた広告」のありがたみは頭からすっ飛んでるからクリック率至上主義みたいな話になるだけです。

この辺りのことを、どうも今、広告業界全体的にゴッチャに語る傾向になってないですか?広告にはいくつかのステップがあり、それぞれの段階でどうアプローチすれば効果的かは違う。それなのに、全部WEB広告的感覚で語っちゃってないですか?

WEB広告が現状、ほとんど販促として使われているから話が小さくなるんです。あえて感じ悪い言い方をすると、今のWEB広告は街でティッシュ配るのと似たような使い方しかされてない。WEBはターゲティングできていいね!というのも、ティッシュ配るのに相手を選ぶのと同じですよ。エステのお店のティッシュを私みたいなおっさんに渡しても仕方ない。それがWEBなら簡単にできる。そんな使い方しか求められてない。

さらに私が妻のプレゼントにちょっと化粧品のサイト見て回ったら、その後一週間ぐらい化粧品のバナーばかり出てくる。エステのティッシュをおっさんに配るようなこと、平気で起きてますからね。不愉快だなあ。でもWEB広告はクリック率は測れても、不愉快率は測れないもんね。

本当はそろそろWEBの代理店だって彼がブログで言う「広告=文化」的な広告制作をやらないといけないんですよ。そうじゃないと、WEB広告の価格なんか上がりっこない。ティッシュ配りだけやってても予算は大して増えやしないんです。WEBでも態度変容できます!強く認知させたり好きになってもらったりできます!そうプレゼンして高い志で素敵な表現を提案し、これ海外じゃなきゃ絶対撮れません!とか言って、うん千万の制作費を獲得する。そんな気構えが必要なんです。だから「心を動かすこと」が大事。匿名ブログの彼は、おっさんの心意気をWEB代理店で啓蒙しなきゃいけなかった。

ネット広告費がテレビ広告費を超えた今、広告業界を「ゴミ」みたいな制作物で埋め尽くされないように、発想を変えていかなきゃ。そうしないと、日本の広告業界なんてほとんどGAFAの窓口業務になってしまう。

必要なら、「心を動かす」効果も数値化することだって考えたほうがいい。TVISION INSIGHTSなんて会社もあるんだから、やりようはあるはず。ぶっちゃけ、自分たちがやりたい企画に都合のいいデータを出せばいいの。

そう、「やりたい」がいちばん大事。数値は高いけどやりたくはないゴミのような表現を作っていてもしょうがないよ。何のために広告業界に入ってきたのか。

そして「やりたい」とか「面白い」とかの要素は企業にとっても大切です。このコンテを形にしたら面白いだろうなあ。そう担当者に思わせることで、難しい企画が思わず通ったりする。心を動かす企画は、プレゼンされる側の心も動かすものです。

お若い皆さんは知らないでしょうけど、さっきのグラフの80年代はテレビと新聞が足並みを揃えて数字を伸ばしていた。それが90年代にテレビだけ伸びて新聞は置いてかれたんです。この時も、グラフィック系の人は化石になりかねなかった。でもデザイナー出身の人も果敢にテレビCMに取り組むようになった。それによってCM表現が変わったとも言える。

大きな目で見ればそんなに変わらないのかも。それより大事なのは、数字に負けるな、数値に呑まれるな。逆にデータをコントロールしてやれ!そんな意気込みです。化石のようなおっさんらを見届ける、とか言ってたら一緒に老いちゃうだけですよ。

テレビをネットが抜いた今、やらなきゃいけないのはネット広告の感覚を変えること。これは、両方知っている人しかできないのかも。匿名の彼も、あのブログに共感したあなたも、頑張ってください!応援してるぜ、ここにいる化石も!