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コラム

そのイノベーションが、未来社会の当たり前になる。

ポスト・コロナ 世界はどう変化するのか ~『好奇心とイノベーション』発刊に寄せて

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宣伝会議は書籍『好奇心とイノベーション~常識を飛び越える人の考え方』を4月30日より書店、オンライン書店で順次発売します。コンセプター坂井直樹さんが、将来を見通した展望を持つビジョナリー8名と対談した内容を収録しています。激変する世界を逞しく乗り切るための、新しい働き方、新しい生き方、新しい産業の創造について触れた本書。今回は、本書冒頭に掲載の坂井さんのメッセージをご紹介します。

世界中が新型コロナウイルス(COVID-19)の猛威にさらされています。目に見えない疫病は皮肉なことに、僕が昨年まで2カ月に1回夢中になって旅をした中国から世界中に一気に広がりました。どの国よりも早くデジタライゼーションの未来型を築いた中国、その武漢で発生したのです。

新型コロナウイルスは、想像を超える速度で世界に広がり、図らずも、世界はボーダレスであることを示しました。まるで映画で見た人類を脅かす感染症のパンデミック(世界的大流行)のような事態が2020 年の現実の世界に出現したのです。

人と人が接触する機会をできるだけ減らすソーシャルディスタンシング(社会距離戦略)が実施されています。そしてレストラン、カフェ、バー、ジム、ホテル、劇場、映画館など、多くの人が集まり楽しむ前提で作られたビジネスの場は危険地域となり壊滅的なダメージを受けています。

一方でデリバリーやリモートコミュニケーションなどの「シャットイン(家に閉じこもる)経済」と名付けられたビジネス分野が登場し、新しいサービスが次々と誕生し始めました。オンライン診療の初診解禁、契約書や請求書を含む公的申請のオンライン化、銀行通帳や印鑑の廃止など、全く違う習慣が日常化するでしょう。リモートワークやオンラインでの就職活動など、実際にこれまでの習慣が崩れる体験をされている読者も多いことでしょう。

こうした危機の中で、事態を好転させ、新しいモノやサービスを生み出す推進力となるのは、やはりテクノロジーであり「好奇心とイノベーション」です。

ダイソンが、わずか10日間でゼロから人工呼吸器「CoVent」を設計し、イギリス政府から1万台を受注しました。ランボルギーニは3月31日、新型コロナウイルスと戦う医療従事者向けに、マスクの生産を開始しました。フォードやGM、トヨタ、テスラも人工呼吸器の生産に乗り出しています。いずれ世界中の国や大企業、医者や製薬メーカーが力を合わせ新型コロナウイルスに打ち勝つはずです。

我々の住むこの世界は過去にも何度も気候変動や疫病で変化し、それらに対応してきました。新型コロナウイルス出現以前と以降では、社会が激変し「いわゆる普通の生活」には戻らないかもしれません。

しかし、このメッセージを読んでいる、「好奇心とイノベーション」に関心のある皆さんなら、きっと新しい世界に適応し、たくましく生き抜けるはずです。

常識に疑問を突きつけるフロントランナーと未来社会について考える

僕が多感な時期を過ごした60年代のアメリカも、違った意味(人種差別の解決)で激変の時期でした。アフリカ系アメリカ人差別廃止運動(公民権運動)で社会の分裂が鮮明になり、様々な価値観の胎動が顕著になっていました。社会運動(労働運動、学生運動)の激化、ヒッピーの台頭、アングラ文化。それまでのあらゆることが見直され、エネルギーに満ちあふれていました。

それに対して、今進行中の大変化は、情報テクノロジーの目覚ましい発展がすべての背景にあります。それに新型コロナウイルスとの戦いが加わりました。

ペーパーレスからキャッシュレスへと連なり、社会のボーダレス化へ。世の中のあらゆる場面はモニタリングされ、反面、個人情報がかつてないほど重視されています。中国の新型コロナウイルスの早い収束は、膨大な個人情報のログを取得できる監視カメラやデジタルマネーのトレーサビリティーがあったからという人もいます。

企業の中でも年功序列が崩壊しつつあり、成果はデータ化され、いわゆる能力主義に変わりつつあります。ワークシェアリングや、リモートワークなどの働き方改革は、期せずして新型コロナウイルスによって急速に広がりました。

変革によって「なくなるもの」もたくさんあります。キャッシュレス化による「現金」、テレワーク導入による「オフィス」……。その果てにあるのは、旧来の国家概念(統治、国土、国境、国民)の消失かもしれません。
そんな未来社会を迎えようとしている我々は、その変容の波にただ翻弄されるわけにはいきません。現在進行中のウイルス対策封鎖による無人の街を、いずれ以前とは違った、しかし活気に満ちあふれる未来社会の実現につなげましょう。

そのためのアイデアは、『好奇心とイノベーション』の対談の中に、現代の賢人とでも言うべき人たちの言葉として無数にちりばめられています。この対談は、世間の常識に疑問を突きつけ、新たなプロトタイプをつくってきたフロントランナーたちと、未来社会がもたらすものについて語ったものです。

従来の慣習を覆す暮らし方や働き方、教育、産業のあり方など、変化に適応する新しい価値観に触れることができます。皆さんの「好奇心とイノベーション」の参考になれば幸いです。

本コラムが書籍化されました。

『好奇心とイノベーション~常識を飛び超える人の考え方』

コンセプター坂井直樹の対談集。
―新しい働き方、新しい生き方、新しい産業の創造。激変する世界を逞しく乗り切るヒントがここにある。
 
<目次>
 
■対談1 松岡正剛(編集工学者)
会社からオフィスが消え、街から強盗が消える?

 
■対談2 猪子寿之(チームラボ代表)
脳を拡張するものに、人間の興味はシフトする

 
■対談3 陳暁夏代(DIGDOG代表)
中国のサービスを世界が真似る日が来るとは思わなかった

 
■対談4 成瀬勇輝(連続起業家)
お金が無くなったら生きていけない、と思っていないか?

 
■対談5 清水亮(ギリア代表)
人工知能を語る前に……そもそも人間の知能って何?

 
■対談6 山口有希子(パナソニック)
強い組織をつくるには?そろそろ真剣に「ダイバーシティ」と向き合おう

 
■対談7 中川政七(中川政七商店会長)
300年の老舗が見据える、ものづくりと事業のありかたとは?

 
■対談8 田中仁(ジンズホールディングス代表)
視界が開け、アイデアがわくようになったきっかけとは?