ゼロから「クックパッド」を倒すために圧倒的なスケールで勝負
権八:すごいね!
中村:「クラシル」は今や有名になって、僕らもそれきっかけで堀江くんのことを知るようになったわけですけど、どうやって現在に至ったんですか?トライアンドエラーというか。
堀江:基本的にビジネスを考える時は、新しいビジネスなんてあまり存在しないと思っています。大体は何かの転用なんですよ。要はすでにマーケットがあるところに、ちゃんともっと便利なものをつくろうという話。世の中はこれだけ資本市場が進んでいて、その中でチャレンジしてきた人がたくさんいて、頭良い人もいっぱいいるわけじゃないですか。中々新しい産業なんて生まれないんですよね。僕はすでにある市場の中で、「どの市場を取るべきだろう」ということをずっと考えていました。究極的には、新しいアイデアなんてないと思って。あくまで、何かと何かの掛け合わせでしかない。
当時は動画の波が来ると認識していたので、後は「動画に何を掛け合わせたらいいんだろう」ということを考え始めましたね。企業価値評価額が1000億以上で未上場企業であるユニコーンをひとつの指標として、とりあえず1000億規模になる事業を目指してみるか、と決めました。そこでまずは、1000億以上の企業のリストを見ました。つまり、すでにある山を見始めたんですね。そこを見据えながら、どこが狙いやすい山かということを考え続けました。いくつか原則が見えてくる中で、「クラシル」のような料理の市場を狙おうって決めたんです。
その原則は簡単に言えばギャップです。例えば、絶対攻め込めないと思っていて、過去たくさんの人が負けているけれども、僕にとってはめちゃくちゃ倒せる要素が見つかったという。ここがチャンスだと感じて。明確に言っちゃいますけど、クラシルが出る前の料理の市場って、大手競合さんがいる中で、楽天さんとか色んなサイトが何百個とチャレンジしてきて、誰も勝てていないなとなっていました。
中村:あぁ、「クックパッド」さんですよね。
堀江:そうです。クックパッドさんに勝つのは、みんな無理だと言っていて。当時は、一旦終わったという空気が流れていたんです。当時のクックパッドの時価総額は3500億円。一方で、僕の会社は全員辞めて売り上げゼロ、残金何万みたいな(笑)。
中村:でも、それ以前に料理に対して動画っていうアプローチをしているやつは、まだちゃんと市場に浸透してないと考えた?
堀江:いえ、料理と動画の掛け合わせをやる人はいました。例えばホリエモンさんとかもやってたんですよ。ただ、4Gが来るちょっと前のタイミングではまらなくて。やっぱり、起業って全てがパチってハマんないといけない。そこに僕のキャラクターだとか、100億円集められるベンチャー市場の成熟だとか、4Gが来るタイミングだとか、色んなことが重ねって初めて成り立つわけですよ。さらにその後、敵もサーバーが落ちるみたいな問題とか、色々あって。
中村:ありましたね〜。
堀江:なんでしょうね。やっていることは、みんな料理動画っていう市場において同じなんです。そこで、何故僕が頭一個抜けられたのかで言うと、ポイントは“スケール”を全部ひとつでかくするって話ですかね。
権八:“スケール”ってどういうこと?
堀江:すべてにおいて、資金調達においてもゼロのケタを1個から2個に付け加えたんです。僕からしたら、3500億の会社を倒す、もしくはそれと同等になるということが、100億円でできるならめちゃくちゃ安くないですか?と思っていて。だから、「どうぞ僕に30億円出していいですよ?」みたいなスタンスでした。さらに、「料理動画の市場の中で誰が1番勝ちそうですか?僕ですよね?」って。単純な話ですけど、こんな感じで資金集めているんですよね。
中村:なるほど。じゃあ、“料理×動画”という市場はブルーオーシャンではなかったものの、今振り返れば、一番の鍵となったのはスケールをひとつでかくするということだったと。
堀江:そうですね。他の人が10億円ぶっ込もうとしているところに、100億円ぶっ込んだら、そりゃ勝つだろうという話。それに、他の人では集められないと思っていました。僕の計算だと、上場企業でどれだけ大きい会社でも、100億円の決済はいきなり取れないと分かっていたので。
中村:まぁ無理ですよね。
堀江:料理市場は全体的に営業利益が若干渋ってきていることも把握していましたし。みんな絶好調と思っていたようですけど、決算資料を見るとちょっと成長率が鈍っているような。この状況を経営陣の気持ちになって考えると、「調子良いけど、営業利益落ちたら株価も落ちるから、何とかしてよく見せなきゃいけない」と思うじゃないですか。
そんな時に、動画みたいなよく分からないトレンドが来ても、「よし!じゃあ100億投資するか!」とはならないですよ。つまり、勝つための戦術として、この経営者はどういう意図で、どういう気持ちでこの決算書を書いたのだろうと読み解いたということ。例えば、前回と資料のフォーマットが変わっていれば、これは隠したいんだとか、不都合なことがあるんだとか、分かるじゃないですか。
この作業を通じて、多くの企業の3年後くらいの姿を描いてみると、こうしたら勝てるという方程式がバーっと出てきて。要するに、とにかく敵を見続けるように研究して、その後に自分たちのサービスだけにフォーカスすれば良いんです。立ち上げるまでの期間は、ほぼ戦略。戦術じゃなくて、戦略というか。確信を持って100億ぶっ込んでる奴と、誰も一緒に戦いたいなんて思わないですよね。あいつと戦いたくないって、徐々にみんな引いて行ってくれるわけです。
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