コロナ禍の「PRアワード」一見、地味でもPR効果が高い事例に注目

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PRとは行動そのものである

田上:昨年の事例でいうと、ブロンズに入賞した、くら寿司「天然魚プロジェクトの挑戦〜サスティナブルな漁業のビジネスシステム構築を目指して〜」が好きでした。会社の理念を実現していくために社会問題を解決する必要がある、それを、サステナブルな漁業という本業に近いところでやろうというのは、パブリックリレーションズの王道かと思います。

本田:シルバーの大塚製薬「最新のAIテクノロジーを活用、親子が楽しく食や栄養について学べるアプリを通じた食育活動」、P&Gのパンテーン「#この髪どうしてダメですか」なども、自分たちの領域で、何かのアクションを起こし、貢献しようとした。

 

 
田上:パンテーン「#この髪どうしてだめですか」と西武ライオンズ「〜消えゆく野性のライオンを救うプロジェクト〜」はともにゴールドを受賞しましたが、ブランドの理念と社会問題とを対話させ、さらにアクションを起こす。つまり、実際に汗をかいて、アクションにまで落とした事例です。

西武ライオンズ「〜消えゆく野性のライオンを救うプロジェクト〜」

本田:PRとは行動そのものだと思うし、その点はどんどん色濃くなってきている。自身の領域のど真ん中でちゃんとアクションを起こすということはとても大事。それが結果的にパブリシティで取り上げられたり、口コミになったりするわけです。様々な課題、問題があるけれど、アクションしなければ解決しないような状況になっているとも言えます。

広報がリーダーのプロジェクトでなくてもいい

田上:私はパブリックリレーションズは社会に影響を与えることができる素敵な仕事だと思っているんです。

本田:だからこそ、お互い 20年以上続けられている(笑)。

田上:本田さんはこれまで様々な会社のお仕事をしてきたわけですよね。

本田:ずっとエージェンシーキャリアです。

田上:私の場合は外資系企業で広報を20年以上やってきて、この8月に初めての転職をしました。マーケティング・ドリブン経営の自社事業とコンサル業務で「日本を元気にする」ベンチャー企業です。この会社の、特に「0→1型」の何もないところからビジネスを創る仕事で自分のPR視点を活かしてみたいと思えたのは、昨年のPRアワードの審査に携わった経験も大きいです。自分が所属していない会社の広報案件に触れ、改めてPRの可能性の大きさ、幅広さを実感しました。「0→1型」の仕事の中で、会社の顔、ブランドの顔を決めていく中では、パブリックリレーションズの役割はとても大きいと感じています。

本田:マーケティングにおけるPRの「出口」というのは、パブリシティとか、世の中でどれだけ話題になったかということになります。これはとてもわかりやすいけれど、マーケティングの目的が市場創造であるならば、ニーズの把握や消費者インサイトを探るという初期段階、つまり「入口」における「PR的な発想」がとても重要となる。この「入口」の話にピンと来た方には、たとえ大きな露出結果などは出ていなくとも、ぜひPRアワードに応募していただきたいのです。

田上:ただ、結果を明確に書きにくいかもしれませんね。

本田:あと数カ月したらもっと成果が出てくるかもしれないけど、今までこういった段取りでブロジェクトを設計してきた、ということでもいいのです。エントリーシートには「Why PR?」を必ず記入しなければいけないわけですが、ここまでもってくる時にPRの発想があった、ということを書けばよいのではないでしょうか。

田上:会社のPR部門の人が自分たちだけで、もしくはPR会社の人たちとだけでやったプロジェクトがエントリーの対象かというと、そうではない。PRの人が持てる視点と、その他のマーケティング部門、調査部門の人たちが皆で一緒に手掛けたプロジェクトだからこそ、大きなインパクトを出せるという気がするのです。

本田:そうなんです。PR部門や広報がリーダーのプロジェクトである必要は全く必要ない。よく、制約が多いほうがクリエイティブになれるというじゃないですか。PRというのはいろんな意味で制約が多いもの。

田上:たとえば、私が今いる会社で新規事業の構想を話しているとき、マーケティングの若いメンバーはものすごく優秀でデータベースに提案をまとめてくれます。そこに自分たちのパブリックリレーションズの視点が入ることによって、イノベーションが起きていることを実感したりします。

本田:今、ニューノーマル、新しい生活様式といわれるように、価値観や社会の構造が変わる時ですが、そういう時にパブリックリレーションズが重要になるのは間違いない。だから、今年に入ってから一生懸命取り組んだプロジェクトも、軌道修正を余儀なくされたプロジェクトも、社会が大きく変わる時につくり上げた事例である可能性は非常に高い。今後も、PRに従事し、PRを学んでいる方々の活躍の幅は、ますます広がっていくと思います。

田上:そうですね。事業会社のPRの方にとっては、いろんな意味でエントリーに躊躇するかもしれません。でも、エントリーシートに記入したものが全部公開されるわけではないので、審査員にはある程度、腹を割って見せていただきたい(笑)。社外秘の戦略的なことは書かなくても、私たちはしっかり行間を読むこともできます。

事業会社の担当の方も、代理店の方と一緒にエントリーシートを書くことでご自身の頭の中を再整理できるし、パブリックリレーションズの可能性を社内の人たちに説明していくきっかけになるかもしれない。他社の事例を見ることで、気づきを得る経験があるとも思います。私自身もPRアワードでの審査員の経験が人生の転機にもなったと思うので、エントリーすることで学ぶことは極めて多いと思います。

刀 エグゼクティブディレクター ストラテジックコミュニケーション
田上智子(たがみ・ともこ)氏

P&Gで25年にわたりマーケティング/広報に従事。日本最強マーケターと言われる森岡毅氏が率いる「刀」の「マーケティングとエンターテイメントで日本を元気にする」理念に共感し、2020年8月から現職。

 

本田事務所 代表取締役
本田哲也(ほんだ・てつや)氏

「世界でもっとも影響力のあるPRプロフェッショナル300人」にPRWEEK誌によって選出された日本を代表するPR専門家。世界的なアワード「PRWeek Awards 2015」にて「PR Professional of the Year」を受賞している。

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