コラム

澤本・権八のすぐに終わりますから。アドタイ出張所

「とにかく、変なことばっかり起きるドラマ」って言われた時に、自分の中でしっくりきた(ゲスト:鈴木おさむ)【前編】

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『奪い愛、冬』『M』……面白さを求めて振り切ってみようと思った47歳

中村:やっぱり今のドラマ『M 愛すべき人がいて』もそうですけど、普通に素人からすると、なぜあんなに面白いものを連発できるのかっていう……。

権八:量もさることながら、質と量ね、すごいですよね。

鈴木:それは量を……球を多く打っているんで。昔、萩本欽一先生が言っていたらしいんですけど、「失敗はみんな忘れる」っていう(笑)。

権八:(笑)。

中村:あーー!

鈴木:だから成功したことやヒットしたものが印象に残ってる。たぶんCMもそうだと思うんですよ。ヒットしたものは記憶に残っていくけど、印象がなかったものはうっすら忘れていくっていう(笑)。

権八:確かに。それはあるかも。

鈴木:ドラマもいろんな新しいことをやらせていただいます。でも40代後半になって、「2020年はバットを長く持とう」って、決めたんですよね。

権八:「バットを長く持つ」とは?

中村:ホームランバッターということですか?

鈴木:そうですね。いろんなお仕事をやらせていただいく中で、ある程度成功させなきゃとか、失敗しないものをつくるって思いが今まで多かったように思えるんです。でも今年自分が48歳になったときに、秋元康さんが47歳でAKB48をプロデュースし始めたと思うと考えるものがあって。

権八中村:へえーー!そうなんだ。

鈴木:AKBって最初、ぶっちゃけなかなか火がつかなかったじゃないですか。

中村:うん、そうですねー。初めの頃は。

鈴木:けっこう時間がかかったなっていうイメージなんですよ。秋元さんが47歳から始めて、たぶん50歳ぐらいのときにバーンってブレイクしているんですよね。秋元さんが一番得意なのか、好きな分野なのか分からないんですけど、50歳に近づいたときにそれを成し遂げたっていうのが僕の中ではすごく思うことがあったんですよね。だから僕も50歳に近づいたら、ちょっとバットを長く持ってみたいなと思ってたんです。

そんな時に『M』のお話をいただいたんで、守っていくより思い切って振ってみようと思ってつくったんですよね。

権八:おさむさん自身も公言していますが、大映ドラマ的なというか。そういうものをつくりたいなってずっと思っていたんですか?

鈴木:タッキーこと滝沢秀明くんが出演していたTBSのドラマがあるんですよ。結構激しい女性が出てくるドラマで、何年か前に放送されていたんですけど。僕が公園に行った時に、小学生低学年くらいの女の子が、そのドラマの激しいセリフを言っていて。「泥棒猫が!」みたいなセリフを、ジャングルジムに乗りながら真似していたんですよ。

一同:(笑)。

鈴木:そうだよなーって思って。小学生の時とかって、それが不倫なのか何なのか分からなくても、ただ面白くて真似ちゃう。

権八:確かに!

鈴木:インパクトのあるキャラクターのドラマを見て、真似していたよな!と思ったんですよね。

権八:わけ分からず真似しましたねー、うん。

鈴木:それで『奪い愛、冬』(テレビ朝日、2017年)というドラマをつくりました。テレビ朝日から、ドロドロの不倫ものをやってくれって言われたんですよ。実はその頃ずーっと「コメディーって何なのか」って思っていた時期で。僕、作ったものをコメディーって言われるのがあまり好きじゃないんですよね。

権八:ほう。

鈴木:中身がコメディーだとしても、コメディーって言われることほど目線が上がることなくて(笑)。なんか「泣けますよ」って言われるより、「笑えます」って言われる方がキツいじゃないですか。

権八:えっ!?キツいってどういうことですか?

鈴木:笑わせる方が、ハードルが高いと思っちゃうんで。

権八:あー!

鈴木:だから爆笑コメディーって言われて、映画館に行ってみんなが笑っていなかった時に……(笑)。

一同:(爆笑)。

鈴木:泣いていることは、映画館の中では分からないんですよ。でも爆笑って言われた時に、映画館で笑っていなかったら、その時点で失敗なんですよね。

権八中村:確かに確かに。

鈴木:「面白さ」って、いろいろあるじゃないですか。そのドロドロのドラマをやらないかって言われた時に、不倫を追い詰める役の水野美紀さんが激しいキャラクターをやってもいいと言ってくれたこともあって。

それで一見すると不倫のドロドロドラマなんですけど、見る人が見たら、それがコメディーに感じたり、突っ込みたくなったりという、多面性のあるものをつくれないかと思ってやってみたら、それがなかなか良かったんです。水野美紀さんが怪演って話題になって、自分の中でちょっと見えた気がして。大映ドラマって、そもそもそうだったじゃないですか。

中村:そうですね(笑)。こんなこと言わないだろ!みたいなことを連発したり……。

権八:あと一生懸命やればやるほど、プッて笑っちゃうみたいな(笑)。

鈴木:そうそう(笑)。そうなんですよ。

中村:(笑)。そういうところありましたよね、はい。堀ちえみさん、うん。

鈴木:(笑)。僕の中で革命的な言葉があるんですけど、その『奪い愛、冬』をつくっている時に、横地さんっていうプロデューサーが僕に、「このドラマは、とにかく変なことばっかり起きるドラマにしたいんですよ」って言ったんですよ(笑)。

権八中村:ほう。

鈴木:いきなり木が倒れてくるとか(笑)。

一同:(笑)。

鈴木:「とにかく、変なことばっかり起きる」って言われた時に、「なるほどー!」と。なんか自分の中でしっくりきたんですよね。『M』も浜崎あゆみさんの人生がベースではあるんですけど、それ自体が嘘みたいな本当の話だから。なんか変なことばっかり起きるものを足してみようと思って。

とにかくいろんな見方ができるものをつくりたいなと思ったんですよね。今、テレビって、みんなスマホ片手に見ていると思うので、それならリアルタイムで、Twitterで実況したり、突っ込みたくなるようなドラマに振り切ってつくることができないのかなって。

次ページ 「みんな、おさむさんの手のひらの上で転がされていた」へ続く

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