コロナはCM表現にどんな影響を与えた?
福里:「哀しきCMプランナーの会」がブレーンに載るのは2019年に続き2回目ですね。この会は、CMプランナーという職種が、CMや動画制作において決定的な役割を果たしているにもかかわらず、職種として評価されてないという哀しみ、そして「CMばかりやってるのはかっこよくない」みたいな視線への哀しみを感じる人たちが集まって語り合う場です。イケイケの人ばかりが集いがちな『ブレーン』に、こういう場所があるのはいいことなんじゃないでしょうか(笑)。今回は3つのテーマで話し合いたいと思います。ひとつめのテーマは「コロナとCM」。コロナが、働き方とか暮らし方ではなく、CM表現そのものにどんな影響を与えたのか。まずは栗田さんが関わったサントリー「話そう。」の話から、どうでしょう。
栗田:「話そう。」はコロナ下で人との繋がりが希薄になる中で「人と人が話す」ことの価値を改めて伝えようと、堺雅人さんなど37名のタレントさんに出演していただいたWeb動画シリーズです。これをつくったのは緊急事態宣言下の5月。誰もが何を言っていいのかわからず、皆が広告を自粛している雰囲気もあり、その中でサントリーさんと「今言えることは?」と探る中で生まれたものです。当時はオンライン飲み会が流行りはじめていた頃でしたが、「話そう。」はオンライン飲み会を、というよりも人と人とのコミュニケーションが増えれば世の中の人の心がちょっと軽くなるのでは、と考えた企画で。緊急事態宣言中にすぐ届けたい!となり、クライアントさんや電通のクリエーティブディレクター田中直基さんをはじめとするスタッフが一丸となり、フルリモートで撮影しました。
福里:たくさんのタレントさんたちが、同じように不安を抱えていることをそのまま見せてもらって、ほっとした人も多かったんじゃないでしょうか。サントリーの商品は飲み物だけど「みんなで一緒に飲もう」じゃなくて「話そう」に落とし込んでいったのもよかったですよね。
山本:あれでサントリーはコミュニケーションの会社なんだなとわかりますよね。いい企業広告になっていると思いました。
福里:その後のCMでも、コロナは意識しましたか?
栗田:世の中の深刻な空気は前提に考えざるをえないと思っています。でも、サントリー「デカビタC」の企画で、ゆるキャラが元気になるWeb動画「元気すぎるご当地キャラ」篇(20年8月公開)を「コロナの時期に元気になっていいのかな」と不安になりながら世に出したところ、皆さん楽しんでくれて。人間ってタフだなと。暗い空気の中で逆にぬけているものも求められていると感じました。
福里:CMぐらいは、いつも通りぬけぬけとした表現でほっとしてもらう、というのもひとつのあり方ですよね。
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