コラム

嶋野・尾上の『これからの知られ方(仮)』

#5 テレビ東京・伊藤P「テレビ東京的思考法」 後編

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うまさは味単体じゃない

嶋野:はい。ではここから、後半第5回の、これからの知られ方の中身について、テレビ東京伊藤さんの話の続きを伺いたいと思っております。ここからはですね、より先ほどの前半の、伊藤さんならではのテレビ東京的思考法を、もう少し今日のリスナーの方のマーケティングとか、事業会社とか、個人でブランド作る方に向けて、何か参考になるような方向にできないかなと思いまして。

テレビ東京的思考法で、何かビジネスを始めるにはどうするかっていうところを聞いていきたいなってふうに思っております、まずはですね、伊藤さんならではの、いまの時代の消費者とか視聴者の心の掴み方をどういうふうに考えているかを聞いてきました。お願いします。

伊藤:広くエンターテインメントという言葉を、すごい最近は使っている自分がいますね。いままでテレビの文脈でしか喋ってなかったんですけど、エンターテインメントってなんだっていう。その中のテレビって何なんだろうってことを考えていて。心の掴み方ってことでいうと、やっぱり突拍子もないものとか、ああこれは見たいなって本当に思えるものっていうのがまず一つあるでしょう。

 

嶋野:もちろん本質的なものを考えなきゃいけないっていうのと同時に、結構突拍子のないものというか、注目を集めるために何かを考えなきゃいけないところも、同時に必要かなっていうところかなとは思いました。

で、さらにその上で、では具体的にテレビ東京的思考法で、何かビジネスとかお店を作ったらどうなるかっていうのをちょっと考えてもらいました。その上で、具体的に、伊藤さんならではのテレビ東京的思考法で、ビールやラーメン店をつくるならどうなるかっていうのを考えてもらいました。伊藤さんは、まずどんなビールを開発するのでしょうか。

伊藤:まずくないビール。ビールって、おいしいですか。僕ね、ビールって味がおいしいなって感じたことなくて。子どものときもマズかった。で、どこかの瞬間でおいしくなりましたかって聞かれると、おいしい、おいしくないで言うと、マズいです。だけど、乾杯って言ってこうやって飲んで、うまーいって言ってますけど。でも味と、ビールっていう体験。ビールっていう体験がおいしいというだけで。この酔う感じとか。

 

100点のビールを出してくる店が1軒あるんですけど。凍っちゃってるジョッキで、ものすごい早く出してくれるところで、100点のビールがあって。最初の一杯目って、味じゃないんですよね、なんか。冷たいとこ、終わった、飲めるっていう高揚感と、ここから俺はここから先酔いますみたいな感じ。なので、おいしいかおいしくないかじゃないっていう。僕の中では。トータルおいしいですね、総合的な表現でいうと。
 

嶋野:(味覚だけでなくほかの)五感のほうを意識したっていうことですよね、さっきおっしゃったのは。
 

伊藤:うん。そこがなんか、タイトルにならないのかなっていうのは、思う。
 

嶋野:でもちょっとまずくないかはちょっと違うところにありますよね、今の話で言うと。
 

伊藤:うん。ビールはやっぱり体験と経験なんだろうなって。ビールという体験なんですよ。「この」時間なんですよ。だから、何ていうかな、ごめんなさい、何か、怒られちゃう。この辺を正直に言ってる、なんかタイトルのビールで、若い人とかが「一回飲んでみる?」って手に取れるような、面白がってもらえるようなものがないかな、と僕は(思う)。
 

 

嶋野:いきなり一言目、「まずくないビール」と出てきたみたいに、その商品を変な話、あんまり良くないと一瞬思いつつも、そこからいいもの探すみたいなスタンスが、ちょっと独自性があって面白いなっていう風に思いました。

尾上:たしかに。ビールがおいしかった瞬間って本当に、体験以外であるのかなっていうのは、なんかハッとする部分がありましたね。もちろんビールはうまいんですけど、うまさは味単体じゃない。味単体だと苦いですもんね。

嶋野:これはでもなんか、私今『コーヒーの科学』っていう本を読んでるんですけど、コーヒーに近いものがあるなと思っていて。コーヒーも苦味なんですよね。

尾上:はいはい、そうです。

嶋野:コーヒーに関しては何がいいかって言うと、初め苦みがぐっと来て、その味がスッと消えるんですよね。その爽快感を体験的な味わい、ビールならもっとそれが、炭酸でさっと抜けるっていう。なんかそういう意味では、味なんだけど、もしかしたら体験に近いっていうのを、ビールというものは。結構それを直感的に掴んでいるのかなと思う。

尾上:なんか、そうですね。

嶋野:すごいなと思います。

尾上:すごいですよ、やっぱり『池の水(ぜんぶ抜く大作戦)』も、池って、すげー汚くっていっぱいあるじゃないですかみたいな。あの感じですよね、なんか。日常をふつうに見ているようで、実はこうじゃないっていう視点っていうか。そこら辺はすごいヒントがいっぱい隠れている感じがしますね。

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