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コラム

嶋野・尾上の『これからの知られ方(仮)』

第5回 テレビ東京・伊藤P「テレビ東京的思考法」(後編)

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価値って相対的

嶋野:では、続きまして、このテレビ東京的思考法で、もしラーメン屋を開くとしたらどうなるかっていうのを聞いてみました。テレビ東京といったら、ラーメンで一番有名なテレビ局だったりもしますので。

伊藤:すごいふつう。だけど、すごいふつうで、いいと思うの、ラーメンだったら。でも「おいしいラーメン」っていうタイトルを付けるかもしれないですね。
 

嶋野:なるほど。
 

伊藤:「おいしいラーメン」って他局さん付けないよね。
 

嶋野:ちなみに、おいしいラーメンってどんな中身ですか?
 

伊藤:やっぱりテレビ東京って、(旧)東京12チャンネルなので、いわゆる下町のふつうの人、おばちゃん、おじちゃんが面白いと思わないとダメな局なんですね。つまりその人たちがおいしいっていう味でいいかなと思うので。やっぱり昔のラーメンとか、素朴な。メンマが入ってる。醤油の。金がかかってない。
 

嶋野:値段も安めですか。
 

伊藤:安いほうがいいですね。
 

嶋野:それって、お店にお客さんがいるときにこんなふうにやって客引きするとかってあります?
 

伊藤:安くておいしいよって。ハハハハハ。
 

嶋野:ハハハハハ。
 

伊藤:全然斬新じゃない。すごい素朴なラーメンしか思い浮かばないな。いっぱい紹介していると思います、テレビ東京って。おいしいラーメン。あと、量も日本一食っていると思いますね、大食いとか。デカ盛りみたいな。たぶんラーメンについて一番くわしい局はテレビ東京だと思うので。テレビ東京が出すとしたら? って言われたら、すっごい素朴な安いやつ。
 

嶋野:逆にっていうことですよね。

 

嶋野:はい。今ラーメンの話も非常にテレビ東京さん的手法だなってまさに思ったんですが。ふつうはやっぱり、自分たちの個性をどう出すかとか、尖ったものを、というとこに対して、いやいやそうじゃなくて、徹底的にふつう。みんなが目立とうとするから、逆にふつうでいることが一番目立つんだっていう視点でのアイデアかなと思いました。

尾上:そうですね。それは何かこう、この連載を聞かれている方が手がけようとすることでも、すごいインフレが起きているなっていうときに、あえてフラットなところを目指してみるとか、立ち戻ってみることが結構大事っていうことかもしれないですよね。

嶋野:そうですね、まさに。結局根幹は差別化っていう視点だと思うんですよね。みんながギザギザのときに一番丸いのつくろうって話に近いなと思っていたので。根幹は前半の話みたいに、周りを見て、周りがやっていないことをやろうっていうことなのかなと捉えました。

尾上:僕、それと近い話で好きな話があって。温泉地の湯布院ってあるじゃないですか。有名なところが、バブル期にガンガン金かけてどんどんでかい旅館を立てて、観光客をバスでどんどん呼び込むというときに、湯布院は特に何もできないで。ちょっとテレ東の感じに近いなと思うんですけど。

時代が過ぎて、そんなガンガンみんな旅行行かないよねとか、そんな(人が)いっぱい行くようなとこ行くのもイヤだよねって価値観が変わってきたときに、手付かずのすごいいいところがあるじゃんっていう。もちろん丁寧に湯布院はブランディングをやっていたんですけども。ともかく湯布院がすごい人気になったっていう話がありまして。皆が華美な方向に行くときに、あえて行かないとか、行けないっていうことが長期的に見て武器になることもあるんじゃないかなとか。

だから、いまやっている何かがそういう状態だとしても、そこが数年後武器になるかもなとか、そういう発見の仕方もあるのかなとも思いました。

嶋野:ちょっと時間はどれくらいかかるかわからないけど、いつかそういう時代が来るっていうことを信じてスタートしておくというのも、ありかもしれない。

こんなもんだろうと思っていたものの価値を上げる

嶋野:はい、では最後に伊藤さんに聞いたのがですね、これからの人気コンテンツのあり方とか、どうやったら人の心を惹き付けていくのかっていうのを、その方法論について聞いていきました。

伊藤:必要とされるものじゃないと作っちゃ駄目だった。つまり、必要とされているかどうかって。これはだから、バラエティーはバラエティーでとてつもなくくだらない。もうやる意味なんてないと評されるぐらいのものがあるとするじゃないですか。でも、(テレビを)見たときにくだらねえなって思うことが必要だと僕は思いますね。
 
で、くだらないっていう感性って、100人いたら100人違うはずなんですよ。日本人を主に視聴ターゲットに、お客さんにしているので。くだらないを知らない日本人よりくだらないを知っている日本人のほうがいいんじゃないですかって僕は思うんです。
 
「昨日のあれ見た?」っていう時代はもう終わったってテレビは言うんですけど、でも全然終わってなくて。やっぱりどういうものを見せたいか、どういうふうに手にとってもらうか。これは2時間しっかり見たいっていうものなのか、「気楽に見たけど、これが、あいつが言ってたあれか」というのも、きっとあると思うので。

 

嶋野:はい。ここはテレビマンならではの言葉遣いとかもあったとこではあると思うんですが。すごく印象的に残ったのが、くだらないっていう言葉をすごくポジティブに使ってらっしゃったのがいいなと思ってまして。やっぱり役に立つものとか、もちろんすべての商品とか、我々でいうと広告ですら、なんかの社会的に求められているから作っているんですけど。

そことある意味真逆な、くだらないところこそが、実はいま、社会に求められているんじゃないかなっていうところが、一つ着眼点としていいなというふうに思いました。

尾上:最初の質問にちょっと関係するかもしれないですね。ソーシャルグッドみたいな、社会的に意味があることじゃないと、あんまり広告とかやってもダメなんじゃないみたいな。広告だけじゃないかもしれないですけどね、どのジャンルも。

くだらないっていうのも豊かな感性だったり、それを知ってるほうが生きてて楽しいよね、それも社会的な意義はあるんじゃないのって、そういったことをちょっと仰っていたのかなっていうふうに解釈しましたね。

伊藤プロデューサーの手帳を撮らせてもらいました。中は番組企画のタネになりそうなフレーズびっしりでした。

嶋野:一旦ですね、以上で今回の、これからの知られ方第5回の、テレビ東京・伊藤さんの回は終了となっております。なんとなくですね、この前半後半を通じて思ったのが、伊藤さんならではというか、考え方としまして、日常の中にこそヒントがあって。その時に、テレビ東京だからこそもあるかもしれませんが、ほかがやっていないことを徹底的に広げていくみたいなところが一つ、考え方としてあるかなというふうに思いました。

それは生存戦略として、わりとこう、つまりビジネスを始める上での生き残り方としては、もしかしたら独自的、独自性というか、変わっているように見えるかもしれないんですけど、何かですね、まあ本当に今の時代ならではの、こういう要素が特に若い人とか、SNS受けする要素になるのかなっていうふうにすごく発見もたくさんあったかなと思いました。

尾上:なんか新たなものを発見していくっていうか。みんなこんなもんだろうと思っていたものの価値をめちゃくちゃ上げていくじゃないですか。その感じは僕すごいいいなと思っています。

嶋野:あとやっぱりありがたいのはさ、子ども向け番組でいっぱいあるじゃん、アニメ。困ったらテレビ東京さん付けておけば子どもはもう幸せだからさ。

尾上:ああ。ありがたいですね。

嶋野:ありがたい。ありがとうございます、テレビ東京さん。

尾上:ありがとうございます。はい。というところで感謝を述べた、あの皆さんもぜひテレ東ガンガン見ていただければなと思いますが。こちらもですね、今後も聞いていただきたいんですけども。

嶋野:はい。

尾上:次回予告ですね。次回は、もうすでに先日お話を伺ってまいりましたが、あの話題のお寿司屋さんです。

嶋野:いいなぁ。

尾上:いいなぁって、きょう行くんですよね、嶋野さん。

嶋野:きょう行きますね。

尾上:行って、あの有名なあの寿司を食べたりとか。

嶋野:してきます。

尾上:まさかのアレを食べたりとか。

嶋野:してきます。はい。

尾上:というところの。そこら辺の体験談も今後。

嶋野:そうですね。ちゃんとインタビュー行ったら予約する嶋野と、予約は特にしなかった尾上っていう違いをですね、いまリスナーの方にちゃんと頭に残して、きょうは終わりたいなと思います。

尾上:まあ人生長いんでね。はい。ということで、第5回は終了です。お便りも引き続き待っておりますので。

嶋野:本当に。

尾上:本当にうれしいです。こんなにうれしいものなんだって。

嶋野:よろしくお願いします。

尾上:それではまたお会いしましょう。

嶋野:はい、ありがとうございました。

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