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「オワコン」なんて言わせない! 現役・大学生編集長が考えるルッキズムが問題視される時代の『東大美女図鑑』

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既刊冊子を徹底分析! 歴史を知ることで目指すべき未来を見つける

理念を考えるため、まずはバックナンバーを分析。

つくり手の声を聞いた後は、読み手の声を聞く。そんなことが叶えばよかったのですが、新刊が多くの人に届いていないのに読者アンケートが十分な数、集まるはずがありません。そこで21年余の人生で幾度となく耳にした「困難にぶち当たったら歴史に学べ」という言葉を頼りに、過去に目を向けるようになりました。

さて「東大美女図鑑」の歴史とは、一体なんなのでしょう。2011年度入学文科III類26組の学生を中心に、2014年「東京大学第87回五月祭」より制作・販売されるようになったこと。

当初の目的は「美しく知的な存在」としての東大美女のイメージを発信するというものだったこと。あるいは、2016年には旅行会社とコラボして発表された、「海外旅行のフライトで、東大美女が隣に座ってくれて話をすることができる」という企画がネットで炎上し、即日撤回になるという事件があったことでしょうか。以上は少し調べれば、誰でもすぐに知りうる情報です。

「東大美女図鑑」という看板の持つ歴史ではなく、出版物としての『東大美女図鑑』に過去から現在までに込めたられてきた想いと描かれてきた理想、内在していた課題を紐解くことこそ、私にとっては必要だと感じられました。

そこで、vol.1からvol.13にomnibusを加えた既刊号の特徴・変化を分析に着手しました。

各号について、①テーマ、②表紙などの体裁面、③個人ページの写真・文章、④特集企画、⑤その他の変化や特徴の五つの軸で要素を抽出しました。変わっているところと変わっていないところを確認できたことで、守るべきところが明らかになり、変化を恐れなくもなりました。

そして、どの号を読んでもモデルの笑顔に出会い、その度に「これを撮るカメラマンも編集するデザイナーも、きっと笑顔だったのだろう」と、自分の頬が緩んだとき、モデルもつくり手も笑顔で完成させた『東大美女図鑑 vol.14』が読み手を笑顔にすることが、私個人にとっての理想であると感じられたのです。

ついに、『東大美女図鑑』の理念が完成!

2021年1月、ようやく理念を文章として整えることに成功しました。三本柱で、字数は2000をゆうに超えるものですが、誤解を招かないように言葉を尽くした結果としてこれ以上簡略化はできないと判断しました。

まず、「手を伸ばせば届くような、より身近な存在として『東大女子』を認識してもらうこと」と「憧れ、自らの未来に重ねられるようなロールモデルを見つけてもらうこと」の二つを、媒体を通して与えたい影響として明文化しました。

そして、「かしこくて、かわいい東大女子の姿」を描くだけではなく「かしこい」と「かわいい」の多様性に対しても考え、その価値も重んじていることを「かしこいだけじゃない、かわいいだけじゃない。」という項目でまとめました。これは団体が重んじ、その多義性ゆえに考え続けていくべき概念について記したものです。

さらに、『東大美女図鑑』本誌のあり方について、課題意識・テーマ設定・「モデル」という小見出しで記述し、本誌が真剣に向き合い大切にすべきものを精確にし、明示しました。

整文を終えてしばらく経ったころ、これが自然とミッション・バリュー・ビジョンの三本立てになっていたことに気づき、驚きました。一人ひとりとコミュニケーションを取り話し合いの基礎をつくったこと、既刊号の分析、現在の編集部員の意見と話し合い考え抜いたことは、右も左もわからない私が確かな方向性を示すことを可能にしてくれたのだと、そう思わずにはいられませんでした。

私たちがしたことを一言で表すと、「世論によって団体および出版物の立ち位置が変わったときに、理念レベルからその立ち位置を据え直す」というものでした。これは、当たり前のことに思われるかもしれません。当たり前のことだけれど、幾つもの利害を比較衡量して今と過去から未来を考えることを徹底しなければ、なし得ないことだったとも思っています。

 

次ページ 「vol.14の編集長としての今後」へ続く